秋の七草の季節となりました。
秋の七草というのは、何から来ているのかというと、万葉集にある山上憶良の短歌からなのです。
山上憶良の選んだ七草とはどんなものだったのでしょうか。短歌と合わせてご紹介します。
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秋の七草は万葉集から
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令和は梅を詠んだ「梅花の歌32首の序文」から取られた令和だということで話題になりました。
一方、秋の七草は、万葉の時代からずっと続いて知られているものだということをご存知でしたか。
「秋の七草」は山上憶良
作者は、山上憶良(やまのうえのおくら)という人。
令和の序文を記した、大伴旅人と同じく、九州筑紫の太宰府に赴任していた人ですね。
大伴旅人とも、いわば同僚でありながらも、歌をともに詠む歌友でもあったのです。
その山上憶良が詠んだのがこちらです。
山上憶良 秋の野の花を詠む歌
山上臣憶良の、秋の野の花を詠みし歌2首
秋の野に咲きたる花を指折り(およびをり)かき数ふれば七種(ななくさ)の花
-巻8 1537
萩の花尾花葛花(くずはな)なでしこの花おみなえしまた藤袴(ふじばかま)朝顔の花
-巻8 1538
最初の歌は、そう、いわゆる普通の歌ですね。
けれども2首目は、なにかちょっと違う感じがしませんか。
まず、花の名前が並んでいるだけですね。
それから、「あきのはな おばなくずばな なでしこのはな」
ここのところ、「なでしこのはな」が7文字になっています。
そして「おみなえし」「またふじばかま」「あさがおのはな」。
ということは、五七七五七七のリズムになっている歌、こういうのを旋頭歌といいます。
芥川龍之介が、旋頭歌25首の連作で「越人」というのが、よく知られていますが、575の短歌になれた人からすると、不思議な揺らぎがあるようにも思えます。
秋の野に咲きたる花を指折り(およびをり)かき数ふれば七種(ななくさ)の花
作者
山上憶良
歌の意味
秋の野に咲いている花を指折り数えてみれば、7種類の花がある
鑑賞と解説
漢語に「屈指」という言葉があり、それが指を折って数を数えることをいいます。
この歌も、漢詩に習って作られた、当時の詩であるのです。
指を折って数えるということは、それだけ秋の花が数多く、豊かであるという意味になるでしょう。
ほのぼのとした、やさしい雰囲気の歌です。
萩の花尾花葛花(くずはな)なでしこの花おみなえしまた藤袴(ふじばかま)朝顔の花
こちらが、その実際の花の名前をあげた歌で、二首で一組となっています。
最初が、萩、二番目の「尾花」というのは、これはススキのことです。
ススキも「花」と作者は考えていたようです。もちろん植物学上は花で間違いありません。
そして、葛の花、なでしこ、おみなえし、フジバカマ。
最後の朝顔には諸説あり、桔梗のことをいったという説、牽牛子(けんごし)、木槿(むくげ)の諸説があります。
「また」は、接続詞ですが、この「また」が、一首目の「指を折って数える」に対応しているとされます。
そして、歌を読み上げて披露するときに、一種の合いの手のように、歌を調子に乗せるために、この箇所に用いられたと思われます。
「七草」の七の意味
七という数字に関しては、中国において特に優れたものを選ぶのに「七賢人」など、七の数にを用いるものが多く、作者の頭にその数字があったのではないかとされています。
もっとも雅趣に富む花を七つ選び出すということに意味があったのでしょう。
おそらく、この時代の歌の披露には、舞やジェスチャーを伴うとされていまうから、指を折りながら、「はぎのはな、おばな、くずばな・・・」と実際に数え上げるかのように、詠われたものでしょう。
いよいよ秋らしくなってきました。散策の際は、秋の野の花にも目を向けてみてくださいね。