ぬばたまの夜渡る月をとどめむに西の山辺に関もあらぬかも 作者読み人知らずの1077の万葉集の代表的な和歌を鑑賞、解説します。
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読み:ぬばたまの よわたるつきを とどめんに にしのやまべに せきもあらぬかも
作者
1077 万葉集7巻 雑歌
現代語訳
ぬばたまの夜空を渡る月をとどめるため、西の山辺に関所でもないものか
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句切れと修辞
- 句切れなし
語と文法
・ぬばたまの…枕詞で、「夜」を引き出す
・「関もあらぬかの」の関は、「せき止める」の意味の「塞く」の名詞形。
流れをせき止め、人の出入りを制限するものをさす。
「ぬかも」は、「でもあにものか」の意味
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解説と鑑賞
万葉集7巻 雑歌より「月を詠む」の一連にある詠み人知らずの歌。
「ぬばたまの夜渡る月」というのが、月が擬人化されたようで面白い表現となっている。
おそらくは、美しい満月であって、いつまでも眺めて痛いが、その月が次第に西に沈んでいってしまうので、惜しむ表現なのであろう。
月をとどめるための何かに「関」ということ場を用いているのが、いっそう人間に置き換えられた月の存在を伝えている。
この歌の一首前は
ももしきの大宮人の罷り出て遊ぶ今夜の月のさやけさ
と月の美しさが愛でられており、次の歌が
この月のここに来れば今とかも妹が出で立ち待ちつつあるらむ
とあるので、妹のため、妻と出会わんがため、月をとどめようとした背景も感じられる。
「ぬばたまの夜渡る月を」の類歌と本歌取り
なお、この歌のあと、1081には、この類歌である
ぬばたまの夜渡る月をおもしろみわがいる袖に露ぞ置きにける
がある。
その解説はこちら
他にも4072と3671に
ぬばたまの夜(よ)渡る月を幾夜(いくよ)経(ふ)と数(よ)みつつ妹(いも)は我(われ)待つらむそ
ぬばたまの夜(よ)渡る月にあらませば家なる妹(いも)に逢ひて来(こ)ましを
もある。合わせて味わいたい。