平成万葉集

平成万葉集第3回「この国に生きる」短歌全作品NHKBS5月1日放送分

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5月からいよいよ令和の代を迎えました。その初日1日の夜、NHKBSプレミアムで放送の『平成万葉集』第3回の番組内で掲載された短歌全作品をご紹介します。

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『平成万葉集』とは


もうすぐ平成も終り。日本人は何に笑い、涙し、怒ってきたのか・・

かつて「万葉集」が天皇から防人まで多彩な歌を集め心の記録としたように、平成に生きた私たちの心模様を短歌から描く大型シリーズが始まります。

今日はその3回シリーズの3回目、テーマは「この国に生きる」です。

今回は章題が見当たらない部分もありましたので、適宜分類します。抜けがあったら申し訳ありません。

 

仕事関連の短歌

 

求人票の<年齢不問>に飛びつけば面接会場みな二十代 東京都 平井節子

 

長尾幹也さんの短歌

 

あと五年堪えんや心壊れんや砂漠の旅に似るわが勤め  長尾幹也

--(以下同じ作者様です)

「ちくしょう」とひとり言吐きてドキリとす上司静けくデスクにおりぬ

春になれば人事のうわさを告げに来るこいつのあだ名「桜前線」

会議中わっと叫んで灰皿を叩き壊しぬまぼろしの我

若きらよ一生(ひとよ)を嘗(な)めて掛かるなよとは言うなれど怖れは不要

 

吉岡里帆さんが選ぶ短歌

第2回『平成万葉集』より

 

太ってて暗いけれども本当のあなたは綺麗と言われ疲れた 愛知県 山川藍

募集中。昔々で始まって、めでたしめでたしで終わる人生 愛知県 龍翔

 

西村曜さんの短歌

生きていく 求人サイトの検索に「独りでできる」とまず打ち込んで 兵庫県 西村曜(あきら)

たいへんだ心の支えにした棒が心に深く突き刺さってる (同)

この街のエキストラだと自覚してすこし背すじを伸ばして歩く

大会が終われば無職だと聞いて水球選手に親しみが湧く

伸びきった輪ゴムみたいな青春だいっそぷちんと切れるのを待つ

跳び箱を跳んだつもりが跳び箱に座ってそのまま大人になって

 

萩原慎一郎さんの短歌

非正規の友よ負けるな僕はただ書類の整理ばかりしている 東京都 萩原慎一郎

箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる

消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ

自由な空よ自由ではないこの街でぼくはあなたを探しているよ

抑圧されたままでいるなよぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ

 

母と娘の時間

 

そんなにも孤独を怖れているのだと携帯電話(ケータイ)握り眠る子をみる 愛知県 橋本英幸

スキップの吾子の足音近づいて今日もいい日だったと分かる 新潟県 涌井悦子

 

花嶋八重子さんの短歌

採りたてのトマトのようにうつくしく湯あがりの吾子ぴかぴかひかる 千葉県 花嶋八重子

ひとり親・シングルマザー・母子家庭どう呼ばれても生きてゆくだけ

子のためと吾は働くのであるけれど熱のある子をおいてゆくのだ

何故に子の名に「愛」を選びしや結愛ちゃん心愛ちゃん確かに生きぬ

茶の間からあながた笑う声がしてママの体温二度ほどあがる

てのひらにあなたの足をつつみしを覚えてますか駆けてゆく子よ

 

花山多佳子さん、周子さんの短歌

いつまでも喋るむすめに背を向けて春の地蔵になりゆくわれか 千葉県 花山多佳子

蒲団より片手を出して苦しみを表現して居れば母に踏まれつ 千葉県 花山周子

熱心に語りはじめる兆しある娘のまへに眠らむとする  花山多佳子

学校へいじめられに行くおみな子の髪きっちりと編みやる今朝も

プリクラのシールになって落ちてゐる娘を見たり風吹く畳に

落ち込んだわれのため母は口笛を吹こうとしおり音は出でざり 花山周子

 

忘れられない歌

孤独とはひとりぼっちのことじゃないみんなの中に入れないこと 香川県 塩田晴加

戦争で死んだ友のため泣く祖父よわれの手首の傷に気付けよ  長野県 緒方悠子

たくましく母は呆けてくれました気弱な娘鍛えるために 三重県 森島雪

 

タクシードライバー高山邦男さんの短歌

わが仕事この酔ひし人を安全に送り届けて忘れられること 東京都 高山邦男

気が沈む時浮かび来る車中にて罵倒されたる記憶幾つか

トイレまでの道が分からぬわが母が深夜一人で戦ひし跡

ポンコツになつてしまった母だけど笑顔がぼくのこころを救ふ

丸き背のぼんやりとした母の顔ゆるキャラのようで可愛くもある

人生の夕日とはこんな感じかな我はまだ母に教はり生きる

新しい時代に母はをらねども母ありしことわれは忘れじ

 

