毎日歌壇より 10月15日号  

広告 現代短歌

毎日歌壇より 10月15日号

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こんにちは。まる @marutankaです。

毎日新聞の毎日歌壇から好きな歌を筆写して感想を書いています。
毎日歌壇は朝刊月曜日に掲載。当記事は、10月15日の掲載分です。

 

毎日歌壇とは

毎日歌壇についての説明です。
「毎日歌壇」とは毎日新聞朝刊の短歌投稿欄です。俳句は「毎日俳壇」です。
新聞の短歌投稿欄は、どの新聞においても、誰でも自由に投稿できます。投稿方法の詳しいことは別記事
「毎日歌壇」とは何か?朝日歌壇の紹介と他の新聞の短歌投稿方法と応募の宛先住所」
をご覧ください。

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加藤治郎・選

青色の小鳥にふれてたくさんのひとりぼっちのつぶやきを見る 東京 木下龍也

「青色の小鳥」というのは、ツイッターのこと。現代短歌では、こういったロゴを取り入れる歌が多いのも一つの特徴なのだろう。

きっとそう何も言わずに死んでゆく貼らないカイロぎゅっと握って 京都市 小川ゆか

なんとなくおもしろい。「貼らないカイロ」は使い残しのカイロだが、そう、たとえば、人の手を握って死にたいところを、このぬくもりを代わりにするということか。

若者はすべるがごとく年配者は貼りつくごとくスマホの指は 高崎市 門倉まさる

私は携帯は持っていないので、年配者でも使っているということ自体がすごいなあと思うが。

昨日とは違う名前で君を呼ぶ しあわせにまた一歩近づく 東京 谷口泰星

すてきな歌だ。たとえば「xxさん」だったところが「xxちゃん」になるなどということか。

伊藤一彦・選

◎電車内母に抱かれた幼児と視線で会話 誰も知らない ひたちなか市 衛藤美波

「視線で会話」という思いつきがすてきだ。私は犬とよく会話する。挨拶は飼い主にするが。

どの人もこの世にひとりだけなのにかけがえのないあなたと思う 堺市 一條智美

ある意味オーソドックスなのだが、思い出したい考え。地味に素直に真っ直ぐに詠まれている。

ランドセルゆきすぎしのち聞こえくる夕風にのるボーイソプラノ 習志野市 太宰明子

2句「ゆきすぎしのち」が良い。「夕風に」がそれに緊密につながっているのも良い。

笑いつつジョーカー差し出すようにして「癌になった」と友我に告げる 広島市 堀眞希

結句は「告ぐ」としても良い。2句目は目を引くおもしろい表現だが、私が友達に告げる、の方が良かったと思う。

つつがなく屋根の補修も終りたり梯子たためばどつと夕暮れ 愛西市 坂元二男

結句の体言止めに存在感がある。「肉が肉押しわけてゐる雑踏にどつとかなしきわが乳房なる.(河野裕子)を思い出す。

ちなみに、「どっと」の意味は、「1 大ぜいがいっせいに声をあげるさま。2 たくさんの人や物が一時に押し寄せるさま」だそうだ。

機長よりラストフライトとのアナウンス大きな拍手機内に満ちる 奈良市 片山洵子

良い歌だ。ネットで人とつながる昨今、こういう人との”接触”もある。

飛行機というのは乗客乗員に連帯を呼ぶ乗り物なのだろう。

釣り上げた鯖の味噌煮で熱燗を楽しみすごす妻居らぬ夜 滝沢市 菅原宰

「楽しみすごす」の理由が結句にある。なんとなくおもしろい。

米川千嘉子・選

◎カッターで切り刻もうと振り上げた私の手を取り歩き出す君 香川 谷雨希

良い歌だ。こういう友だちは大切にしたい。

絶食の朝にうっかり弁当の味見をしたり 母親だもの 奈良市 久保祐子

たとえば検査を受ける朝などはこういう出来事もある。その理由が結句にあるのだが、作者はそれに納得している様子。うなづける。

子の頃のわれのセーター膝に置き母はいませり霧深きホームに 安芸高田市 菊山正史

これもしみじみとする歌。美しいまでかなしい母の姿。

雨見つつふと思ひ出づ小学校に小使ひさんゐて傘貸しくれし 横浜市 芝公男

なつかしい。そういえば、私の頃にも居たが、今はどうなのだろう。

在りし日の夫(つま)釣りしピチピチの魚(さかな)思いつ冷凍魚(れいとうぎょ)を解凍したり 富田林市 竹内治枝

亡き人を偲ぶ視点が独特だ。

屋上で朝から外を眺める子部屋ごもりより一歩歩みだし 大阪市 小熊光子

今まで部屋にだけいた子が屋上に上がって風に当たりながら、外を見るようになった。作者は喜んでいても告げずに見守り、言わないことを歌に詠まれるのだろう。控え目な表現がそれを伝えている。

篠弘・選

◎緑陰にタクシー停めてドライバー四肢ぎごちなく体操はじむ 横浜市 中村秀夫

元気よくではなく「ぎごちなく」が、勤務の長さと辛さを伝える。

ご先祖をマンション墓に改葬し嫁となる娘(こ)と盆参りせり 大分市 阿南尚子

今は墓じまいが流行語でもあるが、墓には家族のつながりがあることを思い起こさせる歌。

後記

朝日歌壇とは傾向が違って読みやすい歌が多いように感じます。

これからは毎日歌壇の方も時々読もうと思います。

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