短歌・和歌

明かりと灯火の短歌 斎藤茂吉・石川啄木他 あかりの日【日めくり短歌】

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10月21日は「あかりの日」。

1879年(明治12年)のこの日、アメリカの発明家トーマス・エジソン(Thomas Edison、1847~1931年)が世界で初めて実用的な白熱電球を完成させたことから定められました。

きょうの日めくり短歌は、あかりにちなむ短歌を、斎藤茂吉と石川啄木他の近代短歌からご紹介します。

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電燈の光とどかぬ宵やみのひくき空より蛾はとびて来つ

作者:斎藤茂吉 「あらたま」大正6年

意味と現代語訳

電燈の光が届かない夜の闇の低い空から蛾が飛んで来た

解説

斎藤茂吉の秀歌の一つ。暗いところから、電燈をめがけて飛んできた蛾を捉えたもので、斎藤茂吉はこの歌について「大正6年作では記念すべき一首であった」と述べています。

詳しくは解説ページでご覧ください。

 

高はらのしづかに暮るるよひごとにともしびに来て縋(すが)る虫あり

作者:斎藤茂吉 「つゆじも」

意味と現代語訳

誰もいない高原の静かに暮れていく夜、私のともしている光に毎夜飛んでくる虫がいる

解説

人家の少ないところにある山の中の家に、作者の灯す光に飛んでくる虫を捉えた歌です。

「よひごとに」というのは、たとえば、人のように、毎夜通ってくる」というような、親しい気持ちが込められています。

そして、単に飛んでくるのではなくて、「縋る」という動詞が使われているのも、作者の見方と思い入れがあります。

「つゆじも」の短歌は
『つゆじも』斎藤茂吉短歌代表作品一覧と解説ページ目次

 

目のまへの電燈の球を見つめたり球ふるひつつ地震ゆりかへる

作者:斎藤茂吉 歌集「あらたま」より

解説

昔のあかりというのは、文字通り電球であって、それが、天井から下がっている物もありました。

地震になるとそれが揺れているのがわかるのは、部屋の中にあるものの影が一斉に揺れるためです。

この場合、作者は、余震がないかを案じて、電球を見つめていたのでしょう。

「ゆりかえる」は、地震が再び来ること、余震のことです。

「あらたま」斎藤茂吉短歌一覧 現代語訳付き解説と鑑賞

 

蝋燭を消せば心は氷(ひ)のごとく現身のする計らひをせず

読み ろうそくを けせばこころは ひのごとく うつそみのする はからいをせず

作者

斎藤茂吉 歌集『小園』

解説

こちらも有名な短歌。

冬寒い夜の空気の中に明りを消せば、自分自身も氷のようになって、自然と何も考えることをしないという意味です。

「現身のする計らひをせず」というのは、行為ではなくて考えもしなくなるということで、大変優れた表現です。

 

 

目のまへに並ぶつららにともし火のさす時心あらたしきごと

作者

斎藤茂吉 歌集『小園』

解説

終戦後、冬になってようやく気持ちが落ち着き、わずかな希望が生まれてきたときのことを詠んでいます。

つららにうつる光の美しさが印象的です。

一冬は今ぞ過ぎなむわが側の陶の火鉢に灰たまりたる/斎藤茂吉の冬の短歌 

 

いつも睨むラムプに飽きて三日ばかり蝋燭の火にしたしめるかな

作者

石川啄木 歌集『一握の砂』

現代語訳

いつもにらんでいるランプに飽きてしまって、ここ3日は蝋燭の火をともして快く眺めている

解説

当時はまだ電球というものがなく、夜の明かりはランプによるものでした。

その灯の下で執筆に励んでいた啄木ですが、書き疲れて気分を変えることを思いついたのであったのかもしれません。

 

火をしたふ虫のごとくにともしびの明るき家にかよひ慣れにき

作者

石川啄木 歌集『一握の砂』

現代語訳

日を慕う虫であるかのように、灯火の明るい芸者屋に通い慣れたのだった

解説

石川啄木は、北海道に赴任。釧路では取材のため芸妓のいる店に通います。

終生、貧困に悩んだ啄木も、このときは取材費が出たのであったでしょう。

上句の比喩がきいています。

石川啄木の生涯と文学 26歳の生を2冊の歌集に凝縮

 

雨に濡れし夜汽車の窓に映りたる山間の町のともしびの色

作者

石川啄木 歌集『一握の砂』

現代語訳

雨に濡れた夜汽車の窓から見えるのは、町を寂しく去る途中の谷間に遠くに見える家の灯りの色だ

解説

石川啄木が北海道を転居する際に詠んだ歌です。

さびしくも美しい抒情が漂います。

この短歌の解説
雨に濡れし夜汽車の窓に映りたる山間の町のともしびの色 石川啄木【日めくり短歌】

 

老夫と吾とが人を待つひまも二つの桃をてらすともしび

作者

津田治子

解説

アララギの歌人でハンセン氏病を病んだ津田治子の短歌。

療養所の生活の中のささやかな喜びを詠います。

「ひま」は「間」の意味。

津田治子の生涯と短歌「歌人・津田治子」〜米田 利昭

 

夜は深し燭(しょく)を続(つ)ぐとて起きし子のほのかに冷えし肌のかなしさ

作者

古泉千樫

解説

古泉千樫はアララギ派にいた女流歌人の原阿佐緒と深い仲になりますが、原阿佐緒は夜を過ごす際、一睡もしようとはしませんでした。

その間じゅう、行燈の灯りをともし続けようとして起きている、その冷たくなってしまった肌をいとおしむと詠んだもの。

関連記事:
古泉千樫の原阿佐緒との相聞歌

きょうの日めくり短歌は、「あかりの日」にちなむ、斎藤茂吉、石川啄木他の短歌をご紹介しました。

それではまた!

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