人生に付箋をはさむやうに逢ひまた次に逢ふまでの草の葉
今日の日めくり短歌は、現代短歌から大口玲子さんの短歌をご紹介します。
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人生に付箋をはさむやうに逢ひまた次に逢ふまでの草の葉
作者は、大口玲子(おおぐちりょうこ)。第2歌集『東北(とうほく)』所収の短歌です。
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付箋の比喩
付箋に思い出すのは、先日図書館に本を返しに行ったときに、「付箋をはがすように」との注意書きがあったこと。
本のあちこちに付箋を貼った状態にしたままだと、図書館の管理の人は、後にそれを外さなければならないし、長い間貼ったままにしておくと、本の紙を破損することもあります。
図書館の本は、皆の共有ですので、自分の本以上に、大切に扱わなくてはなりませんね。
上の歌を読んで、付箋というのは、どういう時に貼るのかを、ふと改めて考えてみると、勉強だと要所に貼ったり、詩歌の本だとよいと思った作品の上に貼ったりします。
しかし、それらは、皆基本的に「またあとで読む」という前提だということに、上の歌で気が付かされました。付箋を貼るということは、どのような目的であれ「後でもう一度読もう」というために貼られるのですね。
「また次に逢ふまでの」というのがその部分です。
一つの行為から次の行為までには、間があるわけですが、付箋を貼ったところよりも、その「間」にスポットが当てられます。
紙の付箋とみずみずしい葉
そして、「草の葉」。
草も葉も同じようなものなのですが、「草葉」という言葉もあります。
付箋に似たような形状のものは、草よりもやはり「葉」の方でしょう。
「草の葉」となるといっそうみずみずしい。
葉には写真などに付ける「一葉」という数え方があります。
薄いものを数える時の言葉ですが、そう言えば「葉書」というのも、もしかしたら大昔は葉っぱに手紙を書いていたのでしょうか。
一首は、人と人との逢いと、再会を期待する心境そのものを、比喩を使って繊細に美しく表現されています。
紙の付箋が時充ちて自ら萌え出る草の葉に代わった頃に、再び人に会えるでしょうか。
コロナの影響で、人と人との隔たりが寂しく思われるときにこそ、読み返したい歌です。逢いの間の時間を豊かに過ごせるような気がしますね。
今日の「日めくり短歌」は大口玲子さんの現代短歌からお伝えしました。
それではまた明日!