教科書の短歌

君のため空白なりし手帳にも予定を入れぬ鉛筆書きで 俵万智 意味と表現技法・感想

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君のため空白なりし手帳にも予定を入れぬ鉛筆書きで 俵万智の教材にも取り上げられる有名な短歌代表作品の意味と情景、句切れなど文法技法を解説、感想と合わせて記します。

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君のため空白なりし手帳にも予定を入れぬ鉛筆書きで

読み:きみのため くうはくなりし てちょうにも よていをいれぬ えんぴつがきで

作者と出典

俵万智 『サラダ記念日』

現代語訳

君のために空白にしておいた手帳のスケジュール欄に予定を書き入れた。鉛筆で

作者と出典

俵万智 『サラダ記念日』

歌の意味

恋人と会うように空白のままにしておいた手帳のスケジュールの欄に、とうとう予定を書き入れてしまった。でもまだ、鉛筆書きでいつでも消せるように

以下に詳しく解説します。

句切れと表現技法

・4句切れ

・倒置

語句と品詞分解

・空白なりし…「空白なり」 名詞+断定の助動詞「なり」 「し」は過去の助動詞「き」の連体形。

・入れぬ…「ぬ」は過去、完了の助動詞

ワンポイント

過去の助動詞「き」は、 終止形が「き」だが、連体形は「し」、已然形が「しか」と活用する

 

解説

現代の歌人、俵万智の歌集『サラダ記念日』より恋愛の歌。

「君のため」の意味

初句の「君のため」には、短歌に用いられる技法のひとつの「省略」が含まれている。

「君の役に立つように」の「君のため」ではなくて、「君と会う可能性があるので、そのために」の意味である。

つまり、「空白なりし」の空白となっていた理由が短く述べられている。

「手帳にも」の「も」

続く「手帳にも」は「手帳に」ではなく、「にも」の「に」と「も」の助詞が二つ使われている。

この「も」は強意または、感動を表す「も」で、「あれもこれも」の「並置」を表すのものではない。

「鉛筆書きで」にポイント

作者は恋人またはボーイフレンドとはおそらく別れてしまったか、それ以上親しく慣れなかっのだろう。

そのため、もう会うという予定はなくなった。

そのあとでその人と会うために空けてあった手帳の空欄に、もういいだろうと新しい予定を書き込んだ。

ここまでは普通の出来事であるが、そう思いながらも、作者はそれをわざわざ「鉛筆書きで」記している。

つまり、今書いたことが後でいつでも消せるようにそうしており、あるいは、もしかしたらその相手と再び会おうという約束ができるかもしれない、と願う気持ちが残っている。

「鉛筆書きで」を理解することが、一首全体の理解のポイントとなる。

その際、「空白なりし」の「し」の意味を取ることも大切である。「空白だった」から、今は新しい予定を書いているので、「空白でない」新しい事態が生まれたわけだが、作者自らが作り出したその新しい事態は「鉛筆書きで」で否定されている。

一首の構成

一首の構成と場面は上の通り。

作者の思い

もうそれ以上は仲良くなれない、または別れてしまった相手である「君」、それを頭では理解しながらも、「あるいは、再び親しくなれるのではないか。できればなりたい」という作者の切ない恋の願望が表されている。

私自身のこの歌の感想

私自身は恋愛経験がないので、最初はこの短歌の意味を間違えてとっていました。つまり、「あまり気乗りのしない相手との約束のためにいつでも消せるように、鉛筆で書いている」と思ったのです。その場合は、初句の「君のため」が、自分は嫌だけれど相手が言うので、と押しつけがましく記しているのかと思いました。この短歌を再度よく読んでからは、そうではなくて、作者は君が好きで忘れらない、そのため、本当は君以外の予定を入れたくないのだということがわかりました。恋愛で相手と自分の気持ちが一致しないのはつらいものですね。

 

俵万智の他の短歌

『サラダ記念日』より他の類似の歌は

捨てるかもしれぬ写真を何枚も真面目に撮っている九十九里

生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る

ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう

いずれも別れを予感させる歌が並んでいます。

俵万智について

俵万智 たわらまち 1962年大阪府生まれ

佐佐木幸綱に師事「心の花」所属の日本の代表的な歌人の一人。

口語短歌によるライトヴァースの草分けとなる歌人。処女歌集『サラダ記念日』は日本の歌集の中でもベストセラーとなる。

近著に、歌集「未来のサイズ」、「牧水の恋」がある。

「牧水の恋」は、牧水の恋愛をめぐる経緯を記したものですが、従来の評伝より堅苦しくなく読めて、収録歌集が多く詳しいのでおすすめの本です。







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