短歌とは各句が57577の文字数でなる31文字の形式をもつ定型詩と呼ばれる詩歌の一種です。
短歌のルールを知っておくと鑑賞や国語の勉強、自分で作るときにも大いに役に立ちます。
俳句との違いや季語の有無、数え方など、短歌の基本についてわかりやすく解説します。
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短歌とは
短歌とは57577の文字数を持つ5つの句からなる31文字の形式をもつ詩の一種です。
同じ詩歌の仲間には、詩、そして俳句があります。
まずは、短歌の基本から目を通しておきましょう。
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短歌は57577の「定型詩」
短歌と普通の詩、自由詩との違いは、字数が決まっている「定型詩」であるというところです。
短歌の文字数は全体が31文字、各句が57577と決められています。
短歌の書き方は、基本的には改行をせず、句読点を用いず、文字と文字の間を開けずに、一行で記します。
ただし、行を分ける分かち書きを用いた石川啄木の例や、句読点を用いた折口信夫などの例外はあります。
また、現代短歌でも句読点や字空けは自由に用いられています。
関連記事:
短歌の書き方 縦書きの改行と分かち書き 句読点 字空け
短歌の種類
古くは、短歌に対して、もっと長い歌、長歌(ちょうか)や、旋頭歌(せどうか)という短歌に似たものもあります。
長歌や旋頭歌は現代ではこれらの形式はほとんど用いられていません。
短歌の数え方
数える時の単位 | |
短歌 | 首 例)1首 2首 |
俳句 | 句 例)1句 2句 |
短歌の数え方は、「首(しゅ)」とつけて「1首、2首」と数えます。
対して、俳句は1句、2句と数えます。
辞世の句と短歌
短歌の数え方は、「首」が使われるのは上の通りですが、「辞世の句」という時には、短歌が含まれる場合があります。
正確には「辞世の短歌」、または「辞世の歌」というべきですが、調べたい時には「辞世の句」も含めて探してみてください。
短歌と俳句との違い
短歌と俳句の違いはたくさんありますが、押さえておきたいのは下の2つです。
・短歌と俳句は字数が違う
・季語が必要なのは俳句の方
まず、定型の形式と字数が違います。
それと大きな違いは季語の有無です。
短歌と俳句の文字数
文字数 | 各句の文字数 | |
短歌 | 31文字 | 57577 |
俳句 | 17文字 | 575 |
短歌の文字数・・・31文字
短歌は57577の31文字であるのに対して、俳句は575の17文字です。
短歌と季語
俳句には季語というものが必要ですが、短歌には季語を入れるという約束事はありません。
ただし、古くから季節を取り込んだ歌は多く見られ、ルールではなくても季語を自由に取り入れることも普通に行われています。
短歌と俳句の言葉の違い
主に使われる言葉 | |
短歌 | 和語 |
俳句 | 漢語 |
他には、俳句には漢語が使われることが多いのですが、短歌では漢語よりも和語と呼ばれる言葉をよく使います。
例えば、俳句では「残月」(ざんげつ)というような、音読みの言葉、これが漢語です。
和語を多く使う古典の短歌では「残る月」として、漢語は使われないことが多いです。
もちろん、漢語は短歌にも使えないわけではありません。現代の短歌では漢語も和語も区別なく使われています。
例:
月残るねざめの空の郭公さらにおき出てなごりをぞ聞く(玉葉)
残月に日出づる原の芒かな/高浜虚子
短歌と俳句の内容の違い
俳句は短歌を短くしただけと考えられていることが多いようですが、字数や言葉、季語が違うというだけではなく、詠まれる内容も大きく違います。
「詠嘆」というコンセプトを持つ短歌の方が、どちらかというと主情的にものを述べるにも適しているといえます。
また、字数が多くて長さも長いので時間の経過を詠み込んだり、「起承転結」に似た起伏やストーリー性を表現することも可能です。
要するに短歌と俳句は五七調という点では似通っていますが、内容はまた別なものと考えた方がいいと思われます。
たとえば短歌の575だけを切り取ったものが、そのまま俳句になるかというとそうはなりません。
多くは起承転結の結末がないような俳句になってしまい、それでは作品が成り立たなくなります。
俳句と短歌は単に字数だけではなくて、それぞれの字数に合う内容で構成されているのです。
短歌の形式
持統天皇の万葉集と百人一首の名歌「春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山」を例にとって、短歌の構成と内容の説明をします。
57577の最初の5音を「第1句」または「初句」と言います。
それ以下は、2番目の7音を「第2句」、3番目の5音が「第3句」、4眼目の7音を「第4句」、最後の7音を「第5句」または「結句」といいます。
短歌の上句と下句
3句までの大きな単位を上句、それ以下は下句と呼んで区別をします。
上句と下句は単に短歌の部分の呼び名だけではなく、例えば連歌を作る時にも上句と下句に分けて作られることがあります。
この歌の解説
春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山/品詞分解と表現技法/持統天皇
短歌の代表的な技法
短歌の代表的な修辞法(表現技法)には句切れと体言止め、倒置法などがあります。
- 句切れ
- 句またがり
- 体言止め
- 倒置法
- 字余り・字足らず
またその他には、比喩や擬人法、反復、対句、省略法などがあります。
- 比喩
- 擬人法
- 反復
- 対句
- 省略法
代表的な技法について解説します。
関連記事:
短歌の表現技法7つ 比喩, 擬人法, 体言止め, 反復法, 倒置法, 対句, 省略法
句切れ
上の歌は、「春過ぎて夏きたるらし」の「らし」が終止形です。
