しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで 平兼盛  

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しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで 平兼盛

2020年6月2日

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しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで  平兼盛の百人一首の恋の和歌。

誰にも知られない忍ぶ恋を表し、有名な恋歌として広く知られた和歌です。

この歌の現代語訳と句切れ、文法や語の意味を含めて、解説・鑑賞します。

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しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで

読み:しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで

作者と出典

平兼盛(たいらのかねもり)

百人一首 40  他「拾遺集」

現代語訳と意味

誰にも知られないように秘めていた恋なのに、顔に出てしまったようだ。恋に悩んでいるのかと人にきかれるまでに

語句と文法

  • 忍ぶ・・・人に知られまいと心に秘める。「忍ぶ恋」という言葉は心に秘めた恋を指す
  • 色・・・「色」は顔の表情のこと。「色にでにけり」の「けり」は「のだなあ…」の詠嘆を表す
  • 物や思ふと・・・「ものを思う」は恋に関する物思いのこと。「や」は疑問詞。この部分は「恋に悩んでいるのではないですか」と人が質問をするという意味。
  • 人・・・不特定多数の周囲の人。「まで」は程度を表す。そのようになるまでに、の意味




解説と鑑賞

平兼盛が歌合で「恋」の題で披露した歌です。技巧的で優れた歌とされています。

この後の41番の歌「恋すてふ―」と、その歌合の席で優劣を競いましたが、優劣つけがたく、判定をした選者が困り果てたと記されています。

工夫された語順

深く秘めていたはずの恋心が顔や態度に出てしまった。この部分が倒置法で、歌の最初に置かれて強調されています。

「物を思う」というのは、恋愛の物思いにふけること。今も昔も恋をする人に特有の行為なのでしょうね。

「伝聞」の形で表現する思いの強さ

恋の思いを直接読まずに、「自分がこれこれであるところを、(他の人が)そういう」という伝聞として表しています。

人に気が付かれるほど、相手に夢中になってしまった恋心の深さが、見事に表現されているのです。

2句切れで続く「我が恋は」を強調

「色に出にけり」といって、2句切れいったん切り、「何が」の問いが読み手に浮かんだどころで、三句に、「我が恋は」と明確に述べて印象がとても強くなります。

上句の主語は「わが恋は」ですが、それ以下の伝聞の部分はなだらかに詠み、最後の結句を「~まで」として、余情を残す終わり方も見事です。

歌合という、歌を競う会の作品にふさわしい、技巧に富んだ優れた一首です。

平兼盛について

平兼盛(たいら の かねもり)は、平安時代中期の貴族・歌人。三十六歌仙の一人。

平兼盛の他の和歌

わが宿の梅の立ち枝や見えつらむ思ひのほかに君が来ませる
み山出でて夜はにや来つる時鳥暁かけて声のきこゆる
荒れはてて月もとまらぬ我が宿に秋の木の葉を風ぞふきける
たよりあらばいかで都へつげやらむけふ白河の関はこえぬと

 

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