石川不二子さんの訃報が伝えられました。開拓農場を経営する中で詠んだ短歌が特徴で、「ゆきあひの空」で迢空賞を受賞した歌人です。
きょうの日めくり短歌は、石川不二子さんの短歌をご紹介します。
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母山羊と仔山羊がながく呼びかはす合歓の葉すでに眠るゆふべを
作者:石川不二子
石川不二子さん訃報「母山羊と仔山羊がながく呼びかはす合歓の葉すでに眠るゆふべを」「ゆきあひの空」迢空賞の歌人【日めくり短歌】https://t.co/7OzvfB2Bci pic.twitter.com/sbumoRVLhk
— まる (@marutanka) August 27, 2020
石川不二子さんは農業大学を卒業後、島根県に入植、のち岡山で、農場を営まれました。
農業に関わる風土や、動植物の歌に印象に残る作品が多くあります。
石川不二子紹介文
神奈川県生まれ。東京農工大在学中、中井英夫によって見出された新人。
大学卒業後は、島根県の開拓地に入植。第1歌集『牧歌』には、厳しい自然の中で営まれる生活を、過不足のない言葉で簡潔に誠実に詠う魅力的な作品が詠まれた。
石川不二子の短歌
「牧歌」より初期の作品。
大学時代から、結婚されて農場で働く生活を伝えます。
農業実習明日よりあるべく春の夜を軍手軍足買ひにいでたり
睡蓮の円錐形の蕾浮く池にざぶざぶと鍬洗ふなり
みづみづしき相聞の歌など持たず疲れしときは君に倚りゆく
母山羊と仔山羊がながく呼びかはす合歓の葉すでに眠るゆふべを
化粧水の瓶にやさしき陽がさしてわれのはたちは今日にて終る
ルナアルの「博物誌」一冊あてがはれ置去られたるわれとこがらし
見のかぎり花野が牧野にならむ日ぞやがてはわれも農の子の母
塩はゆき黒髪を噛む子牛どもわが夫よりもいたく優しく
荒れあれて雪積む夜もをさな児をかき抱きわがけものの眠り
葉ざくらとなりて久しとおもふ木のをりをりこぼす白きはなびら
「のびあがり赤き罌粟咲く、身を責めて切なきことをわれは歌わぬ」に石川氏の歌の性格が表れているかもしれません。
石川不二子「ゆきあひの空」
最近の歌集は「ゆきあひの空」。迢空賞を受賞しています。
よく撓ふのが佳き萩ぞよその萩を見てきて称(たた)ふわが白萩を
銀化してガラスは貴くなるものをいつまでかあらんわが歌の命
ななそぢといふ齢かな新しき死者増えふるき死者とほざかる
きょうの日めくり短歌は、訃報の伝えられた石川不二子さんの短歌をご紹介しました。
それではまた明日!
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