全国学力テスト2024年の中学校の国語の問題に出題された短歌3首をご紹介します。
全国学力テストは4月18日に行われ、問題が新聞に掲載されました。
全国学力テストとは
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全国学力テストは文部科学省が行う調査が目的のテストです。
全国的に子供たちの学力状況を把握する目的で行われ、平成19年度から実施されています。
全国学力テストの短歌の問題
全国学力テストの中学校の国語の問題で、短歌に関する問題があり、下の歌3首が掲載されました。
まどかなる黄月(こうげつ)はいま昇りつつひとたび暮れし雪野を照らす
-作者:長澤一作
風さやか庭に月待つ萩すすき蜩の声やみし夕暮れ
-作者:外薗隆
朝光(あさかげ)のひろびろしきに昨(きぞ)の夜のつきかげありしあたりを掃きぬ
-作者:森岡貞香
問題の短歌を一首ずつ簡単に解説します。
まどかなる黄月(こうげつ)はいま昇りつつひとたび暮れし雪野を照らす
読み:まどかなる こうげつは いまのぼりつつ ひとたびくれし ゆきのをてらす
作者
長澤一作
現代語訳と意味
丸い黄色の月は今空をのぼりながら、一度は日暮れて暗くなった雪の野原を照らしている
問題の注記
問題は中学生が友達に紹介するための資料を作っています」との設定です。
問題文の「まどかなる」の部分には、脇に「<意味>まるい様子の」、「暮れし」の部分には「暮れた」との記載があります。
解説
作者長澤一作は、1926年生まれの、佐藤佐太郎に師事。『歩道』の創立に関わったアララギ系の歌人です。
代表作品は
日に光る氷を船に積みてをり人らは物を言ふこともなく
暮れはてし冬田の上になほ見えて今日の輝きを収めゆく富士
電車にて十分あまりまどろめばあはれ楽しき夢の断片
風さやか庭に月待つ萩すすき蜩の声やみし夕暮れ
読み:かぜさやか にわにつきまつ はぎすすき ひぐらしのこえ やみしゆうぐれ
作者
外薗隆 ほかぞのたかし
現代語訳と意味
風のさわやかな庭に月を待っている萩すすき 蜩の声が止んだ夕暮れ
問題の注記
問題文の「さやか」の部分には、脇に「<意味>清らかな様子」、「やみし」の部分には「やんだ」との記載があります。
解説
作者の外薗隆については調べても経歴等の掲載がありませんでした。
問題では「風待つ」の部分が擬人法かどうかを問うものでした。
朝光のひろびろしきに昨の夜のつきかげありしあたりを掃きぬ
作者
森岡貞香 もりおかさだか
現代語訳と意味
朝日の広々とさしているところには、昨夜の月光があったそのあたりを掃いた
問題の注記
問題文の「ひろびろしきに」の部分には、脇に「<意味>広々と(差)している(ところ)」、「昨の夜」の部分には「昨日の夜」、「月の光」の部分には「月の光」、「ありし」に「あった」、「掃きぬ」に「掃いた」のそれぞれ記載があります。
解説
朝光の読みは「あさかげ」で朝日のこと、対する「つきかげ」は、月光のことです。
一首は、朝日が射している情景に月光が回想されるという情景を詠んでいます。
作者森岡貞香は、特に短歌の時間に関して独特なとらえ方をすることが指摘されている歌人です。
明日にある集会むなしみわれはふと畳に起(た)てり座りゐしかど
くさむらに藍いろの実のころがりてをりぬ先刻は見なくに
(※原文いずれも旧漢字)
短歌の問題の内容
今回の全国学力テストの出題はこれらの短歌の修辞法を問う問題でした。
擬人法、直喩、倒置、体言止めが用いられているかどうか、それと、短歌の時間帯を把握できるかどうか、さらに、3首のテーマである「月と風景」を行書で記した際の楷書との違いが出題されました。
擬人法、直喩、倒置、体言止めなどについては、下の解説記事に