しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで 平兼盛の百人一首の恋の和歌。
誰にも知られない忍ぶ恋を表し、有名な恋歌として広く知られた和歌です。
この歌の現代語訳と句切れ、文法や語の意味を含めて、解説・鑑賞します。
スポンサーリンク
しのぶれど色に出でにけりわが恋は 物や思ふと人の問ふまで
読み:しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで
作者と出典
平兼盛(たいらのかねもり)
百人一首 40 他「拾遺集」
関連記事:
百人一首の有名な代表作和歌20首!
現代語訳と意味
誰にも知られないように秘めていた恋なのに、顔に出てしまったようだ。恋に悩んでいるのかと人にきかれるまでに
語句と文法
- 忍ぶ・・・人に知られまいと心に秘める。「忍ぶ恋」という言葉は心に秘めた恋を指す
- 色・・・「色」は顔の表情のこと。「色にでにけり」の「けり」は「のだなあ…」の詠嘆を表す
- 物や思ふと・・・「ものを思う」は恋に関する物思いのこと。「や」は疑問詞。この部分は「恋に悩んでいるのではないですか」と人が質問をするという意味。
- 人・・・不特定多数の周囲の人。「まで」は程度を表す。そのようになるまでに、の意味
解説と鑑賞
平兼盛が歌合で「恋」の題で披露した歌です。技巧的で優れた歌とされています。
この後の41番の歌「恋すてふ―」と、その歌合の席で優劣を競いましたが、優劣つけがたく、判定をした選者が困り果てたと記されています。
工夫された語順
深く秘めていたはずの恋心が顔や態度に出てしまった。この部分が倒置法で、歌の最初に置かれて強調されています。
「物を思う」というのは、恋愛の物思いにふけること。今も昔も恋をする人に特有の行為なのでしょうね。
「伝聞」の形で表現する思いの強さ
恋の思いを直接読まずに、「自分がこれこれであるところを、(他の人が)そういう」という伝聞として表しています。
人に気が付かれるほど、相手に夢中になってしまった恋心の深さが、見事に表現されているのです。
2句切れで続く「我が恋は」を強調
「色に出にけり」といって、2句切れいったん切り、「何が」の問いが読み手に浮かんだどころで、三句に、「我が恋は」と明確に述べて印象がとても強くなります。
上句の主語は「わが恋は」ですが、それ以下の伝聞の部分はなだらかに詠み、最後の結句を「~まで」として、余情を残す終わり方も見事です。
歌合という、歌を競う会の作品にふさわしい、技巧に富んだ優れた一首です。
平兼盛について
平兼盛(たいら の かねもり)は、平安時代中期の貴族・歌人。三十六歌仙の一人。
平兼盛の他の和歌
わが宿の梅の立ち枝や見えつらむ思ひのほかに君が来ませる
み山出でて夜はにや来つる時鳥暁かけて声のきこゆる
荒れはてて月もとまらぬ我が宿に秋の木の葉を風ぞふきける
たよりあらばいかで都へつげやらむけふ白河の関はこえぬと
百人一首の解説した短歌はこちらから
百人一首の歌一覧