囀りをこぼさじと抱く大樹かな【擬人法の表現技法の解説】   

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囀りをこぼさじと抱く大樹かな【擬人法の表現技法の解説】 

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囀りをこぼさじと抱く大樹かな

作者星野立子の俳句作品の現代語訳と擬人法の表現技法の解説、鑑賞を記します。

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「囀りをこぼさじと抱く大樹かな」の解説

読み:さえずりを こぼさじと だくたいじゅかな

作者と出典

作者名:星野立子 ほしの たつこ

現代語訳

鳥のさえずりの音をこぼさないで抱こうとする大樹であるよ

句切れと表現技法

  • 句切れなし
  • 切れ字「かな」
  • 擬人法

切れ字

切れ字「かな」

季語

「囀り」 春の季語

形式

有季定型

「囀りをこぼさじと抱く大樹かな」の意味

「囀り」は元々繁殖期の小鳥の雄の美しい鳴き方を言う言葉で、木にまつわって聞こえてくることが多いものです。

大きな木となるとさらに周りにはたくさんの鳥がおり、その声が一羽一羽ではなく、一つの木として響いているかのように伝わってきます。

作者が表しているのはその情景ですが、作者の想像によって実景以上の完成された情景が伝わってきます。

擬人法の表現技法が大きなポイント

鳥が集まってくるのは木の意思ではありませんし、元々木は人ではないので、鳥を集めたい、鳥の声を聴きたいという意図は持ちません。

しかし、作者はあたかも木が意志を持つかのように、「こぼさじ」と「抱く」と2つの動詞を持って表しています。

この2つがこの俳句の擬人法であり、大きなポイントです。

この句の擬人法について見ていきましょう。

「こぼさじ」の文法解説

「こぼさじ」の基本形は「こぼす」。

この打消しには「こぼさず」と「こぼさじ」の2つがあり、前者の助動詞は「ず」。

後者の助動詞が「じ」です。

「じ」と「ず」の違い

この2つには違いがあり、「じ」打消推量・打消意志の助動詞です。

「ず」の意味は打消だけで、単に「・・・しない」という意味ですが、「じ」の方は、主語となる人、ここでは大樹が「・・・するまい」という意思を表します。

「じ」は打消意志の助動詞

最初の動詞「こぼさじ」によって、作者はこの木が意志を持っていると感じて、そう表現していることがわかります。

続く「抱く」の目的は「こぼさじ」にあることがわかります。

単に「抱く」のではなく、「こぼすまい」との意志を持つことが木が「抱く」行為に及んでいるというところに注目しましょう。

「抱く」と木の大きさ

「抱く」は主語が人の場合は、両手を広げてその中に囲うという態勢が想像できます。

主語は木であるので、人の腕に変わるものが木の枝に当たる部分です。

「大樹」であるというだけではなく、枝が1、2本の少ない数ではなく、枝がたくさんある木であることが伝わります。

また、「こぼさじ」と「抱く」によって、木が鳥たちとその囀りを大切に思っていることも感じ取れます。

作者の思い・言いたいこと

「抱く」を用いることによって、木が擬人化されるのはもちろんですが、この言葉にはそれ以上の作者の想像があります。

小鳥のさえずりは年中しているわけではありませんし、一日のうちでも短時間です。

つまり、木が枝を自ら広げて鳥たちを囲い込むような仕草をしながら立っているというのが作者の想像の部分です。

「抱く」は静的な動詞ではなく、動的な仕草であり動きです。

その木が意志の反映する動作をすることで、その結果、たくさんの鳥のさえずりと共にそこにあるというのが句によって完成された情景です。

物がただそこにあるというのではありません。作者の見方がこの句の情景を作り出しているのです。

俳句の主題

擬人法によって加えられるものは、木にはできないはずの主体性と意志、そしてその”動き”です。

さらに、鳥たちと木の関係性のもたらす自然の調和の美しさ。

それらが擬人法によってあまさず表現されているところがこの句の主題です。

星野立子について

作者のプロフィールと、他の作品をご紹介します。

星野立子のプロフィール

星野 立子(ほしの たつこ、1903年(明治36年)11月15日 - 1984年(昭和59年)3月3日[1])は、昭和期の俳人。高浜虚子の次女。虚子に師事し、初の女性主宰誌『玉藻』を創刊・主宰した。虚子一族で特に評価の高い人物。女性俳人では同時期に活躍した中村汀女・橋本多佳子・三橋鷹女とともに四Tと称された。星野立子の名を冠する俳句賞として、星野立子賞・星野立子新人賞が設けられている。

―出典:フリー百科事典Wikipedeia 星野立子」より

星野立子の代表作品

昃(ひかげ)れば春水の心あともどり
ままごとの飯もおさいも土筆かな
囀をこぼさじと抱く大樹かな
朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ
しんしんと寒さがたのし歩みゆく
美しき緑走れり夏料理

 

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桐一葉日当りながら落ちにけり 高浜虚子
秋つばめ包のひとつに赤ん坊 星野立子
ぬうぬうと秋かき混ぜる観覧車 藤本敏史
林道の朽ちし廃バス額の花 村上健志
囀りをこぼさじと抱く大樹かな 星野立子
菜の花がしあはせさうに黄色して 細身綾子
谺して山ホトトギスほしいまま 杉田久女
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たんぽぽや日はいつまでも大空に中村汀女

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