小島ゆかりさんが大岡信賞を受賞されました。
小島ゆかりさんの短歌の代表作をご紹介します。
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小島ゆかり 大岡信賞
歌人の小島ゆかりさんが、第三回大岡信賞を受賞されました。
これまでにも2000年にも若山牧水賞、、釈迢空賞の受賞歴があります。
「砂いろの陽ざし」で第54回短歌研究賞受賞。
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小島ゆかり「砂いろの陽ざし」第54回短歌研究賞
小島ゆかり 短歌代表作品
小島ゆかりさんの代表作とされている歌で今回、朝日新聞の筆頭に掲載されたのは、下の歌
冷えわたる夜の澄みわたるかなたよりもうすぐ天の雪麻呂がくる
雪の気配とともに胸に降りてきた架空の存在を詠んだ―朝日新聞
第15歌集である『雪麻呂』のタイトルの言葉がとられた作品です。
あなとてもつかれてゐるわ ゐるわゐるわ 蝶が言ふなりわたしのこゑで
「眼前の蝶の声が聞こえた気がして、そのまま歌にした一首」。
旧字体のひらがなが含まれているのが、一首の効果を支えています。
そして、小島ゆかりさんの代表作として、もっともよく知られているのが下の歌
母がもう忘れたるわが誕生日 未生以前の秋のかぜふく
実母の介護を通して得られた歌。作者の説明では、この時のお母さんは90歳だそうです。
そこまでの介護体験は、長女出産と同時に、義父が入院、1年後に逝去、56歳で実父、その後母の介護と続きます。
父の介護の様子を含む歌に
転院しまた転院しわが父の居場所この世に無きがごとし
がありますが、あまりにも忙しい日々だったろうと思われます。
その中でも、この自らの
「初老の日々を大切にしないと、歌の底力みたいなものが得られない」
というのは考えさせられる言葉です。
今回受賞した大岡信賞、実際の大岡さんからは、
「秀歌を目指す求心力だけでダメ」で、「ユーモア」がないとのアドバイスも受けたそうです。
小島ゆかりさんは、介護の他にも家族、そして身近な風景を詠む歌人として知られています。
秋霊はひそと来てをり晨(あした)ひらく冷蔵庫の白き卵のかげに
時かけて林檎一個を剥きおはり生(き)のたましひのあらはとなれり
ぶだう食む夜の深宇宙ふたり子の四つぶのまなこ瞬きまたたく
掃除機をかけつつわれは背後なる冬青空へ吸はれんとせり
身の回りにあるアイテムが詩歌に昇華されていく様を体現する作品が並びます。
小島ゆかりさんの”生の感触を伝える”歌集『雪麻呂』をぜひお手に取ってお読みください。