犬の短歌、戌年を迎えるにあたって、思い出して探してみました。
現代短歌より3首の犬の歌をご紹介します。
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犬の短歌
きみはむかしゆかいな兵士 一匹の老犬眠る合歓の木の下 小池光
獣骨をくはえて埋めに行く犬がわれに見られていたくはにかむ 齋藤史
小池光さんの歌の方は、亡くなった犬の歌。
「きみはむかしゆかいな兵士」というのは比喩なのだろう。墓碑銘に記してもいいような句だ。
それも「むかし」となり、犬は木の下に眠っている。作者は、その木の下を眺めているのかもしれない。
上句は犬に向かって言っている。下句は第三者的な記述となる。犬に向かって言う句は楽しくあたたかい。「きみ」」も「むかし」もひらがなである。
そういえば、相聞歌というのは、相手に向かって直接語り掛けるものだったと思い出す。そして、存外、動物に語る歌というのは少ない。
「一匹の老犬眠る」とは言い得ても、「きみは」と動物と同じ視点に立つことはあまりないように思う。そういう意味では、作者と犬の近さが伝わってくる。
居なくなった犬の歌が案外多い。
フランダースの犬
いま出
作者は春畑茜さん。
「フランダースの犬」に題材をとったもの。
日本人の情緒に訴える童話だが、海外ではそれほどでなく、いわば不評なのだそう。
齋藤史の犬の短歌
齋藤史さんの歌の方は、ちょっと驚く内容。
「獣骨」と「いたくはにかむ」のかわいらしさがミスマッチの気がするが、人間の視界の中で犬は野生を失うのだろうか。
そもそも犬は「はにかむ」ことはない。これは作者の見方だろう。そこはちょっとおもしろい。