秋風にたなびく雲のたえ間よりもれいづる月の影のさやけさ
百人一首に採られた左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)、藤原顕輔、の有名な和歌、現代語訳と句切れなどの修辞法の解説と鑑賞を記します。
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秋風にたなびく雲のたえ間よりもれいづる月の影のさやけさ
作者:左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)
出典:百人一首 79 『新古今集』秋・413
現代語訳:
秋風によって空に細くたなびいている雲の切れ間から、地に差す月の光の清らかさよ
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語と句切れ・修辞法
- 句切れなし
- 体言止め
- 4句は8文字の字余り
解説
百人一首の79番目に入集している左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)、別名 藤原顕輔(ふじわら の あきすけ)の秋の月の光を詠う和歌。
空の雲の間から差す光は、万葉集にもある「天つ領巾(ひれ」「天女の羽衣」とも呼ばれたモチーフで、月の光が帯状に高い空から差す情景を言い表している。
晴れた月夜ではなく、雲が横に筋状に広がっているのがわかるのだが、それも月の光が指しているためで、「もれいづる」に光の細さがわかる。
雲が横にたなびいて間に隙間ができているのは、秋の風が雲を風の方向に長く伸ばしているのだが、初句に「秋風に」と置くことで、結句の「さやけさ」のイメージにつながるものとなっている。
「月の影」、「つきかげ」というのは、短歌では光と影の黒い影のことではなく、月の光のことであるが、そもそも光と影が一体となるこの言葉も含蓄が深いといえる。
初句の「秋風」は体感的な「さやけさ」であり、月の影は視覚的な「さやけさ」である。それらが一つとなって、秋の月夜の風情を言いつくした優れた叙景歌で、藤原顕輔の代表歌とされている。
藤原顕輔の他の和歌
葛城かづらきや高間の山のさくら花雲ゐのよそに見てや過ぎなむ(千載56)
散る花を惜しむばかりや世の中の人の心の変はらざるらむ(風雅242)
たれもみな花の都に散りはててひとり時雨しぐるる秋の山里(新古764)
いつのまに身を山がつになしはてて都を旅と思ふなるらむ(新古848)