自由律の口語短歌「わたしのあばら骨の中で夫と子供が肉をつつき巣をつくる」  

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自由律の口語短歌「わたしのあばら骨の中で夫と子供が肉をつつき巣をつくる」

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自由律の口語短歌、「未来山脈」の歌が朝日新聞のコラム「うたをよむ」に取り上げられていました。

定型に縛られない、そして文語ではなく、今の話し言葉の口語で詠む短歌です。

朝日新聞記事からご紹介します。

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「未来山脈」の短歌

朝日新聞の9月15日のコラム「うたをよむ」に「いのちの自由律」と題する文章と、そこに掲載の短歌を興味深く拝見しました。

わたしのあばら骨の中で夫と子供が肉をつつき巣をつくる

――金子きみ作

もう一首

ねえねえ君はどこから来たの? フッとほほえむ赤子の寝顔へ

―――藤森歩美

コラムを書いているのは光本恵子さん。歌誌「未来山脈」の代表をされている歌人です。

この結社の短歌は「口語自由律短歌」というものです。

口語自由律短歌とは

短歌会の説明を読むと、

その時代の言葉で分り易く、すなわち、普段使い慣れた言葉(口語)で、二十六音から三十八音くらいに自在(自由律)に表現する

というのが、「口語短歌」の定義であるようです。

もうひとつ
「57577の定型から、はみだしてもいいのだ」というこれが、「自由律」です。

口語自由律短歌はいつから

この口語自由律短歌はいつからあるのかというと、

敗戦から四年目の昭和24年(1949)に戦前から口語自由律歌を読み続けた歌人に呼びかけ、口語自由律短歌の冊子、「新短歌」が創刊。
そして、そのあと、2002年の初頭、宮崎信義主宰の「新短歌」誌と光本恵子創刊「未来山脈」誌の合併をしていまに至っているということです。

光本恵子の作品

光本恵子さんの作品をもう少し紹介すると

掌よ 五本の指の自由さよ 何んにも持たずに死のうでないか

毛虫よ毛虫 その色彩で芙蓉と競え おなじいのちを生きているのだ

さんとして春がかがやき 白い手袋が方向を教える 朝の十字路

この様に人の心も熟れたいと 晴れた日の 朝の苺に云いました

不思議と魂をくいちぎられてもいきています そこは 美しい人間の街です

ああ人生を完走せよと 私の残るいのちに火をつけた 重放火犯ビキラ・アベべ

富士の山がじゃぶじゃぶ歩いて湖まで来た 大きく見える朝

相手の見えぬ敵にむかい苛立ち白うさぎもほろほろ

星に包まれた山に抱かれ宇宙の呼吸(いき)するひとつの命 湖の街 諏訪よ

一読してもっと読んでみたいなと思わされる作品の数々です。

自由律短歌の印象

作品を見る通り、短歌にあるとされる、57577の定型はありませんが、各作品が、自由ではありながら、それぞれ独自の整ったリズムをたたえています。

定型と自由律を両方やろうというのは、難しそうですが、定型や文語が難しいな、窮屈だなと思う方はお試しになってみるのもいいかもしれません。

詩文はけして定型だけではないのです。

短歌の他にも、4行詩というものが良く知られていますが、「自由律口語短歌」はあくまで短歌でありながら自由であって、しかし短歌それ以外のものではない小形式を保って、ひとつひとつが輝く詩となっているようです。

短歌は好きだけれども、古い言葉はどうも、という方にもお勧めしたい短詩型のひとつです。




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