アルフレッド・ウォリスという人の画の展覧会の案内が出ていた。その生涯の簡単な紹介を興味深く読んだ。
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アルフレッド・ウォリスの経歴
アルフレッド・ウォリス イギリスのコーンウォール地方の港町で船員をした後、船具商を営み、妻の死の3年後70歳で文字通り絵筆を取った。
厚紙や板切れに、油絵の具の他、船舶用ペンキで絵を描いていたという。キャンバスも絵の具も自由に手に入るような暮らしではなかったように思える。油彩の道具は、クレヨンや絵の具に比べると高価である。
ウォリスの絵を見た画家が紹介
たまたまセント・アイヴスを訪れた画家ベン・ニコルソン、クリストファー・ウッドが偶然ウォリスの家の前を通りかかり、壁に掛かった彼の絵を眼にして世に紹介することになったらしい。
絵の良し悪しは一口には言えないが、遠近法や画法を学んだわけではないので、素朴な画のようにも見えるが、筆致や色彩感覚に独特のものがあったらしい。
妻の死後絵筆をとったウォリス
しかし、それ以上に打たれるのは下の記述。
しかし何よりも、多くの絵が人生の記憶に残る情景であり、すでに失われたものだった事実に注意をひかれる。(中略)晩年を迎えた人間が、描く営みによって人生をよみがえらせ、孤独を支えようとした動機が胸を打つのだ。
ウォリスは、絵を高値で売ろうとせず、最後は貧民収容施設で息を引き取ったという。
しかし絵を得て、生き生きと回想を再現させながら過した彼の晩年は、心楽しいものであったろうと思う。
そして、70歳になって新しい表現様式を手に入れ、それと共に生き得る可能性が人にはある、ということに、今とても勇気づけられる思いがする。