7月14日はパリ祭の日。
きょうの日めくり短歌は、フランスを訪れた与謝野晶子の短歌、「ああ阜月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟」をお伝えします。
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ああ阜月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟
読み:ああさつき ふらんすののは ひのいろす きみもこくりこ われもこくりこ
※日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌
フランスを訪れた与謝野晶子と鉄幹
今日はパリ祭。フランス共和国の成立を祝う日です。
毎年、盛大なお祭りとなるはずなのですが、今年はコロナの影響で、やや規模は縮小されるようですね。
今日の短歌はパリ祭に思い出す、作者、与謝野晶子がフランスを訪れた際のよく知られた短歌です。
フランスは海外旅行のあこがれの地の一つですが、与謝野夫妻がフランスに行ったのは、明治44年のこと。
海外に行くということが今ほど一般的ではなかったことですので、感激もひとしお、冒頭に「ああ」とつくところもうなづけます。
「雛罌粟」はひなげしの花
そして、この歌の優れたところはなんといっても、「雛罌粟(こくりこ)」の音の繰り返しにあります。
「雛罌粟」というのは「ひなげし」、別名ポピーのことなのですが、フランス語が「coquelicot コクリコ」です。
そのひなげしが、フランスの野を埋めて咲いている風景に、与謝野晶子は出会ったのでしょう。
「なんとまあ、5月のフランスの野原は一面火が燃えているように赤い」という、鮮烈な印象をそのままに詠んでいます。
そして、そのあとに、今やまぎれもないフランスの地に立つ夫と自分をひなげしに重ね合わせているのですね。
与謝野晶子は、この時、与謝野鉄幹の後を追って渡仏、現地で合流したとのことなので、今よりも遠い海外旅行で無事に夫に会えた喜びもあったでしょう。
遠い昔の与謝野晶子の感激がそのまま伝わるような作品となっています。
与謝野晶子について
与謝野晶子(よさのあきこ)1878~1942年
近代歌壇を代表する歌人。大阪生、22歳で上京。大阪生。「明星」の主宰者与謝野鉄幹と結婚。『みだれ髪』を刊行。積極的な人間性賛美の声を艶麗大胆に歌い、「明星」の浪漫主義短歌の指標となる。源氏物語の現代語訳もある。
それではまた明日!