門脇篤史「微風域」山階基「風にあたる」から「生活と人生」朝日短歌時評松村正直  

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門脇篤史「微風域」山階基「風にあたる」から「生活と人生」朝日短歌時評松村正直

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朝日新聞の短歌時評に「生活と人生」と題して、松村正直さんが門脇篤史さんと山階基さんの作品を紹介しています。

身近なものを題材にした、これらの作品をご紹介したいと思います。

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門脇篤史と山階基の作品

門脇篤史と山階基(やましなもとい)さんは、昨年の第六回現代短歌社賞を受賞され、この度歌集を刊行されたとのことです。

おもしろいことに、どちらも「納豆」を題材に、それも「糸」をピンポイントに詠まれた歌が冒頭に紹介されています。

生活と人生の短歌 

納豆の薄きフィルムをはがしをりほそき粘糸を朝にさらして 門脇篤史

納豆のパックをひらくつかのまを糸は浮世絵の雨になりきる 山階基

というのが、納豆を詠んだ二首です。

 似た場面を詠んだ歌を引いた。納豆の容器を開けた時に伸びる糸に着目し、そこに美しさを見いだしている。

というのが、松村氏の歌の解説です。

 

二首目についてはさらに、

山階の「浮世絵」は、例えば歌川広重の東海道五十三次の「庄野」を思い浮かべれば良い。

とありますが、「庄野」がどんな絵かというと

こちらのような「雨」が「浮世絵の雨」なのでしょうか。

色刷りではあっても、セピア色や薄墨色の感のある、古い画の中のソフトな雨。

そして、「なりきる」というのは、「納豆」を主語にした擬人法ですが、愉快な表現です。

 

食べ物と食卓のシーン

両者とも男性の歌人ですが、さらに食べ物に関する歌が続きます。

牛乳に浸すレバーのくれなゐの広がるゆふべ目を閉ぢてゐる

ケチャップを逆さにすれば透明な汁の後よりくれなゐは垂る

門脇篤史さんの作品。

どちらポイント「くれなゐ」をめぐる時間経過があります。

斎藤茂吉の

すり下(おろ)す山葵わさび)おろしゆ滲(し)みいでて垂る みづのかなしかりけり

や、微細なところを扱ったと言われる、長塚節の、

馬追虫(うまおひ)の髭のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて思ひ見るべし

などが思い出されます。

 

点々と残ってしまう梨の皮ひとつひとつをあらためて剥く

使おうとペッパーミルをつかむたび台にこぼれている黒胡椒

梨の皮の取り残しを再度丁寧に剝くという情景。

二首目は、台所ですが、こぼれる胡椒が気になる作者。

胡椒はう時も微量でいいものですが、それがこれから使う食べ物の上にではなくて、胡椒を挽く行為をする動作に先行して既に散っている、それだからそこに目がいくのでしょう。

松村氏は「生活のディテールや手触りを読むことは、取りも直さず人生を詠むことでもある」と、生活と人生、そして短歌のつながりを、これらの歌に確認されているようです。

「厨歌」の男女差

食べものや調理の歌は「厨歌」などとも呼ばれて、以前は女性によって詠まれることが多かったと思います。

古くは男性の歌人、古泉千樫が料理をすることをむしろめずらしいこととして、詠んだふしのあるものがあります。

ひとり身の心そぞろに思ひ立ちこの夜梅煮るさ夜ふけにつつ

 

しかし、近年は男性にとっても厨歌が特別なものでなくなって、詠まれる歌にも男女差がなくなりつつあるのだなと、その点においても感慨が深い作品でした。

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