万葉集

万葉集の結婚の歌 安見児と結婚式3首 大伴家持

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結婚の短歌、万葉集の中には、自身の結婚を詠んだ歌や、誰かの結婚を詠んだ歌はないかを探してみました。

古事記の八重垣の歌、それと、藤原鎌足の安見児の歌の他、夫婦愛の歌、結婚式と思われる3首と大伴家持から一首をご紹介します。

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日本最古の短歌は結婚の歌

万葉集に入る前に、日本の一番古い短歌というのは、結婚を題材にしたものです。

ちょっと面白い歌でもありますよ。

八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を

え、これが結婚の短歌? とちょっと意表を突かれるかもしれません。

読み方は

「やくもたつ いづもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを」

これは「古事記」の中に出てくる歌で、意味は、「幾重にも重なる雲が湧くこの出雲の地に、妻を招き入れる宮を造ったが、その雲のように幾重にも重なるくらいの垣を作りたいものだ」というもの。

出雲の地で八岐大蛇を退治したあと、大蛇から命を救った櫛名田姫《くしなだひめ》を妻として迎える時に歌った歌であるそうです。

この時代の短歌は、紙に書くのではなくて、文字通り「歌った」、そして、舞いもついていたでしょう。

そのように全身で、姫を自分の宮に迎える喜びを表現したと思われます。

「八重垣」が三度繰り返されているのは、この頃の短歌が、「謡い」、つまり、イベントのアトラクションのようなものとしての役割を持っていたからですね。

その場で皆がリズムをつけて、歌うものとして、「八雲」「出雲」「八重垣」の韻

「八雲 やくも」「出雲 いづも」「八重垣 やえがき」の韻とその繰り返しも、実際に謡いとして歌うために、そのように作られたのですね。

 

万葉集の結婚の歌

万葉集の結婚の歌として、有名なのは下の歌です。

われもはや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり

読みは、「われはもや やすみこえたり みなひとのえかてにすとう やすみこえたり」

意味は、「私は安見児を得た。皆の者が妻として得難いとしている安見児を得たのだぞ」ということです。

これも、妻の名前を含む「安見児得たり」が、繰り返し読み込まれており、その妻の価値と、喜ぶ理由を「皆人の得かてにすとふ」と挟んだだけの、単純で、それだけに主張の強い構成です。

詠んだ人は、藤原鎌足という人で、相手の同意を得たということではなくて、天皇の采女であった安見児を天智天皇が鎌足に下されたということのようです。

花嫁のお父さんに結婚を許可してもらったというのにも、ちょっと似ているかもしれませんね。




万葉集の結婚の短歌

その中でも、万葉集の結婚の短歌、結婚式の短歌は、下のものだと言われています。

長歌が一つと、その後に短歌が2つ続いているものです。

葦原(あしはら)の、瑞穂(みずほ)の国に、手向(たむ)けすと、天降(あも)りましけむ、五百万(いほよろづ)、千万神(ちよろづかみ)の、神代(かむよ)より、言ひ継(つ)ぎ来(きた)る、神なびの、みもろの山は、春されば、春霞(はるかすみ)立つ、秋行けば、紅(くれなゐ)にほふ、神なびの、みもろの神の、帯(お)ばせる、明日香(あすか)の川の 水脈(みを)早み、生(む)しためかたき、石枕(いしまくら)、苔(こけ)生(む)すまでに、新夜(あらたよ)の、幸(さき)く通(かよ)はむ 事計(ことはか)り、夢(いめ)に見せこそ、剣太刀(つるぎたち)、斎(いは)ひ祭(まつ)れる、神にしませば 巻13-3227

意味は、

瑞穂の国に捧げものをしようと、天から降りてらした多くの神々の神代から言い伝えられてきた、神なびのみもろの山は、春になると春霞が立ち、秋になると紅葉が美しくなります。

みもろの山のそばを流れている明日香川の水の流れが速くてなかなか苔(こけ)が生えない、その川の石枕に苔(こけ)が生える時まで長くすこやかに通えるようにお計らいください。夢でお見せください。大切にお祭りしてきた神々ですから。

というのが、おそらく神主の弁。

そして、

神なびの三諸(みもろ)の山に斎(いは)ふ杉(すぎ)思ひ過ぎめや苔(こけ)生(む)すまでに 巻13-3228 作者未詳

意味は、おそらく結婚の時の誓いのような新郎の弁で、

神なびの 三諸の山にお祭りしてある杉ではありませんが、この愛情を忘れることなどありましょうか、苔が生えるまでになっても

続くもう一首は

斎串(いぐし)立て御瓶(みわ)据(す)ゑ奉(まつ)る祝部(はふりへ)がうずの玉かげ見ればともしも  巻13-3229 作者未詳

こちらは、 祝部(はふりへ) つまり、式に立ち会った、神官の様子を詠んだ短歌と言われています。

他の短歌は

それではこれ以外にも、万葉集に結婚に関する短歌がないのかというと、広く知られているものの中にはまず見当たりません。

この時代は通い婚が主流であって、今のように親元を離れて、さあ今日から結婚して同居を始めようというような、明確な区切りがなかったからかもしれません。

また、短歌というのは、苦しいまで相手を思う悲恋の歌はひじょうに多いのですが、うまくいった恋愛の歌というのは、それほどないのです。

やはり、古くから、歌に詠まれる心情というのは、胸に迫って誰かに訴えたくなるようなものごとであるからかもしれません。

夫婦愛の短歌

それから、夫婦愛を示すものとしては、

馬買はば妹(いも)徒歩(かち)ならむよしゑやし石は踏むとも我(わ)は二人行かむ

というのも、よく取り上げられます。

妻が夫が徒歩で移動するのがたいへんだから馬を買うようにすすめたが、夫が「自分が馬に乗って、妻を歩かせるのは忍びない。それなら自分が石を踏んだとしても二人で歩きたい」としたものです。

この歌を交えた結婚式のスピーチの例はこちらに掲載されています。

これは素晴らしいスピーチですね。

ある結婚式での祝辞



大伴家持の松の短歌

もし私が、万葉集から紹介できるようなものをと言われたら、大伴家持の 巻20‐4501 をあげたいと思います。

八千種の花はうつろふ常葉なる松のさ枝を我は結ばな

読み:やちぐさの はなはうつろう つねはなる まつのさえだを われはむすばな

意味は、数々の花は色が褪せてしまうが、色の変わることのない松の枝を私たちは結ぼう

万葉の時代には、松の枝を結ぶことは、無事や幸運を祈る行為です。

おそらくは、政治的な立場のことを言って、過激な行為に走らず、中道を歩み、命を長く保とうという姿勢を詠んだものとも言われていますが、若干地味ではありますが、結婚の心構えとしても良い内容と思われます。

あるいは、まだ万葉集の中に埋もれている歌もあるかもしれませんので、皆様もお探しになってみてくださいね。

 

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