カブトムシ地球を損なわずに歩く 宇多喜代子の教科書・教材にも使われる有名なカブトムシの俳句の意味、表現技法の解説を感想と合わせて記します。
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カブトムシ地球を損なわずに歩く
読み:かぶとむし ちきゅうをそこなわずにあるく
作者と出典:
宇多喜代子 うだきよこ 句集『記憶』2011年
現代語訳
カブトムシはその大きな体でも地球を傷つけずに歩く
切れ字と句切れ
・切れ字なし
季語
季語は「カブトムシ」 夏の季語
表現技法
句またがり 「地球を損なわ/ずに歩く」
形式
有季定型
解説
カブトムシを詠んだ句。作者のカブトムシへの賛嘆が人間との対比や地球環境の保護などと結びつけて評されることが多い俳句。
この俳句の意味
昆虫の中ではもっとも大きい体格の虫の一つがカブトムシで、足には棘状の突起がついて、木の幹にしがみつくこともでき、体は昆虫類の中でも最も重い方になる。
そのカブトムシが歩いても、地球の土は凹んだりしないし、周囲を傷つけたりもしない。
カブトムシはそうしてこの地球と地球上のすべてのものと調和を保ちながら生きている。
それがこの俳句の大意である。
カブトムシと地球のイメージ
句の中でカブトムシが歩いているのは、大地、すなわち土の上だが、作者は「地球」という言葉を使っている。
まるで、サンテグジュペリの『星の王子さま』の挿絵の構図のように、大きな球体の上にカブトムシがとまっているかのようなイメージだ。
カブトムシが地球の上にいるというのは、事実だが、実際にはありえないとりあわせであり、作者はあえてその構図を提示している。
それはこの句を読む人に、普段は意識していない地球というものを改めて意識させるためだろう。
カブトムシと人との対比
カブトムシを同じ地球の上に住む生物である人間と対比をしたときに、この句はもっと大きな意味を持つと考えられる。
今は生物で地球を支配しているのは人間なのだが、人の排出する二酸化炭素は南極の氷を溶かし、地球は温暖化、生態系も植物も変わっていく。
そのような公害は人間に影響を与えるだけでなく地球レベルに及んでいる。
対してカブトムシは地球を汚染することもなく、環境を大きく変えてしまうようなことはない。
カブトムシは、そしてカブトムシだけではなく生物は、本来自然と調和して生きるものなのだということをこの句は思い出させてくれるだろう。
生きているカブトムシは、実は、地球の一部でもある。
作者の思い
作者の思いは、カブトムシが自然に周囲との調和を保って生きていることへの賛嘆にある。
その背景には「地球を損なっている」のが人間だという思いがあるだろう。
私自身のこの俳句の感想
カブトムシが地球の上にいるという発想がユニークです。のっしのっしとゆっくりと歩くカブトムシの歩みはもとより、カブトムシが生きることで大きな地球に悪い影響を与えるようなことは何一つありません。考えてみれば、私たちも常に地球の上にいるのです。その事を忘れないでカブトムシのように自然に、そして、環境と調和しながら生きていきたいと思います。便利な物、自分にとって良いと思うものが逆に、環境に悪いこともあるのではないか、ふとそのように思いました。
宇多喜代子の他の俳句
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宇多喜代子について
宇多 喜代子(うだ きよこ、1935年(昭和10年)10月15日 - )は、日本の俳人。現代俳句協会特別顧問、日本芸術院会員、文化功労者。-出典:宇多喜代子 ウィキペディアフリー百科事典
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