朝日新聞の「うたをよむ」に噴水の短歌が紹介されていました。
真夏の暑い時に涼を感じさせる水の風景は、文字で読むだけでもこころよいものです。
きょうの日めくり短歌は、「うたをよむ」より噴水の短歌をご紹介します。
スポンサーリンク
噴水の伸びあがりのびあがりどうしても空にとどかぬ手のかたちする
作者は杉崎恒夫。出典『食卓の音楽』
朝日新聞「うたをよむ」に噴水の短歌。「噴水の伸びあがりのびあがりどうしても空にとどかぬ手のかたちする」杉崎恒夫【日めくり短歌】 #短歌 https://t.co/NP96Dc5Ntr pic.twitter.com/1vvuZ4NqvB
— まる (@marutanka) August 8, 2020
杉崎恒夫氏は、歌集『パン屋のパンセ』の作者の歌人です。
「うたをよむ」の今回の著者、東郷雄二さんによると「一定の高さを超えることができない水は、達せられることのない願望の喩えであり、それでもなお空へと手を伸ばす人間の姿を描いている」そうです。
杉崎氏の噴水の短歌は他に、
噴水のシンクロナイズドスイミングたくさんの脚の立つ時のある
捩れつつ立ち直りつつ噴水を支えいるのは水の軟骨
噴水の立ち上がりざまに見えているあれは噴水のくるぶしです
いずれも、おもしろい捉え方が見られます。
作者は即噴水の水の動きや形を人の身体に置き換えて見ていたようです。
噴水が止まれば水は空中に水の象(かたち)を脱ぎ捨てて散る
作者は鳥居。出典『キリンの子』
噴水の水が止まるということを思い浮かべた作者は、下句の情景の比喩を得ます。
「鳥居」というのがこの歌人の名前。母上が自殺後施設で育ちホームレスとなったのですが、拾った新聞で字を覚えて、短歌を作るようになり、短歌の賞の入選を果たしたのちの歌集出版となりました。
噴水を噴き出て白を得たる水白を失うまでのたまゆら
作者 藤島秀憲 『ミステリー』
この歌は、噴水の歌として良く引用されます。
第二歌集「すずめ」には、「噴水のしぶきに濡るるくちびるを今めざめたる言の葉の出ず」というのもありました。
これらの短歌を紹介した東郷雄二氏は、「見かけの上では噴水しか描いていないにもかかわらず、私たち人間の生きる様にどこか通じるところが感じられる」としています。
きょうの日めくり短歌は、朝日新聞の「うたをよむ」にある噴水の短歌をご紹介しました。
それではまた明日!
日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