古今・新古今集

さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする/古今和歌集

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さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする

古今和歌集に収録されている有名な和歌の現代語訳、品詞分解と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする

読み: さつきまつ はなたちばなの かをかげば むかしのひとの そでのかぞする

作者と出典

よみ人しらず(作者不詳)

古今和歌集 3-139 伊勢物語 60段

現代語訳と意味

夏の5月を待ってやっと咲いた花橘の香りを嗅ぐと、昔親しんだ人のの袖の香りがするようで、懐かしい思いになる

語句と文法

さつき陰暦夏5月のこと
花橘花の咲く橘 橘は白い花の咲く常緑樹
かげば「かぐ+ば」 「ば」は順接仮定法条件 「~すると」の意味
昔の人以前知っていた人のことであるが、恋人だろう
袖の香袖の香は同じ古今集の33にもある
色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも(よみ人しらず)
強意の助詞

解説と鑑賞

橘は、陰暦の5月に咲く花とされていました。白い香りの強い花が咲くとされています。

この歌の次の歌は

いつのまに五月来ぬらむあしひきの山郭公(ほととぎす)今ぞ鳴くなる

で、やはり、5月とその風物、ホトトギスとを合わせて詠み込んでいます。

「五月待つ」

「五月を待」っているのの主語は「花橘」で一首の擬人法ですが、もちろん夏と橘の開花を待っていたのは、作者自身です。

「待つ」という言葉を使うことによって、それだけで「やっと咲いた」という思いを表すことができます。

「昔の人」につながる

また、「待つ」は人を想う気持ちにも通じるもので、この言葉が、「昔の人」を導く伏線ともなっています。

「袖の香り」

この時代の人は、衣服に香をたきこめていました。手紙や手紙に歌を記して書き送る才にも、そのように良い香りをつけることが習慣でした。

なので「花の香」というと、この頃の歌なら、それは必然的に「袖の香り」を連想させるものだったのです。

単純なようで、この歌の時間制は点ではなく、「昔と今」の線を表す奥行きがあるものとなっており、それを導く要素が五感の一つ嗅覚に訴える「花の香」であるのです。

単純なようで、この歌の時間制は点ではなく、昔と今の奥深いものとなっており、それを導く要素が「花の香」であるのです。

時間の多重性

花橘の白い花という視覚的な要素と嗅覚的な要素である花の香、それらが「昔」と「今」を結び、時間の多重性をも導き出します。

追憶は、花の香りのように、形のないもの、作者の胸の中にだけあるものです。

時は夏の初めの季節、ほのぼのとした作者の思いが詠み手にも伝わるでしょう。

花橘の詩的イメージ

古今集の時代には、この歌から「花橘=昔の人をしのぶ」という詩的イメージが生まれたとされています。

新古今和歌集の

「橘のにほふあたりのうたた寝は夢も昔の袖の香ぞする」

も優れた歌として知られています。

よみ人知らずとは

「よみ人しらず」は「詠み」すなわち歌を詠んだ人を「知らず」わからない という意味で、作者がわかる歌には、作者の名前を、そうでない作者不詳の和歌の場合に、作者名の代わりに記される

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