雪舟えまさんの歌集「たんぽるぽる」より【日めくり短歌】  

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雪舟えまさんの歌集「たんぽるぽる」より【日めくり短歌】

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雪舟えまさんは、現代歌人の中でも人気のあるお一人、歌集「たんぽるぽる」が当地の図書館にも置いてあります。

ウィキペディアによると、雪舟えまさんはきょう10月7日が誕生日。雪舟さんの短歌をご紹介します。

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変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く

作者:雪舟えま 歌集「たんぽるぽる」

雪舟えまさんについて

雪舟えまさんは、小説家で歌人。

ガーリッシュな歌が多いのですが、1974年、北海道のお生まれだそうです。

歌集「たんぽるぽる」の由来

「たんぽるぽる」は歌集のタイトルなのですが、もちろん造語で、結婚して性が変わったことを表した下の歌から採られました。

たんぽぽたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は

 

歌を詠む人に関わらず創作をする方の多くにある、ある種の生きづらさの違和感が作品を作るきっかけになっている事が多いようです。

最初の歌、「変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く」の「ギヤは軽く」というのは、自転車の操作と同時に、生き方の心構えでもあるのでしょう。

雨の中うさぎに雨を見せにゆくわたしをだれも見ないだろう

「うさぎ」といえば、雪舟えまさんのことを言う時によく語られるのが、雪舟さんが歌人の穂村弘さんの「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) 」の「まみ」のモデルであるということ。

「うさぎ」はこの歌集にも登場しますが、歌の歌では、「うさぎに雨を見せる」行為が、そのまま自身を世の中から隔てていることを意識する歌となっています。

 

結婚の決意

そして、その後の結婚によっての心境の変化も、この歌集には経時的に表されます。

雪の日も小窓を開けてこのひとと光をゆでる暮らしをします

ファンタジックな比喩が美しい歌。

相聞の歌

そして、結婚だけではなく、その以前の相聞、恋愛の歌が、女性らしい感性に満ちています。

わたしの自転車だけ倒れてるのに似てたあなたを抱き起こす海の底

傘にうつくしいかたつむりをつけてきみと地球の朝を歩めり

二首目の「地球の朝を歩めり」には、恋人と二人のときの万能感が出ています。

全身を濡れてきたひとハンカチで拭いた時間はわたしのものだ

きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと

「たんぽるぽる」を手に取る人は、これらの相聞歌をこそ読んでほしいです。

暮らしの中の断片

雪かきを誰がするかで殴りあう春には消える雪のことで

寄り弁をやさしく直す箸 きみは何でもできるのにここにいる

共に生活する上での、暮らしの中の断片も詠まれます。

一首目は、生活のトリヴィアなことで喧嘩をするシーンでしょうか。

結婚と心境の変化

よく笑う女になったけつあごのような苺をまたもみつけた

うれいなくたのしく生きよ娘たち熊銀行に鮭をあずけて

「けつあごのような」というのは、2つに割れたお尻のような形のいちごのこと。

二首目は、おそらく、生活の基盤のため銀行に行くということが、上のような愉快な比喩で詠まれています。

この歌集は私の知る限り、8刷を重ねているそうで、それだけ皆に好まれる高い歌集となっていると言えるでしょう。

想定もとてもすてきなものでおすすめの本です。

きょうの日めくり短歌は、雪舟えまさんの短歌をご紹介しました。

それではまた!

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