陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 河原左大臣  

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陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 河原左大臣

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陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに

河原左大臣の有名な恋の和歌、新古今和歌集と伊勢物語、百人一首に採られた短歌の現代語訳と句切れ、修辞法の解説と鑑賞を記します。

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陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに

読み:みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに

作者と出典

作者:河原左大臣 (かわらのひだりのおほいまうちぎみ)

出典:百人一首 新古今和歌集、伊勢物語

現代語訳:

みちのくの 摺り衣のしのぶもぢずりの模様のように、あなたではない他の誰のために心が乱れはじめる私ではないのに

・・

語と句切れ・修辞法

一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です。

・陸奥…東北地方 福島・宮城・岩手・青森の4県

・もじずり…布地の染めの一種 「しのぶ」は染料として使われた「しのぶ草」のこと。漢字は「信夫摺り」

・「みだれそめにし」……「そめ」の基本形は「そむ」漢字は「初む」で「はじめる」の意味。

「し」は「き」の連体形で、次の「われ」につながる

・しのぶ……「偲ぶ」相手をひそかに思うという意味の動詞

句切れ

2句切れ

使われている修辞法

枕詞、序詞、縁語、掛詞の4つの修辞法がある。

枕詞

「みちのくの」は「しのぶ」にかかる枕詞

※枕詞については
枕詞とは 主要20の意味と和歌の用例

序詞(じょことば)

「みちのくのしのぶもぢずり」までは、「乱れ」を導く序詞

縁語

「しのぶもぢずり」は、「乱れ」「染め」の縁語

掛詞

「染め」「初め」はおなじ「そめ」の音

※掛詞の解説は
掛詞とは 和歌の表現技法の見つけ方を具体的用例をあげて解説

 

解説

古今集の他、伊勢物語、百人一首にも採られた有名な恋の和歌

4つの修辞法と、「誰ゆえに」「われならなくに」の一種韜晦的な表現が、いかにも恋の歌らしい言い回しとなっている。

陸奥のしのぶもじずり」は、東北の珍しく美しい染め模様である布地のことで、当時の人にはすぐにわかるものであって、視覚的な効果があったろう。

今ならば、「麻の素朴な」とか、「絹のように滑らかな」というような比喩になるのだろう。

それをおいて、模様の特殊な、よじれ、今でいうならツイストのような模様なのだろうが、それを自分の心のありようとして、目には見えない恋心を可視化できるものとして、その序詞を置いている。

会ったばかりの相手恋に落ちた

「みだれそめにし」の「そめ」は基本形「そむ」で、意味は始める。

「乱れはじめた」の意味になるので、相手とは、まだ会ったばかりなのだろう。

そうすると、今までは、誰に会ってもそのように恋に落ちたことはないのに、そうなってしまったのはあなたであるからだという帰結が「誰ゆえに」。

つまり一首は、会ったばかりの相手に、はじめて恋に落ちてしまった男性の述懐となる。

今までそんなことはなかったのに、そのようになる私ではなかったのに、というのが「われならなくに」の「わたしではないのに」の否定となる。

そして、そうなってしまったのは、それが「あなた」であるからだとして、「誰」「われ」として、いささか遠い第三者的な「しのぶもじずり」の恋心が、「われ」に帰結するものだというのを最後の結句似て表すのである。

「われならなくに」の結句の終わり方は動詞ではなく、余韻を残す終わり方である。

また「みだれそめにし」の「し」は「き」の連体形であり、「乱れはじめてしまった私」とつながる形容詞節。

従って、ここは4句切れではない。

句切れについては、「誰ゆえに」とつながりがなく、助詞のない「しのぶもじずり」の2句切れとという解釈を提案するものである。

河原左大臣 源融のプロフィール

源融(みなもとのとおる) 河原の左大臣は役職名 822年~895年

河原の左大臣は役職名

平安前期の公卿。嵯峨天皇の皇子。源の姓を賜り、臣籍に降下した。六条河原に邸宅を営み、河原左大臣とよばれた。宇治に営んだ別荘がのちの平等院。

河原左大臣の他の和歌

けふ桜しづくに我が身いざ濡れむ香ごめにさそふ風の来ぬまに(後撰56)
照る月をまさ木のつなによりかけてあかず別るる人をつながむ(後撰1081)
ぬしやたれ問へどしら玉いはなくにさらばなべてやあはれと思はむ(古今873)




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