朝日新聞の朝日歌壇のコラム「うたよをむ」に小佐野彈さんの短歌が紹介されました。
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小佐野彈の短歌
小佐野彈さんは、富裕な家に生まれ、若くして実業家という、ある意味恵まれた環境にありながら、自らの別なアイデンティティー、すなわちゲイというセクシュアリティーについて詠み続けてきた、というのがその歌の特徴です。
同様の特徴を持つ歌人として春日井健が比較にあげられますが、春日井健とは違って、自らのセクシュアリティーについて受け入れ切れていない印象を持ちます。
しかし、それが一つには歌へのモチベーションとなっているのでしょう。また、それはゲイの方に限ったことではありませんね。
「うたをよむ」内の短歌
「うたをよむ」で取り上げられた冒頭の短歌は
セックスに似てゐるけれどセックスぢやないさ僕らのこんな行為は
というもので、確かに小佐野さんの一面を表しているとは思うけれども、紹介として適当かなという感じもしないではありません。
胸元に青いたしかな傷を持つあなたと父の墓石を洗ふ
この傷については、実は内面的なもので、相手にもあり、自分にもあるものなのでしょう。
他にも、
軋むほど強く抱かれてなほ恋ふる熱こそ君の熱なれ ダリア
このような、性愛の美しい歌をたくさん歌ってほしいと思います。
野口あや子さんの解説
第一歌集「メタリック」巻末の野口あや子さんの解説には次のように。
「異色の経歴に見落とされがちな、この折り目正しい定型観とたしかな描写は、おそらくここ数年の若手歌人にはなかったものだ。作歌意識はむしろ古典的と言える」
小佐野彈経歴
小佐野 彈(おさの だん、1983年生)台湾在中。職業は実業家。
2014年 : 「かばん」入会。
2017年 : 「無垢な日本で」で第60回短歌研究新人賞受賞。
2018年 : 第一歌集『メタリック』(短歌研究社)刊行。
同性愛者であることを公表しており、セクシュアリティに関する作品が多い。
慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、博士課程に在籍。
国際興業グループ創業者の小佐野賢治は大伯父にあたる。