寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ 寂蓮法師  

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寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ 寂蓮法師

2020年7月3日

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寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ

寂蓮法師 (じゃくれんほうし)の代表作、また新古今集の「三夕の歌」の一つとして知られる、有名な短歌の現代語訳、品詞分解と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ

読み: さびしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆうぐれ

作者と出典

寂蓮法師 (じゃくれんほうし)

新古今和歌集 361  「寂連法師集」

現代語訳と意味

この寂しさは特に秋めいた色も含めて、どこからというわけでもないことだ。真木の生い立つ山の秋の夕暮れよ。

修辞法と句切れ

3句切れ

体言止め

語句と文法

・「その色」…秋の景色の色合い。特に紅葉の「秋らしい色合いでなくても」の意味。
他に、仏教の「色」(しき)、物事の意の意味などの含みもある

・真木…スギやヒノキを指す 常緑樹で一年変わらない色み

「としもなかりけり」の品詞分解

格助詞
強意の副詞
係助詞
なかり ク活用の形容詞「なし」の連用形
けり 詠嘆の助動詞「けり」の終止形
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古今和歌集と新古今和歌集の代表作品 仮名序・六歌仙・幽玄解説




解説と鑑賞

寂連法師の代表的な和歌の一つ、「三夕(さんせき)の歌」の一つとしても知られています。

三夕の歌

三夕の歌とは「秋の夕暮れ」で終わる、3つの和歌作品で、寂連を含めた3つの歌があります

三夕の歌

寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ(寂連法師)

心なき身にもあはれは知られけりしぎたつ沢の秋の夕暮れ(西行法師)

見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ(藤原定家)

他の三夕の歌の解説は

 

「その色としもなかりけり」がポイント

この歌の理解のポイントは、「寂しさ」を思い起こすような景色がどのようなものだったのか、また「色としもなかりけり」の部分の理解にかかっています。

「その色としもなかりけり」は、「紅葉などの特に秋めいた色によっておこるわけではない」として「さびしさ」の自発性を強調するものです。

紅葉の色のない地味な色合いの風景にこそ、秋の本当の寂しさが伝わるとして、工夫された作品でもあります。

「真木たつ」は常緑樹の色を示す

「真木たつ」の真木は、杉や檜のような木で、良材になる木の美称とされています。

参考:山里の峰のあま雲とだえして夕べすぎしき真木の下露 太上天皇

杉や檜のうっそうと茂る山の景色ですが、常緑樹であるため、一年を通して変わらない緑色です。

秋の寂しさの本質

秋の特色である紅葉ではなく「山の秋の夕暮れ」そのものをあげ、そのように秋の山の風情を、「色としもなかりけり―さびしさが特に秋めいた色によるものではないが」と前置きをして、やはりその景色を見ると、寂しさが拭い難いと強調して伝える。

つまり、理としてはわかっていても、情の面、おのずから湧いてくる寂しさの方が強いというのです。

寂連の歌の内容は、秋の寂しさの本質を詠むものなのです。。

寂連の夕暮れ止めの歌

寂連法師には、他に百人一首にも、夕暮れ止めの歌

村雨の露もまだひぬ槇の葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮れ

があります。

寂蓮法師について

寂蓮法師 生年未詳-1202年

俗名、藤原定長。伯父の俊成の養子となり、のち出家。 新古今集撰者の一人となったが、撰進前に没した。

歌集に「寂蓮法師集」がある。

新古今和歌集とは

新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)は、鎌倉時代初期に編纂された勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)。

天皇や上皇の命令により編集された、代表的な和歌集の一つ。


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