鏡よ鏡、世界でいちばん美しい国はいづこぞ(鏡答へず) 千葉県 坂井修一

 

沖縄県の短歌教室

第二回『平成万葉集』より

 

ゆめのなか虫を100ぴきうかまえてせかいのむしをそだてたいなあ
沖縄県 金城翔大 小2

あおいううみすきとおっていてきれいだないろんなものがいっぱいいるよ
沖縄県 金城孝英 小3

幼等の光る言葉を研きつつ短歌詠み繋ぐ世代をつなぐ
沖縄県 金城藤子

だいすきなひいおばあちゃん100さいだずっとずっと元気でいてね
沖縄県 金城光泰 小2

短歌(うた)詠むと曾孫の男(お)の子幾たびも指折り数ふるしぐさ愛らし
沖縄県 百名恒子

いくさなき平成の御世有り難くいつの世までも平和なれかし 沖縄県 百名恒子

沖縄の空かき乱すオスプレイを狙う小指に輪ゴムをかけて 神奈川県 津波古勝子

沖縄の縄という字が気になりぬいつもなにかに縛られたれば 沖縄県 佐藤モニカ

 

上皇と上皇后の御歌

 

沖縄のいくさに失せし人の名をあまねく刻む碑は並み立てり  上皇

波なぎしこの平(たひ)らぎの礎(いしずえ)と君らしづもる若夏(うりずん)の島 上皇后

弥勒世よ願て揃りたる人たと戦場の後に松よ植ゑたん 上皇后

――「琉球短歌」沖縄の言葉で詠まれた歌

 

震災の短歌

 

戻りたい三月十一日がただ春のはじめの日だつた頃に 宮城県 逢坂みずき

車窓より見渡す限りにコスモスは津波襲いし街並隠す 宮城県 飯坂令子

ああこれが夢といふものどこまでも瓦礫の道を歩いて行きぬ 宮城県 梶原さい子

一時帰宅帰ればわが家の軒下に飼い犬は死せり繋がれしまま 福島県 吉田信雄

汚染物の貯蔵地となる運命(さだめ)もち泡立て草のなかなるわが家 (同)

二十年は帰れぬと言ふに百歳の母は家への荷をまとめおく (同)

ふるさとを逐はれて他郷に作りたる終の棲家に初日はそそぐ (同)

壁に掛くる家族写真も色褪せて家の日は還らず八年の過ぐ (同)

原発の安全神話に云いたての主婦ら誘いし電化教室 福島県 波汐國芳

汚染度の土の入れ替え庭に終えたれど入れ替え叶わぬ我が心ぞや (同)

今何を詠むかと問わば血も混ぜて身ちの闇を吐くと答えん (同)

夫誘いコーヒーを持参で行く散歩し知事のチャイムを砂浜で聞く 岩手県 清水恭子

あとがきのないまま終わる自分史のような夫の五十八年 (同)

職場から届いた遺品はバッグのみ何度も何度も川で洗った (同)

われもまた一本松のように立ち廃墟と化した街跡にいる (同)

前兆(まえぶれ)もなく訪れる寂しさを風に包んでふわあーっと飛ばす (同)

 

ボクサー歌人康哲虎さんの短歌

15年サンドバッグを叩きし手われは肩もみ上手な看護師 兵庫県 康哲虎

ボクサーが元ボクサーになりにけり網膜剥離を告げられたる日 (同)

康(かん)と康(こう)二つの呼び名で生きており未だ一秒電話に惑う (同)

本名でやってみろよと十代の我を引上げしボクシングの師 (同)

小六と小五の娘が言い放つ「アッパの短歌は工夫が足りない」 (同)

争いはしない言い負かされてもいい吠えないでくれわが喉仏 (同)

 

再び西村曜さんの短歌

わたしたちどこへも行ける踏み出した交差点から未来とおもう 西村曜

持ってません温めません付けません要りませんいえ泣いていません (同)

一瞬の その一瞬の、一陣の、風の背中を押して吹く風 (同)

 

エピローグ

あの時に止(と)められなかった大人たちと未来の人から言われたくない 三重県こやまはつみ

今日もまた変わはらぬ冴えない自分でも生きるとは日々新しきこと 東京都 高山邦男

平成の終わりに思ふ新しき世にはゆめゆめ災(わざわい)あらすな 福島県 吉田信雄

平成の次の時代もその先もここから海が見えますように 宮城県 逢坂みずき

やがて来る世にも輝け九十歳のわれの建てたる九条の看板 青森県 中村雅之

「明日から本気出すわ」のその明日がもうここにあるきみにわたしに 兵庫県 西村曜

いのちとは激動するもの吠えるもの喜ぶために生まれてきたの 茨城県 篠原まどか

身のうちにいつぽんの樹を育てつつ新しき時代も生きてゆくべし 北海道 時田則雄

 

以上、「平成万葉集 第3回テーマこの国で生きる」の皆様の作品でした。

すてきな作品をありがとうございました!

 





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