万葉集の和歌の中からすぐれた秀歌として代表的な和歌作品とその解説を一覧にまとめます。
万葉集5千首の中から知っておきたい和歌と、各項目をお知らせします。
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「万葉集」の和歌について
万葉集は古代の歌集で、長歌・短歌合わせて、約5千首が収録されています。
秀歌と呼ばれる良い歌ももちろんたくさん含まれますが、それほど優れた歌ではない歌も含まれています。
優れた歌ばかりでない理由は、防人などの一般の人や、東歌という地方の特色を表した作品、民衆の間で歌謡として歌われていた歌なども収録されているため、いわば記録の意味合いもあったためでしょう。
※万葉集の元気が出る歌5首は以下の記事にまとめました
代表作20首だけを読みたいという時は 以下の記事をご覧ください
万葉集の歌一覧と解説
万葉集のよく知られた有名な歌、学校教材に取り上げられる歌を、以下に現代語訳付で一覧でご紹介します。
詳しい解説と鑑賞は個別ページでさらにご覧になれます。
目次
- 「万葉集」の和歌について
- 君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く
- あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
- 三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや
- 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
- 紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我れ恋ひめやも
- 風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ
- 道にあひて咲(え)まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹
- 秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも
- よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見つ
- 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
- 秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
- 春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山
- 二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ
- わが背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我が立ち濡れし
- うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟と我が見む
- あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに
- 磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ
- 八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ
- 大君は神にしませば天雲の雷の上に廬せるかも
- 東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
- あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
- 天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ
- もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも
- 松浦川七瀬の淀は淀むとも我は淀まず君をし待たむ
- 験なきものを思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし
- 我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都を見ずかなりなむ
- 我妹子が見し鞆之浦の室の木は常世にあれど見し人ぞなき
- 我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも
- 石麻呂に吾れもの申す夏痩せによしといふものぞ 鰻とり食せ
- うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば
- かきつはた衣に摺り付けますらをの着襲ひ狩りする月は来にけり
- ふりさけて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも
- 新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事
- 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも
- 春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出立つをとめ
- 見まく欲り思ひしなへにかづらかげかぐはし君を相見つるかも
- 磐代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまたかへり見む
