約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな 岡井隆【日めくり短歌】  

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約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな 岡井隆【日めくり短歌】

2020年7月13日

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10日に訃報が伝えらえた歌人の岡井隆さんの短歌代表作品の中から、第一歌集の『斉唱』から、初期の相聞歌「 約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな」をお伝えします。

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 約しある二人のときねて知りててんの粉雪降らしむるかな


作者は岡井隆さん。第一歌集『斉唱』より。

意味は、恋人と会う、その時に合わせたように雪が降ってくる。

それを「天」を擬人化して、「その刻を知っていて、雪を降らせてくれたのだなあ」と詠嘆します。

気象の変化をもただの偶然とはとらえずに、自分たちだけではなく、もっと大きな事象、大いなる第三者がそれを祝福してくれているとして、その多幸感と万能感を表しています。

映画のワンシーンのような、映像的にも美しい一首です。

日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌

岡井隆の初期の相聞歌

岡井隆さんの初期歌集『斉唱』は、みずみずしい相聞歌が特徴です。

以下に、いくつか挙げてみましょう。

灰黄(かいこう)の枝をひろぐる林見ゆ亡びんとする愛恋ひとつ

あわあわと今わ湧いている感情をただ愛とのみ言い切るべしや

抱くとき髪にしめりの残りゐて美しかりし野の雨を言ふ

歩みつつ髪束ねいる指の動き見ているときの淡き恥(やさ)しさ

 

岡井隆について

岡井隆さんはアララギ出身で、その後、塚本邦雄と共に、前衛短歌運動を展開。

後に、宮中歌会始の選者としても活躍しました。

朝日新聞にあげられた代表作短歌は他に

父よ父よ世界が見えぬさ庭なる花くきやかに見ゆという午(ひる)を

キシオタオ……しそののちに来んもの思えば夏曙のerectric penis

今日の日めくり短歌は、ニュースで訃報が伝えられた岡井隆さんの短歌を紹介しました。

他の岡井隆さんの短歌代表作品については、この後の別記事で紹介しています。

岡井隆の短歌代表作品と九州出奔前後の歌

これまでの岡井隆関連記事:
斎藤茂吉「歌集『ともしび』とその背景」岡井隆著

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