都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
能因法師の和歌の代表作品の現代語訳と解説を記します。
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都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
読み:みやこをば かすみとともに たちしかど あきかぜぞふく しらかわのせき
作者と出典
能因法師 後拾遺集 羇旅
※能因法師の他の歌は
能因法師の代表作和歌作品
現代語訳
都を春の霞が立つとともに出発したが 早くも秋風の吹く季節となってしまった、白河の関に着く頃には
修辞法
・「立つ」は「霞が立つ」と「旅にたつ」の掛詞
・「立つ」は霞の縁語
・句切れなし
・体言止め
参考:
掛詞の和歌一覧
語句
- 白河の関・・・5現在の福島にある
- ば・・・ば=係助詞 「は」の濁音化で5文字に整えている
- 秋風ぞ・・・「ぞ」は係助詞
「たちしかど」品詞分解
- 立つ・・・4段活用動詞の連用形
- し・・・過去の助動詞「き」の已然形
- ど・・・接続助詞「~けれども」の意味
解説
法師が白河の関に下向した時の旅と季節の移り変わりを詠んだ歌。
詞書
「みちのくにゝまかり下りけるに白川の關にてよみ侍りける」
東北地方に赴いたとき白河の関で詠んだ
との詞書がある。
意味
みやこを旅立ってから長い日数を経たという感慨を詠んだ歌。
当時東北地方への移動は日数がかかる上、途中に困難も推測される。
和歌ではそれらの旅の苦しさを言わずに、日数だけに焦点を当てている。
「秋風ぞ吹く」で季節の変化をさわやかに表現をした。
能因は様々な旅を重ねたため、漂泊の詩人らしい歌という評もある。
ただし、実際にはこの旅は行われなかったという説もある。
能因法師の他の和歌
心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを
都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
武隈の松はこのたび跡もなし千年を経てや我は来つらむ
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能因法師の代表作和歌作品
能因法師について
西暦988年-1051年。平安時代中期の僧侶・歌人。俗名は橘永愷。法名は初め融因。近江守・橘忠望の子で、兄の肥後守・橘元愷の猶子となった。中古三十六歌仙の一人。
『後拾遺和歌集』に31首、勅撰和歌集に67首が入集している。