万葉集

もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも 柿本人麻呂

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もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも

柿本人麻呂作の万葉集の和歌の代表作品の、現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説、鑑賞します。

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もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも

現代語の読み:もののうの やそうぢがわの あじろぎに いさようなみの ゆくしらずも

作者と出典

柿本人麻呂 万葉集264

現代語訳

宇治川の網代木にたゆたっている 波の行方がわからないことだ

語句と文法の解説

  • もののふの…読みは「もののう」。枕詞。「もののふ」は武士のことで、氏の数が多いところから、「八十(やそ)」およびその複合語、「い(五十)」と同音を含む地名「岩瀬(いわせ)」にかかる。
  • 宇治川…近畿地方を流れる淀川の京都府内での名称
  • 網代木…流れをせき止めて氷魚(ひお)を捕る網である網代を掛ける杭の事
  • いさよう…流れがさえぎられて 波のように揺れる様子
  • 知らずも・・・ 「も」は詠嘆の終助詞

句切れと修辞について

  • 句切れなし
  • 枕詞の使用
  • 序詞




解説と鑑賞

柿本人麻呂の秀歌の一首として知られる歌。

題詞に「近江国より上り来るときに、宇治川の辺に至りて作る歌」とある。

斎藤茂吉はこの歌を「人麻呂一代の傑作の一つ」にあげている。

一首のポイント

荒漠とした風景の中、川の波の流れに、時の流れをにこめて、しみじみとした哀しみを詠ったもの。

時の流れを川の波の流れに重ねる、この例えは、万葉集でも人麻呂が発案したものとされている。

歌の枕詞と序詞

「もののふの」は「八十」にかかる枕詞で、原文は「八十氏河乃」となっており、「八十氏」までが「宇治川」(「うじ」は同音の重複)を導く序詞となっている。

「八十氏河乃」に朝廷に仕える人たちを含ませる言葉となっている。

網代木は、網の「網代(あじろ)」を掛ける杭のことで、水辺に目立つ上に、網が外されているときは、いかにも荒涼とした寂しげな風景を象徴するものとなる。

子の枕詞を含む序詞の部分について、斎藤茂吉は、現代の鑑賞からすると序詞が邪魔をすることを指摘しながら、その声調的効果として、

「この哀韻は「いさよふ波の行方知らず」にこもっていることを知るなら、上の句の形式的にすぎない序詞は、却って下の句の効果を助長せしめたと解釈することもできるのである。」

と注釈している。

いさよふの意味

いさようは、他に「いざよう」と濁る用例もある。

河の流れが遮られて波のように揺れている様子で、人麿は、水の流れに時の過ぎゆきを重ねて例えており、これは人麻呂の考えた万葉集でも新しい表現とされる。

また、「八十氏」→「八十宇治川」と掛詞的に用いることで、調停の人事の不定の様子を暗に表しているとも言われている。

また、歌全体の背景に仏教的な無常観や、漢詩の影響も指摘されている。

斎藤茂吉の評

直線的にのびのびとした調べのものである。(中略)豊潤で太い朗らかな調べの家に同時に切実峻厳、且つ無限の哀韻を感得することができる。

人麻呂ぐらいな力量を持つ者になれば、その発達史も複雑で、支那文学も仏教も溶けきっているとも解釈できるが、この歌の出来た時の人麻呂の態度は、自然への観入・随順であっただけである。
--『万葉秀歌』斎藤茂吉著 より

柿本人麻呂の経歴

飛鳥時代の歌人。生没年未詳。7世紀後半、持統天皇・文武天皇の両天皇に仕え、官位は低かったが宮廷詩人として活躍したと考えられる。日並皇子、高市皇子の舎人(とねり)ともいう。

「万葉集」に長歌16,短歌63首のほか「人麻呂歌集に出づ」として約370首の歌があるが、人麻呂作ではないものが含まれているものもある。長歌、短歌いずれにもすぐれた歌人として、紀貫之も古今集の仮名序にも取り上げられている。古来歌聖として仰がれている。

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