こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ 若山牧水の梨の短歌、いかにも美味しそうに詠まれていますね。
秋の果物と言えば梨。早くもお店には、秋の味覚の梨やブドウが並び始めています。
きょうの日めくり短歌は、若山牧水の梨の短歌をご紹介します。
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こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ
読み:こおろぎの しとどになける まよなかに くうなしのみの つゆはたりつつ
作者:若山牧水 歌集『くろ土』(大正10年)
現代語訳と意味:
蟋蟀がしきりに鳴いている秋の真夜中に食べるこの梨の実からは、甘いしずくが落ちている
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— まる (@marutanka) September 2, 2020
梨の短歌
秋の果物と言えば、葡萄の短歌は多くありますが、梨の短歌は葡萄に比べるとそれほどではないようです。
もっとも万葉集には、「梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く」があるので、梨の歴史は古く、古代から食べられていたようです。
若山牧水は、酒好きで知られていますが、夜中に酒でなくて梨を食べることがあったものか、と思ったら、どうも子どもが病気になって、昼間は食べられないので、この時は夜中にひそかに食べたらしいことがうかがえます。
児等病めば昼はえ喰はず小夜更けてひそかには喰ふこの梨の実を
おそらく子どもはお腹を壊してしまったのでしょうか。
「児等」(こら)なので、一人ならず夏風邪で臥せってしまったのかもしれません。
ちなみに万葉集の「ら」は、複数形ではなくて、愛称のような、親しみを込めて使われるものがあります。
「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ」
の「憶良ら」の「ら」、他にも 「黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし磯を見れば悲しも」の「ら」も同様です。
上の牧水の場合は、若山牧水は結婚後、2女1男をもうけていますので、この場合は、家の子どもたちの意味であったと思われます。
やむを得ないとはいえ、子どもに隠れて夜中に夫婦で食べる梨の味もまた格別であったに違いありません。
きょうの日めくり短歌は、若山牧水の梨の短歌をご紹介しました。
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それではまた明日!
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