平成万葉集

『平成万葉集』第2回短歌全作品 テーマ「男と女」4月24日NHKBS放送分

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24日NHKBSプレミアムで放送の『平成万葉集』第2回、番組内で掲載された短歌全作品をご紹介します。

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『平成万葉集』とは


もうすぐ平成も終り。日本人は何に笑い、涙し、怒ってきたのか・・

かつて「万葉集」が天皇から防人まで多彩な歌を集め心の記録としたように、平成に生きた私たちの心模様を短歌から描く大型シリーズが始まります。

今日はその3回シリーズの2回目、テーマは「男と女」です。

『平成万葉集』第2回全作品 テーマ「男と女」

 

元号が変わる前の平成最後の年にテレビ番組として編まれた『平成万葉集』。

短歌人口百万の中から選りすぐった平成こころの歌、平成30年を短歌でたどります。

番組内容 平成万葉集第2回

今回は第2回目、番組内で放送された短歌全作品です。

構成は、テーマ別の短歌、また、特定の人物の短歌と生活の様子、LGBTの歌人の作品、高校の文芸部の作品やホストの歌会、歌人の永田和宏、河野裕子夫妻の短歌など、盛りだくさんの内容でした。

なお、数が多いため、歌人の永田和宏、河野裕子さんの部分は、別な記事「『平成万葉集』第2回 テーマ「男と女」から河野裕子・永田和宏夫妻の短歌」にあります。

 

プロローグ

 

ホームラン打ったつもりで結婚し三十五年試合は続く 富山県 桑島芳弘

適切なキスの長さがわからずにほへとちりぬるあたりでやめた 兵庫県 西村曜

徘徊の夫がつけてる GPS は宇宙よりくる地図の上歩く  石川県 吉本蓮子

私のキャリアをどうしてくれるのと考えたってあふれる乳汁  東京都 浅羽佐和子

家ぢゆうにおせっかいなる声のする家電いずれも女のしゃべる  大阪府 船越一英

 

恋の風景

 

待ち受けを 空から海に変えている会いたくてしかたがない夜である 愛知県 野口あや子

さよならをメールでつげたきみの声聞かずにすんだがそうぞうできた  群馬県 中野沙也香
非正規とバイトの恋は非正規がバイトの分を多く支払う 兵庫県 西村曜

校庭の君を見ている窓という字はどことなく恋に似ており 大阪府 中村玲子

 

「モモカとヒロキ」

 

細胞のひとつひとつが火であればその照りかへしのやうな僕達  宮城県 浅野大輝

――燃えるような恋の歌を詠んだのは浅野大輝さん。
高校3年の時なかなか会えない彼女ができました。
お相手は九州福岡の吉村桃香さん。
全国の高校が集まって短歌を読み競う、短歌甲子園で出会いました。

 

ね(電波の途絶えるたびにぼくたちは死んでゐるのかもしれなくて)え 浅野大輝

スカイマーク、Skype、空をつなぐものイヤホン越しじゃない声が欲しい 吉村桃香

――浅野さんが進学のため仙台に移ってからも、二人は電波の恋を貫き、めでたく去年結婚しました

「なんかでも短歌があったからこういう人生になった気がしますね」

 

桃の花言葉は天下無敵だしきみが勝つのも仕方がない 浅野大輝

 

「妻の名前が桃香なんです」

 

日本列島へし折れよあなたの浴びた雨が来て一面塗り潰れるアスファルト  浅野大輝

 

「秋田と福岡、へし折れたら会えるのに」

 

風がうたひわたしがうたふあかるさのはるなつあきふゆどの明日も明日 浅野大輝

 

「私も怒っている」働く女性の歌

リクルートスーツを脱げばあらはるる男尊女卑に怒るふともも 東京都 辰巳泰子

降りぎわに腿をひと撫でされる朝性別にのみ辞表出したし  愛知県 山川藍

セクハラの声に歪んだ笑顔向け緘黙した日のわたしもいけない  神奈川県 尾崎朗子

女(め)の船と男(お)の舟の網ほどけゆくのでなくわれば断ち切りてやる 東京都 松平盟子

 

ホスト歌会

 

――ホストという職業をしている人たちの短歌の会で詠まれた作品です。
作者が表示されないものも、そのまま記載します。

お!おはよう数字抜かれた後輩に度肝を抜かれお、おざまっす

平成とホスト人生苦楽あり天気と希望集大成 鶴谷文隆

エレチューで誤魔化してきた関係性出口見えない色恋営業

――第1位に選ばれたのは

アフターで食事に行っただけなのにいつになっても帰れない

 

いつか来る別れ

逝きし夫のバックの中に残りいし二つ穴あくテレホンカード  鹿児島県 玉利順子

――使いかけのテレホンカード。このカードを使って入院先から毎日電話をくれたのだそうです。

死ぬ時は眉描いてねと夫に言う笑顔にていうたわむれのごと  新潟県 馬場カヨ

幾本もの管につながりしろじろと繭ごもる妻よ羽化するか、せよ。東京都 桑原正紀

かくも悲しく人を思ふということのわが生涯に二度とはあるな 京都府 永田和宏

 

沖縄 浜崎結花さんの短歌

 

愛された。置いていかれた。母が父を語ればすべて受動態なり 沖縄県 浜崎結花

君の言知り尽くしたい砂道警の砂は何度行き来しても砂 同

海のくせに黙って引いてゆくなんて意気地なしって言えずに泣いた 同

揺れている沖縄ゆれている私波打ち際をまっすぐ歩く 同

 