- 家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
- 紫陽花の八重咲くごとく八つ代にいませ我が背子見つつ偲はむ
- 多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ悲しき
- 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を
- われもはや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり
- いづくにか船泊すらむ安礼の崎こぎ回み行きし棚無し小舟
- 古の人に我れあれや楽浪の古き都を見れば悲しき
- 恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば
- わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし
- 銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも
- 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ
- 我がやどの花橘にほととぎす今こそ鳴かめ友に逢へる時
- 春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり
- 防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず
- 父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる
- 韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして
- 我が妻も画にかきとらむ暇もが 旅行く我は見つつ偲はむ
- 信濃道は今の墾道刈株に足踏ましなむ沓はけわが背
- 新しき年の始めに思ふどちい群れて居れば嬉くもあるか
- 他の万葉集の作者未詳の歌
- 万葉集の和歌テーマ一覧
君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く
作者:額田王
現代語訳:
あなたを待って恋しく思っていたら、あなたと見まごうかのように私の家の簾を動かして秋風が吹くのです
ワンポイント解説
初期万葉の有名な女流歌人が額田王(ぬかたのおおきみ)です。
短歌の他に優れた長歌も残っています。
解説ページ:
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
読み:あかねさす むらさきのいき しめのいき のもりはみずや きみがそでふる
作者
額田王 ぬかたのおおきみ 万葉集 1-20
現代語訳
紫草の生えているこの野原をあちらに行きこちらに行きして、野の番人がみとがめるではありませんか。あなたがそんなに私に袖をお振りになるのを
ワンポイント解説
万葉集のもっとも有名な恋の問答歌です。大海人皇子が返歌を残しており、見事な一対となっています。
解説ページ:
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る 額田王の問答歌
三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや
読み: みわやまを しかもかくすか くもだにも こころあらさも かくさうべしや
作者と出典
万葉集 額田王 ぬかたのおおきみ 1-18
現代語訳と意味
三輪山を そんなにも隠してしまうのか せめて雲だけでも 思いやりがあってほしいのに 隠して良いものか
ワンポイント解説
万葉の巫女的な額田王の歌。山や雲に呼び掛ける雄大な趣です
解説ページ:
熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
読み:にきたつに ふなのりせんと つきまてば しおもかないぬ いまはこぎいでな
作者と出典
万葉集 額田王 ぬかたのおおきみ 1-8
現代語訳と意味
熟田津で船出をしようと月を待っていると 月も出て、潮も良い具合になった。さあ、今こそ漕ぎ出そう
ワンポイント解説
船での出立の祝いの歌です。
解説ページ:
熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな 額田王
※額田王の和歌一覧はこちらから
額田王の万葉集の和歌一覧まとめ 初期万葉の女流歌人
紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我れ恋ひめやも
作者:大海人皇子
現代語訳:
あの紫草のように匂いたつような美しいあなたを憎いと思うならば、人妻であるのに私がこんな風に袖を振るほど、恋い焦がれたりするものでしょうか
ワンポイント解説
上の額田王の問答歌の返歌です。結句の言葉によって、会話のような問いかけが生まれています
解説ページ:
【解説】紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我れ恋ひめやも
風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ
作者:鏡王女
現代語訳:
あなたを待って恋しく思っていたら、あなたと見まごうかのように私の家の簾を動かして秋風が吹くのです
ワンポイント解説
額田王の姉妹とも言われる鏡の王女の有名な相聞の歌です。
解説ページ:
【解説】風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ
道にあひて咲(え)まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹
作者: 聖武天皇
