雪の夜の紅茶の色を愛しけり 作者日野草城の教材に使われる俳句の意味の解説、切れ字と表現技法の工夫について記します。
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雪の夜の紅茶の色を愛しけり
現代語での読みと発音:ゆきのよの こうちゃのいろを あいしけり
作者と出典:
日野草城 ひの そうじょう
現代語訳
雪の夜はことさらに美しい紅茶の色を愛するのであるよ0
句切れと切れ字
・切れ字…「けり」
・句切れなし
季語
季語は「雪」 冬の季語
形式
有季定型
その他表現技法
・隠喩
解説
明治生まれの歌人 日野草城の冬の雪の夜を詠んだ句。
この句の意味
句の意味は、雪の夜というシチュエーションに置いて、紅茶の色を美しく感じて愛してやまないというもの。
「雪の夜」は、他の夜とは分別されているが、寒い雪の夜だからこそ、とりわけ温かい紅茶が好まれるということだろう。
作者の感動のポイント
作者の感動のポイントと思いは、自分の好きなものから受ける感慨である。
紅茶の色は琥珀色をしているのだが、その深い色合いを美しいと感じている。
「雪」「夜」「紅茶」の3つの事物の特徴
句に詠まれているそれぞれの要素の属性はそれぞれのようになる。
雪の夜に紅茶がよいもので好まれる理由は、句の中では触れられていないが、雪の夜には「寒さ」紅茶には「あたたかさ」という要素があり、温かさであることが想像できる。
雪の夜は寒い→ 紅茶は温かい→ 紅茶の色が美しい
となるべきところだが、俳句のような詩文は、31文字と短いので、句の中では他を省略、凝縮している。
雪の夜にあるべき「寒さ」紅茶には「あたたかさ」という要素を言葉では示さず、詠み手の創造にゆだね、視覚的な要素である「色」に集約していくという構成になっている。
その「色」としたところから、さかのぼって、雪の色や夜の色も同時に浮かび上がってくる。
表現技法と工夫
構成のポイントは「の」の助詞である。
なぜ「色」の強調が表現できるのかというと、他の言葉、「雪」「夜」「紅茶」には、すべて「の」の助詞がついており、前へ前へと読み進むことになる。
「色を」のところで「を」となっているために、そこまでの「の」とは違うため自然に強調を受けているが、作者は「色」だけを愛していると述べているわけではないだろう。
紅茶のあたたかさはいうまでもなく、紅茶の味わい、そして「雪の夜」という他の季節や天候とは違う差別化は、作者がまた、雪の夜の静けさをも好んでいることを伺わせる。
私自身のこの俳句の感想
冬の夜の温かい飲みものは私も好きですが、「紅茶」を選んだところに作者の好みのセンスが感じられます。また、紅茶の味ではなくて「色」としたところも、この句をいっそう美しいものとしています。今度紅茶を飲むときは、味わうだけではなく色にも注目してみようと思います。
日野 草城について
日野 草城は、東京都出身の俳人。本名は克修。 「ホトトギス」で学んだ後、「旗艦」を創刊、女性のエロスを主題とした句や無季俳句を作り、昭和初期の新興俳句運動を主導。戦後は「青玄」を創刊・主宰し一転して静謐な句を作った。――出典:日野草城『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
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