石川啄木の短歌の特徴  

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石川啄木の短歌の特徴

2021年11月2日

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石川啄木の短歌の特徴を大きくまとめると3つあります。三行書き、口語体、生活詠と言われる日常的な主題です。

石川啄木の短歌の特徴について解説します。

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石川啄木の短歌の特徴

石川啄木の短歌の特徴は、3つあります。

三行書き、口語体、それと、回想の多い短歌及び、日常的な主題です。

  • 三行書き
  • 口語体
  • 生活派―回想と日常の主題

...

石川啄木の「三行書き」

それまでの短歌は、一行で字空けをせずに書かれるのが一般的でしたが、石川啄木は、自らの短歌を3行に分ける「三行書き」を採用しています。

この表記方法は、新しい短歌の書き方であり、啄木に特徴的なものです。

短歌の三行書きの例と改行の箇所

につたふ
なみだのごはず
一握いちあくの砂をしめしし人を忘れず

改行の箇所は、5字ー7字ー19文字となっています。

他の歌には、最初の行が、17文字になっているものもあります。

ひとさにあらしきたりてきづきたる
この砂山は
なにはかぞも

上の通り、改行の箇所はいつも決まっているわけではありませんで、歌の内容によって決められました。

なお、三行となったのは、『一握の砂』をまとめるときであって、それまで「明星」他に投稿されていた短歌は一行書きが採用されています。

句読点と、エクスクラメーションマークの採用

他にも「悲しき玩具」においては、句読点や、エクスクラメーションマークも使われました

例:

眠られぬ癖のかなしさよ!
すこしでも
眠気が差せば、うろたへて寝る

 

短歌へ口語体を使用

石川啄木の歌は、基本は文語体ですが、口語も多く使われました

今では口語の歌は現代短歌に多く見られる普通のことですが、この時代には三行書きと同じく画期的な語法の採用でありました。

例:

たんたらたらたんたらたらと
雨垂れが
痛むあたまにひびくかなしさ―『一握の砂』

古新聞!
おやここにおれの歌の事を誉めて書いてあり、
二三行なれど。―『悲しき玩具』

 

『一握の砂』は回想の短歌が主

石川啄木の第一歌集『一握の砂』のほとんどの短歌は、回想を詠ったものです。

啄木が自分の来し方を振り返り、まずは幼少年期を過ごした渋民村や、盛岡での出来事が回想されます。

それが、「我を愛する歌」の章です。

その次には、北海道、函館、札幌、小樽での回想の章があり、出会った人々への思い出と共に「忘れがたき人々」の章が編まれています。

 

生活詠-日常の生活に主題がある歌

石川啄木の短歌は「生活派」とも呼ばれる通り、生活歌、実際の生活の様子で思いついたものが詠まれています。

これについて啄木自身は

忙しい生活の間に心に浮んでは消えてゆく刹那々々の感じを愛惜する心が人間にある限り、歌といふものは滅びない。仮に現在の三十一文字が四十一文字になり、五十一文字になるにしても、とにかく歌といふものは滅びない。さうして我々はそれに依つて、その刹那々々の生命を愛惜する心を滿足させることができる。--「歌のいろいろ」石川啄木

と記しています。

他にも

「おれはいのちを愛するから歌を作る。おれ自身がなにより可愛いから歌を作る。「一利己主義者と友人との対話」

として、折々にふときざす気持ちの動きを尊重する歌を書き留めては歌にまとめています。

『一握の砂』に続く『悲しき玩具』においては、結核の病床詠で、身辺の事、体調のこともつぶさに歌に詠まれました。

「詩人は先(まづ)第一に『人」でなければならぬ(食ふべき詩)」も啄木の心情でありました。

「へなぶり」の歌

啄木は、その短歌の初めにおいては、決してまじめに歌を作ろうとしていたわけではありません。

「へなぶり」といったおふざけの歌も啄木の特徴と言えます。

自分が大切であり、自分の感情を重大事に考えていた啄木は、これらのへなぶった短歌の中に誇張ではない本音を交えていきました。

わが髭の/下向く癖がいきどほろし/このごろ憎き男に似たれば

一度でも/我に頭を下げさせし人みな死ねと/いのりてしこと

風景詠はない啄木の歌

石川啄木の歌には、一時住んだ北海道や故郷岩手県の歌はあっても、旅行詠や風景詠は見られません。

たとえば、観光地のようなところに行って、有名な夕景や事物を詠むというようなことは、啄木の歌にはなく、あくまで、身近な物と、多く自分の内面が啄木の短歌の題材でした。

貧乏であったことや、療養があったことももちろんその背景にはありますが、その辺りも他の歌人とは大きく違った点であると言えます。

啄木が27歳で亡くなることなく、もっと長生きしておれば、これらの歌も生まれたかもしれませんが、それだけに啄木短歌の特徴は、2冊の歌集の中に凝縮されているともいえるのです。




-石川啄木

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