マラソンの日の短歌 岡野弘彦【日めくり短歌】  

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マラソンの日の短歌 岡野弘彦【日めくり短歌】

2020年9月12日

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9月12日は「マラソンの日」、ペルシア軍に勝ったアテネが、マラソンからアテネまで伝令を走らせたという出来事に基づきます。

きょうの日めくり短歌は、岡野弘彦のマラソンを走る場面を詠んだ短歌をご紹介します。

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読み:みはすでに おのかまいたち りょうりょうと かぜにさからう みみとがりくる

作者

岡野弘彦 第三歌集「海のまほろば」より

 

マラソンの日 9月12日

9月12日はマラソンの日とされています。由来は

紀元前450年この、アテネ軍はペルシア軍を撃退し、勝利知らせをアテネ町まで伝える伝令役を兵士が命じ、兵士は、マラソンからアテネ道のりをひたすらに駆け、勝利伝令を伝えたとされます。

 

一首の鑑賞

身はすでに雄(を)のかまいたち喨々と風にさからふ耳尖りくる

岡野弘彦のマラソンの短歌、あるいは他の長距離走かもわかりませんが、走る場面を詠んだ歌。

「かまいたち」はつむじ風に乗って人を切りつける妖怪の事。

「喨々(りょうりょう)」というのは、音の明るく澄んで鳴り響くさまを言います。

よく、走る人は”アドレナリンが出る”と表現しますが、疲労以上に、走ることへの快楽のようなものが生まれるといいます。

さっそうと荒野を走る作者の姿を浮かび上がらせます。

長髄彦の末裔

そして、走る間の身体の変化。

熱きものこぶらに脛(はぎ)にのぼりくる長髄彦(ながすねびこ)の裔(すえ)の肉(しし)むら

長髄彦(ながすねびこ)とは、日本神話に登場する人物。神武天皇に抵抗した大和の指導者の一人だそうで、名前からすると足が長く、走ることにもたけていたのかもしれません。

勇者の一人でもあり、作者は、その遠い人物と自分を重ね合わせています。

熱もてる足裏(あうら)するどく疼くなり長髄彦の裔の子われは

こちらは第4歌集「天の鶴群」より。

「走る」ということがが、作者にとって古代とつながる行為となっていることがわかります。

走る人の身と心

足裏に石踏みあてし疼きすらうつつなしすでに身は透きとほる

北風に皮肉ことごと削がれゆき白骨の馬。野をひた奔る

野のはてにのぼる月魄(つきしろ)うつし身は呆然として土を走れり

そして、走る人の心境が、詩的な比喩をもって表現されています。

この心は走行中の身と相関するものです。心は身を離れて単体のものではないことにも気が付きます。

作者60代に刊行された、第4歌集「天の鶴群(たづむら)」においても、作者が走り続けていたのがわかります。

 

人触るれば人を斬らむぞわがゆくて蒼あをとして深き朝靄

走る道みちでの発見、

道ややに村に下れりおのづからあへぎしづまる現し身あはれ

ただひと木はな咲き白むえごの木の下過ぐるとき心はなごむ

これらを見ると、マラソンと走ることの魅力に惹かれますが、鍛えていない人がいきなりこの境地には至れそうもありません。

涼しくなってきたこの頃、まずは少しずつでも走り始めたいものです。

 

きょうの日めくり短歌は、「マラソンの日」から岡野弘彦の短歌をご紹介しました。

それではまた明日!

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