現代語訳:
あなたを待って恋しく思っていたら、あなたと見まごうかのように私の家の簾を動かして秋風が吹くのです
ワンポイント解説
聖武天皇の恋相聞で、天皇ながら素朴な恋愛の心情が詠まれています。
解説ページ:
道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹
秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも
作者: 聖武天皇
現代語訳:
秋の日の穂田を刈るのではないが、その雁が、暗いのに夜明け近くに鳴き渡っているよ
ワンポイント解説
聖武天皇の秋の野の風景詠です。
解説ページ:
聖武天皇
【解説】秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも
よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見つ
作者:天武天皇
現代語訳:
昔の良き人が、良いところだと、よく見て良いといった、この吉野をよく見よ。今の良き人、我が息子たちよ、よく見るがよい。
ワンポイント解説
天武天皇の言葉遊びを含む歌ですが、これをもって息子たちに強く呼びかけています。
解説ページ:
【解説】よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見つ
石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
作者: 志貴皇子
現代語訳:
岩をほとばりし流れる垂水のほとりのさわらびが、芽を出す春になったことだ
ワンポイント解説
志貴皇子の優れた春の歌。初句の「石走る」は枕詞です。
解説ページ:
【解説】石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
作者: 天智天皇
現代語訳:
秋の田の傍にある仮小屋の屋根を葺いた苫の目が粗いので、私の衣の袖は露に濡れてゆくばかりだ
ワンポイント解説
小屋に雨宿りをした折の歌でしょうか。素朴な風景が詠まれています。
解説ページ:
【解説】秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
春過ぎて夏きたるらし白妙の衣干したり天の香具山
作者:持統天皇
現代語訳:
春が過ぎて夏が到来したようだ 天の香具山に白い夏衣が干してあるのを見るとそれが実感できる
ワンポイント解説
持統天皇の有名な春の歌。この歌は、百人一首にもとられています。
解説ページ:
万葉集と百人一首に共通する和歌の違い「春過ぎて夏きたるらし」
二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ
作者:大伯皇女
現代語訳:
二人で行っても行き過ぎにくい秋山を、どのようにしてあの人は一人で越えているのだろうか
ワンポイント解説
大伯皇女の弟を詠んだ歌です。相聞ではないのですが、捕らえられる弟を思う悲痛な気持ちがあるのです。
解説ページ:
【解説】二人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ
わが背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我が立ち濡れし
作者:大伯皇女
現代語訳:
あの人を大和へ返し送ろうと夜が更けて、暁の露に私は経ち濡れてしまったことだ
ワンポイント解説
大伯皇女の弟の歌もう一首。いつまでも見送る作者の姿が描かれています。
解説ページ:
【解説】わが背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我が立ち濡れし 大伯皇女
うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟と我が見む
作者:大伯皇女
現代語訳:
一人この世に生き続ける私は、明日からは弟の眠るあの二上山を弟として見続けよう
ワンポイント解説
大伯皇女の弟を亡くした後の歌。このエピソードは万葉集の一つの悲劇として語り継がれています。
解説ページ:
あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに
作者:大津皇子
現代語訳:
山の雫にあなたが来るのを待っていて私は濡れてしまった その山のしずくに
ワンポイント解説
大津皇子の妻を詠んだ歌。この妻は、大津皇子の死後に亡くなります。
解説ページ:
【解説】あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに
磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ
者:柿本人麻呂
現代語訳:
しきしまのやまとの国は言葉の霊力が物事をよい方向へ動かしてくれる国です、どうか私が言葉で申し上げることによって、どうぞその通り、無事でいて下さい
ワンポイント解説
柿本人麻呂は万葉集の大歌人の一人。
この歌では、万葉の時代の「言霊思想」が表されています。
解説ページ:
八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ
者:柿本人麻呂
現代語訳:
八雲の湧く出雲の娘子の黒髪が、吉野の川の沖に揺らめいている
ワンポイント解説
川べりの娘たちを詠んだ歌です。
解説ページ:
大君は神にしませば天雲の雷の上に廬せるかも
作者:柿本人麻呂
現代語訳:
わが天皇は神でいらっしゃるので、天雲の雷の上に行宮(あんぐう)をおつくりになりたもうた
ワンポイント解説
人麻呂の才を表すファンタジックな歌。天皇の姿を寓話的に大きく描き出しています。
解説ページ:
