古今集

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと 品詞分解と鑑賞文

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと 在原業平の古今和歌集の和歌、他に「伊勢物語」にも収録されている短歌の現代語訳と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

読み:なにしおはば いざこととはむ みやこどり わがおもふひとは ありやなしやと

作者と出典

在原業平(ありわらのなりひら) 古今集411 伊勢物語の9段『東下り』

在原業平については
在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴

現代語訳と意味

その名にふさわしいとすれば、さあきいてみよう。都鳥よ、私の思うあの方は無事でいるのかどうか

語と句切れ

一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です。

句切れ

二句切れ 三句切れ

修辞法

倒置

みやこ鳥

みやこ鳥は カモメ科のゆりかもめのこと

名にし負わば 品詞分解

・に…格助詞

・し…強調の表現

・負う…動詞
「名に負う」は「名としてもっている」。ここでは、「名前に適合する」の意味。

・ば…接続助詞
順接確定条件 「~ので」の意味

「みやこ鳥」は、その名前に「都」という字を含んでいるので、それだから、聞いてみよう、となる。

参考:万葉集一五・三六三八「これやこの名爾於布(なニオフ)鳴門の渦潮に玉藻刈るとふ海人少女ども」

いざ

・いざ…感嘆詞 相手を誘って一緒に事を始めるときや思いきって行動しようとするときに発する語。さあ。どれ。

こととはむ

・言(こと)とう…ものを言いかける。尋ねる。

・む…意志の助動詞

有りやなしやと

・あり…ラ行変格活用「あり」の終止形

意味は、「生きている」「無事である」

・や…疑問の終助詞

「ありやなしや」は漢詩に多く見られる表現

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解説

この歌には、「伊勢物語」の内容を伝える、詞書がついています。

「伊勢物語」のあらすじを示す詞書

武蔵の国と下総の国との中にある、隅田川のほとりに至りて、宮このいと恋しう覚えければ、しばし河のほとりに下りゐて、思ひやればかぎりなく遠くもきにけるかな、と思ひわびてながめをるに、渡守、「はや舟にのれ、日くれぬ」と言ひければ、舟に乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なくしもあらず、さる折に、白き鳥の、嘴と脚と赤き、川のほとりにあそびけり。京には見えぬ鳥なりければ、みな人見知らず、渡守に、「これは何鳥ぞ」と問ひければ、「これなむ都鳥」と言ひけるを聞きてよめる

詞書の大意

武蔵国と下総国の中にある隅田川まで来て、都を恋しくあたりを眺めていると、船の船頭が「早く船に乗らないと日がくれる」おいうので船に乗ったが、一行はわびしい気持ちになって、都に思う人がいないくもないことを思い出す。

その時に、都では見たことがない白い鳥が川べりにいるので、船頭に尋ねると「みやこ鳥」というのだという。そこで次のように歌を詠んだ

 

この詞書を見ると、歌の背景とそれが詠まれるようになった次第が詳しくわかるようになっています。

船でなくては自力では渡ることのできない、「川を渡る」という行為は、都との地理的な隔たりの上に、一種の愛惜を断ち切る比喩と言えます。

その時にふと「みやこ鳥」の「みやこ」ということばが偶然の呼応のように船頭の口から聞かれる。

内面の愛惜が、現実の事物である鳥と外の世界に開かれると同時に、この機知によって詠まれた歌は、都を離れは一行を大いに慰めたに違いありません。

在原業平の歌人解説

在原業平(ありわらのなりひら) 825年~880年

六歌仙・三十六歌仙。古今集に三十首選ばれたものを含め、勅撰入集に八十六首ある歌の名手。

「伊勢物語」の主人公のモデルと言われる。

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