『17歳』

 

――下館第一高等学校 文芸部の3名の作品が紹介されました

 

コーラにもカレー粉にもある香料のようで私に必要な君 茨城県 袖山空大

冬の夜の星みちたりこの街のそれぞれの持つうつくしき自慰  茨城県 大幡浅黄

少女から女に変はる乳房してわれは眠れり夏の夕暮れ 同

ケーキからフィルムをはがすときに似た心地で剥いでいく君のブラウス 茨城県 林里美

足を組む君の素肌を見ておれば我も汚れの無き精を持つ 袖山空大

ソックスを忘れた土曜の昼間でも一番ホームの君を探してる 同

「みなさんは子どもを埋める体です」呼吸の音に満ちた教室 茨城県 林里美

 

わたしへの旅路 LGBT

LGBTなど多様な性のあり方と、歌人の小佐野彈さんの作品が紹介されました。

性別の欄は男と女だけそのあいだには様々あれど 東京都 野上卓

レズビアンと名告れば職を失ふぞと或る物書きが忠告しくれき 埼玉県佐竹游

セックスに似てゐるけれどセックスぢやないさ僕らのこんな行為は 東京都 小佐野彈

ぬばたまのソファーに触れ合ふお互いの決して細くはない骨と骨 同

明日は雨未遂なれどもこのひととがけを目指したこともあったな 同

なにもかも打ち明けられてしんしんと母の瞳は雨を数へる 同

家々を追はれ抱き合ふ赤鬼と青鬼だつたわれらふたりは 同

越えがたき壁のあること認めつつ認め合ひつつ居場所を探す 同

 

 

それでも何とか生きていく

この世には弱い女はいてませんはかなげ見せこそ最強のひと 大阪府 東大寺エリカ

尾の切れた堪忍袋携えて今週も行く熟年離婚講座 磯部恵美子

妻と毒字画似ておりあなどるな目には見えねど牙を持つ 広島県 岡元稔元

山川藍さんの短歌作品

 

歌なんか作ってられるわけがない貯金が五百万円欲しい 山川藍

なんだあのカップル十五分もおる「あーん」じゃないよ あとで真似しよ  同

行きのバスでハナクソ食べていた男性を誰かに話してから忘れたい 同

いま起きた2分後にはもう駅にいてバッグにブラジャーが詰まってる 同

正社員辞めて8年アルバイト三つ掛け持ちして5年経つ 同

痩せたこと一度もないが痩せたさをライフワークにする安らかさ 同

わたしにも反省すべき点はあるなどと思った瞬間に負け 同

 

結婚したいしたくない

恋をしてほしい息子は恋をせぬゆっさりと夏の欅みたいで  神奈川県 神野志季三江

うちに居るとなりにも居る独身のIT担当のやさしい息子  東京都 松本知子

結ばれることはそんなに正しいか未も既も消して非婚と書けり  岩手県 砂花ことは

 

母の銀河

正座して雛に向かえばまっすぐに思い出が来る来て過ぎてゆく 神奈川県 神野志季三江

体臭を持ち初めし子が朝ごとに幼く去りし父を匂わす

とおい昔の恋は綺麗な恋となり希望のように小さく点る 同

母との子の暮らしを始めるための旅銀河は太く流れていたり 同

 

恋の行方

ケータイを畳み両手で胸に当てあこがれこがれこわがるなかれ  富山県 笠木拓

大嫌い何度も思った帰り道でも君意外とはケンカはしない 埼玉県 原彩佳

思いきってあなたの夢に出たけれどそこでもななめ向いにすわる 大阪府 虫武一俊

 

 

天皇 皇后の御歌

 

人々に見守られつつ御列の君は光の中にいましき  平成21年皇后

 

 

五十余年吾を支へ来し我が妹も七十七の歳迎へたり 平成23年天皇

去れる後もいかに思はむこの苑に光満ち君の若くませし日 平成30年 皇后

 

いのち

スカートが海風孕む生まれるよいつかぜったい誰かを産むよ   北海道 初谷むい

ケータイを畳み両手で胸に当てあこがれこがれこわがるなかれ  富山県 笠木拓

「四人しか産めず肩身が狭かった」祖母からたった二世代の今  東京都 上田結花

女体倫理を受けとめ得るや時間止めて凍結受精卵命みごもる 神奈川県 小宮 雅文

『穂佳(ほのか)の時間』

 

男と女だからトイレは別行動……中野ブロードウェイで悲しい埼玉県 武田穂佳

ベランダでどちらのものかわからない陰毛を撒く全休の朝

目薬が目玉に堕ちるのを見てたその日の地球美しかった

温泉で祖母に体をほめられた日本のこれから五十年

 

『新しい旅が始まる』

君もわたしも同じ花を見つめてる静かに幕を閉じる「平成」 沖縄県  浜崎結花

遠い遠い恋の記憶も平成のどこかに紛れゐて霾(よな)ぐ 神奈川県 神野志季三江

僕たちはむかし魚から進化したスマホを消せば平成の風邪 茨城県 大幡浅黄

形のよいこの頭蓋骨の内側に私の愛する深海がある 宮城県 吉村桃香

火葬場でこの頭蓋骨を砕く日がいつか来るかもよ君を抱きつつ 同

以上、「平成万葉集 第2回テーマ男と女」の皆様の作品でした。

すてきな作品をありがとうございました!





tankakanren

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