ぬばたまの夜渡る月をおもしろみわがいる袖に露ぞ置きにける 読み人知らずの1081の万葉集の代表的な和歌を鑑賞、解説します。
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ぬばたまの夜渡る月をおもしろみわがいる袖に露ぞ置きにける
読み:ぬばたまの よわたるつきを とどめむに にしのやまべに せきもあらぬかも
作者
1081 万葉集7巻 雑歌
現代語訳
夜空を渡る月が明るく楽しいので、寝ずにいる私の袖に露が置いてしまった
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句切れと修辞
- 句切れなし
- 係り結び
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語と文法
・ぬばたまの…枕詞で、「夜」を引き出す
・おもしろみ…基本形は「おもしろし」。意味は、おもしろいではなくて「目の前が明るくなるような感じ」を表す形容詞で、月についてよく使われる例がある。
「-しろみ」はミ語法。
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解説と鑑賞
万葉集7巻 雑歌より「月を詠む」の一連にある詠み人知らずの歌で、「ぬばたまの夜渡る月をとどめむに西の山辺に関もあらぬかも 」に続く二首目。
どちらも「ぬばたまの夜渡る月」というのが、月が擬人化されたようで面白い表現となっている。
「露が置」いたというのはもちろんデフォルメであろうが、月が明るいので、飽きずに眺めていたら、いつの間にか夜が更けてしまって、自分の袖に露が下りるまでになっていたという、月への傾斜を時間の経過を伴って表現している。
この歌の前には1077に
ぬばたまの夜渡る月をとどめむに西の山辺に関もあらぬかも
がある。
その歌の解説はこちら
ぬばたまの夜渡る月をおもしろみわがいる袖に露ぞ置きにける 万葉集
本歌取りというより、同じ句にそのまま続けることも万葉集では良く行われている。
以下の記事に解説蟻
万葉集の類歌と本歌取りについて 模倣にとどまらない集団と個別性
他にも4072と3671に
ぬばたまの夜(よ)渡る月を幾夜(いくよ)経(ふ)と数(よ)みつつ妹(いも)は我(われ)待つらむそ
ぬばたまの夜(よ)渡る月にあらませば家なる妹(いも)に逢ひて来(こ)ましを
もある。合わせて味わいたい。