句読点を打つとすれば、ここに「夏きたるらし。」に句点がついて、文章が終わります。
他にも、短歌には31文字の途中に文章の終りがある歌があります。
このような箇所を「句切れ」といいます。
短歌の句切れの例
斎藤茂吉の教科書・教材の短歌から見てみましょう。
のど赤きつばくらめふたつはりにゐて 垂乳根の母は死にたまふなり
あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり
最初の歌は「句切れなし」です。
2首目は「とほりたり」が終止形なので、ここが句切れの「3句切れ」です。
句切れの見分け方について詳しくは下の記事で確認してください。
関連記事:
短歌の句切れ 解説と見分け方
体言止め
「春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山」の歌の最後は「天の香具山」です。
最後の句なので結句の部分ですが、この香久山は山の名前で名詞です。
名詞の後に「です」や「ます」に当たるような助詞などがありません。
このように名詞で終わる歌を、体言止めといいます。
ポイント
■体言と用言「体言」というのは、名詞のことで、対する動詞は「用言」です。
体言止めは結句、すなわち短歌の最後が名詞で助詞を含まないで終わる歌を分類する呼び名です。
体言止めの短歌の例
この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日 俵万智
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕 北原白秋
1首目は「サラダ記念日」が名詞で、ここで歌が終わります。
2首目は「夕(ゆうべ)」が最後の言葉で、こちらも体言止めです。
倒置法
倒置法とは、文などにおいてその成分をなす語や文節を、普通の順序とは逆にする表現方法をいいます。
倒置法の短歌の例
命あらば逢ふこともあらむ わが故にはだな思ひそ命だに経ば 狭野茅上娘子
君のため空白なりし手帳にも予定を入れぬ鉛筆書きで 俵万智
これらの技法とその他の修辞については下の記事をお読みください。
短歌の表現技法7つ 比喩, 擬人法, 体言止め, 反復法, 倒置法, 対句, 省略法
字余り
短歌の字余りとは五音が六音以上になったり、七音が八音以上になったりして、57577の定められた字数より多いことをいいます。
字余りの例
初句が6音で字余りです。
字足らず
字足らずは逆に57577の定められた字数より少ないことをいいます。
字足らずの例
初句が「かとの」の3音で字足らず。
また結句の「生まれてみよ」は、7音に1字足りない6音で字足らずです。
句またがり
句またがりとは、文節の終わりと句の切れ目が合致しないことをいいます。
句割れ、句またがりともどちらも定型の予定調和を崩して別のリズムを作り出す働きがあります。
「無人郵便局」は一つの言葉ですが、2句目が「無人郵便」までで7文字、3句目に「局」が続く句またがりです。
もうひとつ、「うすみどり」は、4句目の終わりに「頼信紙のうす」までで、結句に「みどり」が続き、この箇所も句またがりとなっています。
短歌の言葉1 口語と文語
短歌は短歌に特有の言葉で詠まれていることに気がついたことがあるでしょう。
鑑賞の際もそうですが特に自分で詠む場合はどのような言葉を使うかは大切なポイントです。
短歌の言葉について説明します。
文語の短歌
古い時代の短歌は「文語」という書き言葉で詠まれています。
また、ひらがなの部分が、今の言葉は新仮名遣いであるのに対して、古い短歌は旧仮名遣いで記されています。
この場合は発音に注意が必要です。
■文語と旧仮名遣いの短歌の例
深々と人間笑ふ声すなり谷一面の白百合の花 北原白秋
口語短歌と文語の違い
現代の短歌には、現代の話し言葉のそのままに詠まれた歌もあります。
それは「口語短歌」といいます。文語との違いを比べてみましょう。
■口語短歌の例
この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日 俵万智
■文語の短歌の例
いたつきの癒ゆる日知らにさ庭べに秋草花の種を蒔かしむ 正岡子規
短歌の言葉2 枕詞他
現代短歌以前の短歌、近代短歌は多く短歌特有の言葉で詠まれています。
短歌特有の言葉には、「和語」「枕詞」「雅語」「古語」などがあります。
- 和語
- 枕詞
- 古語
- 雅語
和語
和語は「やまとことば」と言って日本の本来の言葉です。
下の短歌はすべてが和語で詠まれています。
和語の短歌の例
日がさせばそこはかとなき青空も巻きたる雲もいのちぞと思ふ 岡井隆
枕詞
決まった言葉の上につけて、就職したり、口調を整えたりするのに使われました。
現代ではあまり用いられませんが、使われ続けている「たらちね」のような詞や、積極的に取り入れる歌人もいます。
枕詞の例
たらちねの母が手離れかくばかり. 術(すべ)なきことはいまだせなくに (万葉集)
雅語
雅語は思いに平安時代の和歌に使われた、洗練された優美な言葉をいいます。
雅語というのは聞きなれない言葉ですが、短歌にはたくさん使われています。
「あなうら」「たゆし」「いとほし」「いとけなし」「いざなう」「なべて」などがそうです。
雅語の例
足裏(あなうら)を汚さずわれは暮らしきて父の聖書をこの冬ひらく 藤島秀憲
古語
古語は 万葉集など古代より伝わる古典に用いられた言葉です。
「まなうら」「まなかい」「夫(つま)」「きりぎし」「たなごころ」「天(あめ」「炎(ほむら)」「朝餉」「昼餉」「食(は)む」など短歌には、日常的に使われています。
古語の用例
ここに来てこころいたいたしまなかひに迫れる山に雪つもる見ゆ 斎藤茂吉
以上、短歌とは何かに基本的な知識をコンパクトにお伝えしました。
鑑賞や自分で短歌を作るときの参考になさってください。