天声人語に父の短歌「世の娘半分は父を嫌ふとぞ猫を撫でつつ答へむとせず」  

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天声人語に父の短歌「世の娘半分は父を嫌ふとぞ猫を撫でつつ答へむとせず」

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父の短歌、父親の短歌、きょう父の日は、朝日新聞の「天声人語」に父の短歌が紹介されました。

父の立場から詠んだ歌を含め、父に関わる短歌の数々をご紹介します。

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父の短歌

きょうは父の日、朝日新聞の「天声人語」欄に紹介された父の短歌を鑑賞します。

 

世の娘半分は父を嫌ふとぞ猫を撫でつつ答へむとせず

作者:宮地伸一

アララギ系の歌人の歌。「天声人語」では「父娘の短歌を探してみたが、意外と少ない」として、この歌が筆頭に掲載されました。

「娘というのは父を嫌うものだ」と耳にした作者が、娘に聞いてみたところ、猫を撫でていて答えは言わなかった」という意味です。

果敢にも娘に聞いてみようという父の態度も愛情の一つでしょう。

転勤の娘(こ)の背に春の陽(ひ)は徹る良き友を得よ良き上司得よ

「天声人語」執筆者の父の短歌だそうです。

もちろん、娘本人は、父が上のような歌を詠んでいるとは知らず、父の想いも知らないままでした。

没後に目を通した歌集に見つけた歌だと言います。「ずしりと心に響いた」のも当然ですが、歌集の効用にも改めて気づかされました。

 

いつかさてかなしきものを父と呼び生きなむよ秋澄む夜々の思ひに

作者は馬場あき子。『阿古父』1993年作。

母を早く亡くして、父の手で育てられた作者も、介護を経て父と別れの時を経験します。

大切な愛しい人を失ってしまったが、愛しいものを「父」と呼びながら、自分は生きていこう、という悲しくも美しい歌です。

他に

父死にて風景遠く乾きゐる秋のもなかを帰りゆくなり

父といふ恋の重荷に似たるもの失ひて菊は咲くべくなりぬ

うろこ曇亡き人かずにゐる父に燃えて雁来紅もさやうなら

 

隣り間に噦して居るをとめごよ汝が父親はそれを聞き居る

作者は斎藤茂吉。

山荘に泊りに来た娘、隣の部屋にいる父に、娘の吃逆の音が聞こえる。それを案じているよという、肉親の情を伝えるほのぼのとかなしい歌です。

江戸時代の父の歌から

きのふまで吾が衣でにとりすがり父よ父よといひてしものを

作者:橘曙覧(たちばなのあけみ)

娘の成長に気が付いた父が、昨日までは「お父さんお父さんと自分の手にすがっていたのになあ」と悲嘆の情を詠います。

橘曙覧は、江戸時代の歌人ですが、今とも変わらない、親の心持ちを伝えてくれますね。

きょうの日めくり短歌は、父の日にちなみ、父を詠んだ歌と、父親の立場から読んだ短歌をお伝えしました。

それではまた!

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