磯城島の日本の国に人二人 ありとし思はば何か嘆かむ
作者は不詳、万葉集でよく知られる相聞の短歌の一首、「人二人」はこの時代には独創的な表現の短歌、現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説します。
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磯城島の大和の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ
読み:しきしまの やまとのくに ひとふたり ありとしおもわば なにかなげかん
作者と出典
作者不詳 巻13・3249
現代語訳
しきしまのこの日本のくにに、いとしいあなたが、二人あると思ったならば、どうしてこんなに嘆くでしょうか。二人といないあなたなので、そのあなたに会えないからこそ、こんなに悲しんでいるのです。
語句と文法の解説
・しきしまの…大和にかかる枕詞。「大和」は日本のこと
※枕詞については
枕詞とは 主要20の意味と和歌の用例
・ありとし…「し」は強意の助詞
思はば の品詞分解
・思はば…意味は「思ったならば」
・「思ふ」の未然形+接続助詞「ば」
「ば」は 順接の仮定条件
句切れと修辞について
・句切れなし
「人二人」のあとに主格の格助詞が省略されている。
・反語表現
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解説と鑑賞
長歌のあとの反歌2首のうちの一首。
伝統的な枕詞の伝統的な言葉を用いながら、「人二人」の独自の表現や発想が見られる歌で、それによって細やかな感情を切々と歌い上げる相聞、恋愛の歌となっている。
「個」との対比淘汰の主題
大和の国という広い範囲をあげて、そこに「個」の対比を用いて、その上で「二人として並ぶもののいない」相手の希少性とかけがえのなさの心情を表しています。
一首の主題は、明示されないが、そのかけがえのない人だからこそ、逢うことがかなわない辛さを切々と訴えるところにあるといえます。
「人二人」について
「人二人」と類似の表現は、歌全体の類似の見られる485「人さはに」にも見られるが、このような二人の使い方は万葉集では、この歌のみ。
「ただひとり」として恋愛の相手を名指す表現については、
うちひさす宮道をひとは満ち行けど我が思ふ君はただひとりのみ(11・2382)
もあげられる。
万葉集解説のベストセラー
万葉集解説の本で、一番売れているのが、斎藤茂吉の「万葉秀歌」です。有名な歌、すぐれた歌の解説がコンパクトに記されています。