現代短歌

美しき誤算のひとつわれのみが昂りて逢い重ねしことも 岸上大作の短歌

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美しき誤算のひとつわれのみが昂りて逢い重ねしことも この歌は、岸上大作の代表作といえるくらいよく知られた有名な歌です。

きょうの日めくり短歌は、忌日にちなみ、岸上大作の短歌をご紹介します。

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岸上大作とは

岸上大作は、1939年(昭和14年)生まれ、安保世代の歌人として、闘争の歌を含めた青春の短歌が広く知られています。

代表作とされるくらい有名なのが次の歌

美しき誤算のひとつわれのみが昂りて逢い重ねしことも

現代語での読み: うつくしき ごさんのひとつ われのみが たかぶりてあい かさねしことも

作者と出典

岸上大作  作品集『意志表示』 「告白以後」の一連より

短歌の意味

この歌は、恋愛とその挫折、つまり、失恋の歌です。

自分だけが、心を高ぶらせて何度も会おうとしたが、相手はそうではなかった。すべてが、自分の思い描いた幻想で、それが誤った認識であったとわかった時の失意を「誤算」と表現しています。

続く下の句の「われのみが」も痛切です。

岸上大作の死因

岸上大作の死因は自殺で、その自殺の原因の一つになったのが、失恋ではなかったかとも言われています。

亡くなった際は、意識の途切れるまで、文章を書き残そうともしたようですが、あまりにも、悲しい最期であったと思われます。

下は、母を詠んだ歌。

 

皺のばし送られし紙幣夜となればマシン油しみし母の手匂う

意味:
皺を伸ばして送られてきた紙幣に、夜勤めから帰ってきた母の手にマシン油が匂ったことを思い出す

岸上大作と母

岸上大作の父は、戦死。母との母子家庭で暮らしました。

マシン油ということは、母は、機械作業で働いていたのでしょう。そして、その仕事で得たお金が贈られてくる。

送られてきたのは、紙幣なのですが、油のにおいがする「母の手匂う」としています。

その香りが、母に思い出すよすがの香りであったのでしょう。

残された歌には、多く、母を思う歌も残されていました。

走り書きは母へのたより絵はがきでカタカナまじりはわれへのたより

母の言葉風が運びて来るに似て桐の葉ひとつひとつを翻す

ひっそりと暗きほかげで夜なべする母の日も母は常のごとくに

かがまりてこんろに青き火をおこす母と二人の夢作るため

岸上大作の来歴を読むたびに、一人息子を懸命に育ててこられた母上の胸中が思われてなりません。

自殺の原因には、失恋だけではなく、安保闘争の政治的な挫折もあったとも言われていますが、大変に残念なことです。

意志表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチするのみ

作品集のタイトルとなったのがこの歌の初句です。

岸上にはもっと「意思表示」を続けてほしかった。忌日にそう思うのは私だけではないはずです。

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