アララギの歌人たち 古泉千樫

古泉千樫のアララギ絶縁のきっかけとなった原阿佐緒・石原純不倫恋愛事件真相と三者の関係

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古泉千樫の歌人の経歴での大きな事件と出来事は、千樫がアララギと絶縁したということだろう。赤彦、茂吉、憲吉と千樫は初期のメンバーで、特に茂吉とは一時期毎日のように会っていたという緊密な絆を持っていた末のことなので、思うだけでも大変に残念なことだ。

他誌に移って大きな歌風の変化とてなかったが、何より、それまでの作家活動の母体であり、仲間との絆を固くしていた千樫本人の失意はどれだけであったろうと胸が痛む。

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原阿佐緒、石原純不倫恋愛事件真相

千樫はアララギとの縁は深く、なぜそのような絶縁が起こったのか疑問とするところであったが、発端となった原阿佐緒をめぐるスキャンダルから内容を紹介していこうと思う。

妻子ある石原純の求愛?

原阿佐緒

wikipedeiaより

 

原阿佐緒と石原純の二人恋愛関係、不倫であったというのが、大方の見方でもあり、そのように記載している本が多いのだが、実際は石原純の自分でも律することの困難な対象への執着、今でいうストーカーとその被害者との関係であったようである。

何しろ、最初はアララギ関係者として、入院中の阿佐緒を見舞ったただそれだけで、阿佐緒に恋愛感情を抱いたという。
青年ならいざ知らず、40歳で妻と5人の子がある人にそのようなことがあり得るだろうか。

自殺未遂と大学辞職

そして、一方的に阿佐緒に求愛、というのは、体がいいが、妻子がありながら、阿佐緒に断られてもつきまといつつ関係を迫り続け、果たせなければ自殺未遂を行い、最終的には大学に辞表をも出すことになったというから尋常なことではない。

阿佐緒が、周囲の勧めで、最初に床を共にしたのちに、石原は「どうもありがとうございました」と布団の上に座して礼を述べたというのであるから、どう見ても通常の恋愛ではない奇妙な感じがぬぐえない。

そもそも、その日は、阿佐緒は石原との会瀬は気が進まず、石原の居る京都で会う約束をすっぽかしていたのだが、三ケ島の夫に連れられて、再度の面会となったといえばなおさらだろう。

ただし、世間はもとより、他のアララギの同人がそれを通常の婚外恋愛、すなわち不倫事件であるとみて、その責任が見た目も派手な離婚歴のある阿佐緒にあると思ったのも仕方なかったかもしれない。

石原はアインシュタインにも会ったことがあるという高名な学者であったので、そのような「異常」が起こり得るとは、アララギのメンバーのみならず、世間の誰もが思わなかった。

 

古泉千樫の役割

千樫の他にも、三ケ島葭子夫妻が問題に当初から加わっていたことも問題を大きくしていった。

 

三ケ島葭子夫妻の干渉

三ヶ島夫妻は、石原の行為を極端ではあるが、恋情ゆえとも考えたらしく、石原との交友を勧めた。

阿佐緒の方は離婚をしていたため、女性が一人で生きていくよりは、そこまで阿佐緒を慕っている石原との再婚を勧めたとしても、それもさしておかしなことではなかったかもしれない。

上に書いたように、初めての逢瀬の場に阿佐緒を連れて行ったのは、三ケ島の夫であった。

千樫との関係

古泉千樫はというと、それ以前に阿佐緒との関係を持っており、阿佐緒がそのような女性だということを知りながら、これもどうしても思い切れなかったらしい。
阿佐緒と家庭を持つことも考えなくはなかったようだ。

しかし、阿佐緒との旅行中に、石原の求愛を聞かされた千樫は、これも半ば早合点して阿佐緒への思いを失意のうちに断念。
自分は身を引くことを決意し、一人身で懶惰にも見える生活を送る阿佐緒を思いやってだろう、石原との関係を勧めるということになった。

アララギと絶縁

やがて、石原と阿佐緒の事件が表面化し、不倫スキャンダルとして報道されるに至って、千樫がそれを勧めたとなって、赤彦と茂吉の勘気に触れた。

千樫は既に指導者としてアララギに小さな派閥もできていたようだが、赤彦の派閥は圧倒的に強く、その際の歌会の席で千樫の作品が高田浪吉によってひどく叩かれたことを鈴木杏村という千樫門の歌人が記録している。

三ケ島は、赤彦に破門を受けて、そのような個人攻撃にさらされた千樫の門下に入ることになり、石原と千樫が「日光」同人となった。

千樫はその時点でアララギを脱退したわけではなかったが、むしろ「日光」への参加をきっかけに、脱退をやむなくされたのであった。

原阿佐緒と千樫の関り

こちらは婚外恋愛であったのは間違いないし、石原とは違って千樫が「正気」であったのは違いないが、千樫は短歌作品に見る以上に、思いは深かったらしい。

結局そのためにアララギを脱退することになったともいえるのだが、原はどんな人だったのかというと、モダンな写真とは裏腹に、典型的な明治の女性であったようだ。

幼稚性を指摘する人もいる通り、親の言うとおりに結婚をし離婚をし、言い寄る男性と無作為に関係を結ぶような人で、三ケ島の夫の手引きで行きたくもない京都に行って、さして好きでもない妻帯者の石原と結ばれるような、危ういところのある人だったのだろう。

おそらくそのために、三ケ島が助言をしたり助けたりしたのと同様、千樫も恋情の他にも守ってやらなければという保護者のような思いから、石原と添うのが阿佐緒にとって一番良いことだと考えて、阿佐緒にそう勧めたのだろう。

それが千樫をアララギから絶縁させることになるとは思いもよらずに。

 

まとめ

真相を知って納得がいく点もあると同時に、二人に振り回された千樫を気の毒にも思う。

それと、当時のアララギが既に大所帯であって、伊藤左千夫の居る時もそうだったが、やはり人が集まると、短歌そのものよりも、別な問題が様々に起こるということを、あらためて悲しく思うのだ。

ひとりでもいい、汚れのない心で歌を詠みたい―――おそらく千樫もそう思ったか知れない。

 

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