東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
作者:柿本人麻呂
現代語訳:
東の野に陽炎の立つのが見えて振り返ってみると月は西に傾いてしまった
ワンポイント解説
人麻呂の代表作の一つ。一連の中のクライマックスです。
解説ページ:
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
作者:柿本人麻呂
現代語訳:
山鳥の長く垂れた尾のように長い長い夜を、寂しく一人寝をするのであろうか
ワンポイント解説
人麻呂の序詞を用いた歌。「ながいながい」夜であるということですね。
解説ページ:
【解説】あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ
作者と出典
柿本人麻呂 万葉集264
現代語訳
鄙からの長い道を通って家恋しくやってくると、明石海峡の向こうに大和の島々が見える
もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波の行く方知らずも
柿本人麻呂 万葉集264
ワンポイント解説
「もののふの」は、「八十」を引き出すための枕詞です。
解説ページ:
宇治川の網代木にたゆたっている 波の行方がわからないことだ
松浦川七瀬の淀は淀むとも我は淀まず君をし待たむ
作者:大伴旅人
現代語訳:
松浦川の七瀬の淀は淀もうとも、私はためらわずに、君を待ち続けます
ワンポイント解説
大伴旅人は元号令和の出典の「梅花の歌」序文を記した歌人です。
解説ページ:
験なきものを思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし
作者:大伴旅人
現代語訳:
何の甲斐もない物思いをするくらいなら、一杯の濁り酒を飲むべきであるらしい
ワンポイント解説
大伴旅人の酒の歌として有名です。哲学的な趣のある歌なのです。
解説ページ:
【解説】験なきものを思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし
我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都を見ずかなりなむ
作者:大伴旅人
現代語訳:
私の元気だった時代が、またもどってくることがあろうか。 ひょっとして奈良の都を見ずにおわるのではないだろうか
ワンポイント解説
身は子を離れたところに赴任した大伴旅人は、望郷の念を詠んだ歌を多く残しています。
解説ページ:
【解説】我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都を見ずかなりなむ
我妹子が見し鞆之浦の室の木は常世にあれど見し人ぞなき
作者:大伴旅人
現代語訳:
わが妻が見た鞆の浦のむろの木は今も変わらずにあるが、見た妻はもはや世にはいない
ワンポイント解説
作者は赴任先で亡くした妻を思い出す歌です。
解説ページ:
【解説】我妹子が見し鞆之浦の室の木は常世にあれど見し人ぞなき大伴旅人「妻の短歌」11首
我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも
作者:大伴旅人
現代語訳:
わが園に梅の花が散る。空から雪が流れてくるのだろうか
ワンポイント解説
万葉集の「梅花の歌32首」の中の大伴旅人の歌がこの歌です。
解説ページ:
石麻呂に吾れもの申す夏痩せによしといふものぞ 鰻とり食せ
作者:大伴家持
現代語訳:
石麻呂に私は申します。夏痩せに良いという、鰻を採ってお食べなさい
ワンポイント解説
万葉集の鰻の歌として有名な歌です。
解説ページ:
【解説】石麻呂に吾れもの申す夏痩せによしといふものぞ 鰻とり食せ
うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば
作者: 大伴家持
現代語訳:
うららかに照っている春日の中、ひばりが空に上がり、心は悲しい。一人もの思いをしていれば
ワンポイント解説
大伴家持の「春愁三首」の一首として有名な歌です。
解説ページ:
【解説】うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば
かきつはた衣に摺り付けますらをの着襲ひ狩りする月は来にけり
作者: 大伴家持
現代語訳:
かきつばたの花で、衣を摺り染めにして、朝廷にお仕えする立派な男たちが着飾って狩りをする月が来たことだ
ワンポイント解説
風俗から季節と月の到来を表します。
解説ページ:
【解説】かきつはた衣に摺り付けますらをの着襲ひ狩りする月は来にけり
ふりさけて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも
作者: 大伴家持
現代語訳:
振り返って三日月を見ると、一目見たあの方の眉が思われる
ワンポイント解説
三日月と思慕の情を重ね合わせています。
解説ページ:
ふりさけて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも/大伴家持
新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事
作者: 大伴家持
現代語訳:
新しい年の初めの初春の今日降る雪のように、積もれよ、良いことが
ワンポイント解説
大伴家持が、自ら万葉集の最後の歌として置いたのがこの歌です。
解説ページ:
【解説】新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事/大伴家持/万葉集解説
春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも
作者:大伴家持
現代語訳:
春の野に霞がたなびいてもの悲しい。この夕方の光の中で鶯が鳴くよ<
ワンポイント解説
