本・歌集

佐藤モニカさんの短歌 現代歌人協会賞と日本歌人クラブ新人賞のダブル受賞

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こんにちは、まるです。

若手歌人の登竜門とも言われる現代歌人協会賞、受賞作は佐藤モニカさんの『夏の領域』。

さらに日本歌人クラブ新人賞とのダブル受賞でした。おめでとうございます。

佐藤さんのすてきな短歌を紹介します。

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朝日歌壇の投稿がきっかけ

佐藤さんは、ブラジルで亡くなった祖父について初めて詠んだ歌が朝日歌壇に入選したのをきっかけに、結社「心の花」に入会し、歌人の道を歩むようになったといいます。

これまでも、投稿者の方をご紹介してきましたが、佐藤さんも朝日歌壇から開けた道なのですね。

佐藤モニカさんの作品

ブラジルにコーヒー飲めば思ふなりサントス港に降り立ちし祖父
ああジョアンナ懐かしいわと抱きつく人、母には母の故郷がある

作者はお祖父さまがブラジルにお住まいで、お母さんがそこに育ったというルーツを持っておられるのです。

佐藤さん自身は名護市に住んで5年。歌集には沖縄で詠まれた歌も多くあります。

次々と仲間に鞄(かばん)持たされて途方に暮るる生徒 沖縄
まだ読めぬ東恩納といふ名前遭遇するたび夫をつつく
痛みを分かち合ひたし合へず合へざれば錫色の月浮かぶ沖縄
黒猫にヤマトと名付け呼ぶ度にわれの本土が振り向きゐるか
パインカッターぎゆうつと回す昼下がり驚くほどに空近くあり

出産後の歌

また、出産後の歌が多くを占めています。
女性にとって、出産は人生で一番大きな出来事でしょう。

さやさやと風通しよき身体なり産みたるのちのわれうすみどり
みどりごを運ぶ舟なりしばらくは心臓ふたつ身ぬちに抱へ
産み月の四月まことにあかるくて幾たびも幾たびも深呼吸する
さやさやと風通しよき身体なり産みたるのちのわれうすみどり
われを発ちこの世になじみゆく吾子に汽笛のやうなさびしさがある
人の世に足踏み入れてしまひたる子の足を撫づ やはきその足
腕にて抱けるもののかぎられて今この時は吾子のみに満つ
みどりごの足跡未だあらぬ部屋蜜なやうなる光を抱く

すでに詩集『サントス港』が山之口貘賞受賞、小説「カーディガン」が九州芸術祭文学賞最優秀作を受けておられます。

すばらしく多才な方のようです。

坂井修一さんの評

現代歌人協会賞選考委員長で歌人の坂井修一さんは

「考え方の幅や経験が広い。表現は今日的で落ち着いているが、背景に一筋縄ではいかないものを持つ」

と評価したといいます。

他の作品

夕暮れの商店街にまぎれたし赤きひれ持つ金魚となりて
夏蝶を捕らへしごとく指先に今朝のアイシャドー少し残りて
クリーニング仕上がりしシャツへ腕通す腕より仕事に入りゆくものか
顔忘れ足型覚えてゐる客の孤島のやうな足型思ふ
玉手箱の大きさほどと思ひつついただきにけり粉石鹸を
スナップが大切と思ふオムレツを作るとき君に反論するとき
さらさらと若葉揺らしてゐるわれかスタジオを出てシャワー室まで
ティーポットに夕暮れの色たまる頃自転車を漕ぎいもうとは来る
早稲田大学教育学部卒業の佐藤陸一噺家になる
グアバジュースのグアバをあかく舌にのせ結婚について語りだすひと
さみしくて郵便受けをのぞく顔向かう側より見られねばよし

いずれも身近な題材を元にした、美しい作品です。
歌集は装丁も素晴らしくきれいなので、ぜひ本をお手に取ってご覧ください。

 

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