少し前の話だが、太宰治の「人間失格」の表紙カバーを、漫画家のイラストにしたら1ヵ月半で7500部が売れたという。まずは圧倒的な数字。
高校生の少年が椅子に座ってうつむいている図柄で、イラスト自体は漫画であるので少し違うような気もするが、文芸書どころか本離れが定着した昨今、そういうきっかけで手に取る人があってもいいのかもしれない。
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森鴎外が酒席で喧嘩のエピソード
少し前に、太宰に森鴎外の勇ましいエピソードを記した部分があるというので友人と調べた。鴎外の翻訳を取り上げた「女の決闘」かと思ったら、「花吹雪」の方だった。
内容は、鴎外が主席でつかみ合いになったというようなものである。何しろ、鴎外というのは、文人ではなくて、正職は軍人である。ひ弱なその他大勢の文人とは大違いである。
「花吹雪」の体験
一方、太宰はというと、上背のある人ではあったが、犬も怖いような気の弱い人で、殴り合いの喧嘩などをするどころではなかった。
「花吹雪」では、自身の体験で、あわや喧嘩になるかというところで、足が震えて下駄がカタカタ鳴った話はおそらく実話なのだろう。
自分が「柔道五段」でもあったなら、としきりに口惜しがっているのが、むやみに可笑しい。
ただ、鴎外の「懇親会」にしても、酒席でつかみ合いとはいかがなものか。これを勇ましいというか子供っぽいというかは、何とも言いかねるところだが。太宰にしてみれば、うらやましかったのであろう。
拳銃での「女の決闘」
一方、「女の決闘」は細君の夫人と愛人の女学生との、拳銃での決闘場面を木陰から覗き見ている男の話である。つかみ合いどころではない。殺し合いである。
男はいつ止めに入ろうかとはらはらしながら見ている。もとより、決闘も喧嘩もできかねるような気弱な男なのだ。
しかし、
―― 今はまったく道義を越えて、目前の異様な戦慄の光景をむさぼるように見つめていました。誰も見た事のないものを私は今見ている。このプライド。やがてこれを如実に描写できる、この仕合せ。(中略)芸術とは、そんなに狂気じみた冷酷を必要とするものであったでしょうか。男は、冷静な写真師になりました。芸術家は、やっぱり人ではありません。その胸に、奇妙な、臭い一匹の虫がいます。その虫を、サタン、と人は呼んでいます。――
「描写」とは、余程肝が据わっていないとできないものであろう。放っておけば女のどちらかは死ぬ。それを見届けるつもりなのである。
しかも「男」が書いているのは、目の前の女どもではなく、それを描写する自分自身の内面の方なのだ。それはやはり普通の「目」ではない。
太宰というのは、肉体をかけた喧嘩の強さとは別な意味で、勇敢な人であったと言えるかもしれない。
―― 私はこの公園が好きだ。瓦斯燈(がすとう)に大きい蛾がひとつ、ピンで留められたようについている。――
こういう記述も太宰に時々ある。
私の好みの箇所だ。
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