もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の袖うちふりし心知りきや『源氏物語』  

広告 和歌

もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の袖うちふりし心知りきや『源氏物語』

※当サイトは広告を含む場合があります

もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の袖うちふりし心知りきや 紫式部『源氏物語』で光源氏の詠んだ有名な和歌の解説と鑑賞を記します。

『源氏物語』とは

スポンサーリンク




『源氏物語』(げんじものがたり)は、作者紫式部による平安時代中期、11世紀に成立した日本の長編物語で、世界最古の長編小説でもあります。

全54巻にもおよぶ紫式部の唯一の物語作品で、当時から読まれた人気の長編で、今は世界中で読まれています。

この歌の含まれる『源氏物語』について先にご紹介します。

主人公は光源氏

源氏物語の主人公は光源氏 ひかるげんじ。

容姿、才能など全てを兼ね備えた理想的な男性として描かれており、光源氏のたどる恋愛と成長、出世が源氏物語の大きな主題の一つとなっています。

源氏物語の内容とあらすじ

源氏物語の内容を要約すると、主人公の光源氏を通して描かれた平安時代の貴族社会の様子です。

大きな主題の一つが光源氏の恋愛遍歴ですが、他にも、貴族たちの栄光と没落、政治的欲望と権力闘争など、普遍的な主題が描かれています。

源氏物語の魅力

源氏物語の特徴は様々な指摘がありますが、おおむね下のようなところがあげられています。

  • 「もののあわれ」の情緒
  • 現実の貴族社会に迫るリアリティ
  • 恋愛・栄光と没落の貴族社会とその風俗など複数のテーマ
  • 次々登場する光源氏の相手の女性のキャラクター

全54巻にも書き継がれた物語を飽きずに読ませるのには、それだけ内容が充実しているといえます。

当時の貴族たちは自分の身に引き比べて、物語を読んだと思われます。

源氏物語の特徴

源氏物語の特徴は下のように挙げられます。

  • 「ひらがな」で書かれた
  • 女性の作者

源氏物語の特徴の一つは、まだ新しかったひらがなで書かれたということがあげられます。

当時は物を記すのは漢文が主体でした。

もう一つは、やはり紫式部という女性が作者であったということです。

作者紫式部について

紫式部は、本名は藤原香子(かおるこ/たかこ/こうし)とされています。

藤原為時の娘で、藤原道長の要請で宮中に上がり、一条天皇の中宮彰子に女房、つまり女官として仕えました。

身分の高い女性である上、大変な才女で、源氏物語の他にも『紫式部日記』、百人一首に採られた他に和歌が多く詠まれており、歌人としても活躍。

中古三十六歌仙および女房三十六歌仙の一人です。

紫式部の百人一首の歌

めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月かな

読み:めぐりあいて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よわのつきかな

現代語訳:

久しぶりにめぐり逢って見たのが確かであるかどうか、見分けがつかないうちにあなたは帰ってしまった。雲に隠れる月のように

百人一首,代表作,有名,和歌,短歌,歌人,現代語訳,句切れ
めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月かな 百人一首57番

めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月かな 百人一首に採られた紫式部の和歌の現代語訳と解説を記します。

続きを見る

『源氏物語』の和歌について

作者紫式部は歌人としても活躍した人『源氏物語』に散りばめられた和歌の数は約800首もあります。

以下の和歌は、その中の「紅葉賀」(もみじのが)の有名な作品です。

 

もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の袖うちふりし心知りきや 解説

現代語での読み:ものおもうに たちまうべくも あらぬみの そでうちふりし こころしりきや

作者

紫式部『源氏物語』 の光源氏の詠んだ歌

現代語訳

あなたを思うもの思いのゆえに、立って舞うこともできそうにない私が、袖振って舞った気持ちを察してくださいましたか

句切れ

句切れなし

解説

この歌は、光源氏がひそかに思いを寄せていた藤壺に贈ったものです。

この歌を詠む前日は、朱雀院の御紅葉の賀のリハーサルのため、光源氏が青海波を待ったのでした。

青海波というのは舞の演目のことです。

紅葉の散る中で、道ならぬ恋のために心を波立たせながら、男舞を舞いながら藤壺に届けとばかり袖を振る主人公。

絵画的で最も美しいシーンであるのです。

語の解説

「袖を振る」というのは、愛情を示す意味で使われた仕草であり言葉です。

「もの思ふに」の「もの思い」は恋に悩んでいるということ。

「立ち舞ふべくもあらぬ身」というのは、「その悩みのためにとても舞など舞えそうもない、私でありますのに」として、恋心とそのつらさを訴えています。

そして「袖うちふりし心知りきや」。

「や」というのは疑問視であり「あなたはわかってくださったでしょうか」と、歌を贈った相手である藤壺に問いかけています。

英訳

この歌の英訳は、ピーター・マクミランさんがタイトルをまず「The Blue Waves Dance」とした上で下のように翻訳しています。

Almost unable to rise to dance
because of thought of you,
in tye swaying of my sleeves
could you read the turbulent waves
pounding in my heart?
-  出典『星の林に』朝日新聞

 

後に藤壺は光源氏と結ばれるには結ばれるのですが、光源氏の子どもを産みながらも、光を拒絶、結婚することはありませんでした。

光源氏は後に藤壺の娘である女三宮(おんなさんのみや)と結婚しますが、その時に藤壺が送ったのが下の歌です。

結びつる心も深き元結ひに濃き紫の色し褪せずは(桐壺)

作者と出典

紫式部 源氏物語

和歌の意味

源氏の君の濃く深いお心が、心変わりしなければよいのですが

まとめ

この藤壺との恋愛は光源氏の最初の恋愛であり、そのクライマックスを彩るのが本日ご紹介した和歌になります。

気になる方はどうぞ『源氏物語』に触れてみてくださいね。

なお、ピーター.・マクミランさんの和歌の英訳は朝日新聞の日曜日のコラム『星の林に』で紹介されています。




-和歌
-

error: Content is protected !!