古今・新古今集 百人一首

ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平

更新日:

ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは  在原業平朝臣の百人一首の名歌。

在原業平は、稀代の美男子であり、歌の名人と呼ばれて三十六歌仙にも選ばれた歌人です。

この歌の現代語訳と句切れ、文法や語の意味を含めて、解説・鑑賞します。

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ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは

読み:ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは

作者と出典

在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)

・百人一首 17
・「古今集」294

現代語訳と意味

不思議なことが多かった神代にも聞いたことがない。龍田川が、水を美しい紅色にくくり初めにするなんて

語句と文法

ちはやぶる・・・「神」の枕詞

神代・・・神々が収めていた時代のこと。不思議なことが度々起きたとされる

龍田川・・・現代の楢健の龍田神社の脇を流れる川。もみじの名所として知られる

からくれない・・・「から」は「唐」。中国や大陸の国々のものにつく言葉で、この時代には物の尊称や美称に使われた。ここでは美しい赤い色のことを指す。

水くくる・・・当時の染め物の「くくり染め」のこと。「まるでくくり染めのような」との意味

解説と鑑賞

在原業平朝臣の才気が光る歌。
水の上を真っ赤なもみじが流れる、華麗で耽美的な様子は、百人一首の藤原定家の好みにも合うものでした。

屏風に書かれた龍田川

古今集の詞書には、「屏風に書かれた龍田川の空の風景を見ながら詠んだ」との詞書があります。

それかどうか、絵画的な風景をとらえた一首となっています。

歌の情景は、唐紅に染まった、見事なもみじに水面が覆われた龍田川を、その川に浮かぶ赤いモミジの下を通って水が流れていく、この、流れていくことが動詞「くくる」であり、それが「くくり初め」との掛詞となっています。

「くくり初め」とは

くくり染めというのは、しぼり染めの一種であったようで、ここでは、紅葉が水面に美しい模様を作り出している、竜田川がそのような技を行っているということで、それが「神代にもない、いかにも不思議なことだ」というのが一種の意味です。

藤原定家は「くぐる」と解釈

ただし、藤原定家はこの「くくる」を水の下をくぐるの方の意味にとらえたということです。

もみじの下をさらに水が流れていくという、その重層性に魅力を感じたようです。

歌の詠まれたエピソード

在原業平はこの屏風絵を、二条の妃である、藤原高子の御所で詠んだといわれています。

この高子は、業平の以前の恋人であったと伝えられています。

この歌の優れた部分

屏風、または景色でもいいのですが、それを目にしたときに、見たものを平板に並べるのではなく、「ちはやぶる神代も聞かず」と逆説的に始めています。

つまり、そのようなものを見たことも聞いたこともない、不思議であるということを強調しているのです。

また、現在の他に「神代」という現代とは別の時点を歌に入れることで、歌の時間性に大きな深みが出ます。

上の句は「聞かず」でここで切れますが、その下の三句「龍田川」もこの一語のみで、さらにいったん切れる印象があります。この龍田川には、実際は主格の助詞「は」(または「の」)が省略されており、実際には切れ目ではありません。

しかし、ここに切れ目を入れて詠むことで、「ちはやぶる神代も聞かず」と「からくれなゐに水くくるとは」に挟まれて、一語だけあるかのように配置された「龍田川」の印象が強くなるわけです。

さらに、この龍田川は、「龍田川が(もみじを使って)川にくくり初めをしているとは」として、龍田川が主語となる、擬人法が用いられています。

人のする染めを川がしているというところが、ポイントであるわけです。

そして、「ちはやぶる神代も聞かず」というのは、風雅で流麗でありながら、神話的で壮大です。

在原業平の評

在原業平は、六歌仙、三十六歌仙のいずれにも選ばれており、歌の名人と呼ばれました。

この歌は成功していますが、当時の評としては、「歌はうまいが学はない」と評されたり、紀貫之も「心余りて詞足らず」と情熱的であるところと、それゆえの表現の不十分を指摘しているところもあります。

在原業平はどんな歌人

在原業平 (天長2年~元慶4年 / 825~880年)

平安前期の歌人。六歌仙,三十六歌仙の一人。

「伊勢物語」は業平をモデルとした歌物語といわれており、二条后との密通,それゆえの東下り,伊勢斎宮との密通など純愛一途に生きる色好みの理想像として、彼をめぐる多彩な伝説に彩られている。

歌の特徴としては、 『古今集』時代に先駆けて新しい和歌を生み出した優れた歌人のひとりで、大胆な発想による過度なまでの詠嘆に特徴がある。その新鮮な表現と抒情性は後代まで常に高く評価され続けた。--コトバンク他より

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