大伴家持の万葉集の代表作品の一つです。
解説ページ:
【解説】春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも 大伴家持
春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出立つをとめ
作者: 大伴家持
現代語訳:
春の園が紅に輝いている桃の花の下まで輝く道にたたずむ乙女よ
ワンポイント解説
万葉集の桃の花の歌。花と乙女の取り合わせがほのぼのとしています。
解説ページ:
【解説】春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出立つをとめ 大伴家持『万葉集』
見まく欲り思ひしなへにかづらかげかぐはし君を相見つるかも
読み:みまくほり おもいしなえに かずらかけ かぐわしきみを あいみつるかも
作者と出典
大伴家持 『万葉集』 巻18-4120
歌の意味と現代語訳
逢いたいと思っていた折から かずら飾りの美しいあなたにお会いできました。
ワンポイント解説
かづらは髪に花などの飾りをつけることで、万葉の時代のメイクアップの一つでしたでしょう。
解説ページ:
【解説】見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも
磐代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまたかへり見む
作者: 有間皇子
現代語訳:
磐代の浜松の枝を引き結んで、幸い無事でいられたら、また立ち返って見よう
ワンポイント解説
有間皇子は政変でとらえられ、この後処刑されます。
万葉集の悲劇の一つです。
解説ページ:
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
作者:有間皇子
現代語訳:
家にいれば器に盛る飯を、旅の途中なので椎の葉に盛るのだ
ワンポイント解説
捕らえられた旅の途中の様子を詠んだ有間皇子の歌です。
解説ページ:
紫陽花の八重咲くごとく八つ代にいませ我が背子見つつ偲はむ
作者:橘諸兄
現代語訳:
紫陽花が八重に咲くように、あなたさまも八代も末永くお元気であられるようにこの花を見ながらお祈り申し上げます
ワンポイント解説
八重の紫陽花を詠んだ歌。
解説ページ:
【解説】紫陽花の八重咲くごとく八つ代にいませ我が背子見つつ偲はむ
多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ悲しき
作者:作者不詳
現代語訳:
多摩川にさらす手作り布の”さら”ではないが、さらさらにどうして子のこのことを、こんなにも甚だしく愛しく感じるのだろうか
ワンポイント解説
東歌の有名な歌。「さら」の音の重ねが印象的です。
解説ページ:
【解説】多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ悲しき
巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を
作者:坂門人足
現代語訳:
巨勢山のつらつら椿を、じっくりとつらつと見ながら偲ぼうよ、巨勢山の春を
ワンポイント解説
万葉集の椿の歌。
リズムの良い語感の歌となっています。
解説ページ:
【解説】巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を/万葉集の椿の短歌7首
われもはや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり
作者:藤原鎌足
現代語訳:
私は安見児(やすみこ)を得た 皆の者が得難いとしている安見児を得た
ワンポイント解説
有名な安見児の歌。思う人を手に入れた歓喜の歌です。
解説ページ:
【解説】われもはや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり
いづくにか船泊すらむ安礼の崎こぎ回み行きし棚無し小舟
作者:高市黒人 万葉集1巻・58
現代語訳
今、安礼の崎のところを漕ぎめぐっていった、あの舟棚の無い小さな船はいったいどこに泊まるのだろうか
ワンポイント解説
有名な安見児の歌。思う人を手に入れた歓喜の歌です。
解説ページ:
高市黒人は、万葉集の有名な歌人の一人で、旅の歌を多く詠みました。
【解説】いづくにか船泊すらむ安礼の崎こぎ回み行きし棚無し小舟
古の人に我れあれや楽浪の古き都を見れば悲しき
作者:高市黒人
現代語訳
私は古の人間だからだろうか。近江の古い都を見るとこんなにも悲しいというのは
解説ページ:
恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば
作者:大伴坂上郎女 おおとものさかのうたのいらつめ
現代語訳
恋い焦がれてようやくお会いしたときだけでも、せめて愛しい言葉のありったけを言い尽くして聞かせてください。
二人の間が長く続くようにとお思いになるのなら
ワンポイント解説
大伴坂上郎女の恋の歌。
万葉集の有名な女流歌人の一人です。
解説ページ:
【解説】恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば
わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし
作者:光明皇后
現代語訳
わが夫の君ともし二人で見るのでしたら、どんなにかいま降っているこの雪が喜ばしく思われることでしょうに
ワンポイント解説
留守中の夫を慕って詠んだうた。万葉集の雪の歌の中での有名です。
解説ページ:
【解説】わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし
銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも
作者:山上憶良
現代語訳
銀も金も玉も、いかに貴いものであろうとも、子どもという宝物に比べたら何のことがあろう
ワンポイント解説
山上憶良の代表作、子どもの大切さを、金銀にまさる「宝」と言い切って表します。
解説ページ:
【解説】銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも/山上憶良「子等を思ふ歌」
憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ
作者:山上憶良
現代語訳
私、憶良はもう退出しましょう。家では、今ごろ子供が泣いているでしょう。その子を負っている母もきっと私を待っているでしょうから
ワンポイント解説
こちらも、山上憶良の代表作の一首。
憶良は万葉集の代表歌人の一人で個性的な歌を残しました。
解説ページ:
【解説】銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも/山上憶良「子等を思ふ歌」
我がやどの花橘にほととぎす今こそ鳴かめ友に逢へる時
作者:大伴書持
現代語訳
我が家の橘の木にとまっているほととぎすよ、鳴いておくれ。友に会っている今この時に
ワンポイント解説
橘とホトトギスの取り合わせは、この後でも多くの歌人が詠んだものです。
解説ページ:
春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり
山部赤人 万葉集
現代語訳
春の野に菫を積みに来た私は、野に心惹かれ、ひと晩そこに泊ったのだなあ
ワンポイント解説
山部赤人は、万葉の大歌人の一人。中でも、この歌は抒情的な歌です。
解説ページ
春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり 山部赤人
防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず
作者:作者不詳 防人歌
現代語訳
「防人にいくのは 誰の旦那さんなの」と聞いている人がうらやましい。なんの憂いもないでしょうから
ワンポイント解説
東歌より、防人歌の最も有名な一首です。
解説ページ
【解説】防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず
父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる
作者:作者不詳 防人歌
現代語訳
父母が私の頭を撫でてと無事であれと言った言葉が忘れられない
ワンポイント解説
防人に出かけた若人が父母を思って詠んだ歌。
解説ページ
【解説】父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる/防人の歌
韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして
作者不詳 万葉集巻20-4401
現代語訳
衣服の裾に取りすがって泣く子供を置いてきてしまったことだ 母親もいないのに
ワンポイント解説
東歌より、防人歌。
妻の居ない子持ちの男性の哀れさが伝わります。
解説ページ
韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして 防人歌
我が妻も画にかきとらむ暇もが 旅行く我は見つつ偲はむ
作者と出典 万葉集巻20-4327 物部古麻呂(もののべのこまろ)
現代語訳
私の妻を絵に描き写す暇があればよいのに これから旅立つ私はそれを見ながら妻を偲ぼう
ワンポイント解説
東歌より、防人歌。
写真のない時代、似姿は絵によるしかありませんでした。
解説ページ
我が妻も画にかきとらむ暇もが 旅行く我は見つつ偲はむ 防人歌
信濃道は今の墾道刈株に足踏ましなむ沓はけわが背
作者:作者不詳 東歌
現代語訳
信濃路は今切り開いたばかりの道です。切り株で馬に足にけがをさせてはいけません。靴を履かせなさい、あなた
ワンポイント解説
はかせるべき靴とは夫に対してではなく、馬なのですが、それによって道中の無事を祈ります。
解説ページ
【解説】信濃道は今の墾道刈株に足踏ましなむ沓はけわが背 万葉集
新しき年の始めに思ふどちい群れて居れば嬉くもあるか
現代語での読み:あらたしき 年のはじめに おもうどち いむれておれば うれしくもあるか
作者
道祖王(ふなとのおおきみ) 19・4284
現代語訳
新年の初めに、気の合う者同士が集まっているのは、なんとうれしいことだろうか
ワンポイント解説
新年のお祝いの歌として有名です。
解説ページ
他の万葉集の作者未詳の歌
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万葉集の和歌テーマ一覧
万葉集の和歌をテーマ別にまとめます
万葉集の最初と最後の歌
■万葉集最初の歌
■万葉集の最後の歌
新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事/大伴家持/万葉集解説
万葉集の恋の歌
万葉集の恋の和歌30首(1)額田王,柿本人麻呂,大津皇子,石川郎女
万葉集の女性歌人の恋愛の和歌10首 大伴坂上郎女,笠郎女,狭野茅上娘子
東歌・防人歌
令和と梅花の歌
万葉集「梅花の歌32首」現代語訳と解説 大伴旅人序文「令和」の出典
万葉集の七夕歌
万葉集の花
万葉集の和歌に詠まれる花は1位ナデシコ 2位オミナエシ 3位ユリ
万葉集の四季の歌
万葉集の春の和歌10首 有名な代表作一覧 持統天皇,山部赤人,大伴家持他
万葉集の雪の短歌・和歌一覧 柿本人麻呂,大伴家持,大伴旅人,高市黒人他
歌人別
大伴旅人の『万葉集』短歌一覧 梅花/鞆の浦/讃酒歌/亡妻挽歌/望郷