道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹 聖武天皇  

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道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹 聖武天皇

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道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹

聖武天皇の万葉集の短歌の現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説、鑑賞します。

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道にあひて咲まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ吾妹

読み:みちにあいて えまししからに ふるゆきの けなばけぬがに こうといふわぎも

作者と出典

聖武天皇 万葉集 巻4・624

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秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも 聖武天皇

現代語訳

道でお会いしましたら、陛下はにっこり笑って下さいました。そこでわたしは雪のように消え入りたいほど恋しゅうございます

 

語句と文法の解説

語句と文法です

咲まししからに

・咲ましし…読みは「えみ」。意味は「微笑む」に同じ

・「ます」…天皇に対する敬語だが、ここは聖武天皇が自らに用いている

・「し」は過去の助動詞「き」の連用形

からに

・からに…(原因、理由を意味する助詞の「から」に格助詞の「に」が付いたもの)

活用語の連体形を受け、全体で接続助詞的に働く。  原因がきわめて軽いにもかかわらず結果の重いことを示す。

「… ばっかりで」「 それだけの原因で」

消なば消ぬがに

消ぬ…「ぬ」は完了の助動詞。

「がに…」接続助詞 「するほどに」 ここでは「今にも消えてしまいそうなほどに」の意味

恋ふといふ吾妹

「といふ」は伝聞

吾妹

妹は親しい女性のことで、「吾」は「わが」意味は私の愛しい人。

この歌を贈った酒人(さかひとの)女王(おおきみ)を指す。

句切れと修辞について

・句切れなし

・体言止め




 

解説と鑑賞

聖武天皇が「聖武天皇が酒人女王(さかひとのおおきみ)を思って作られた歌」とされる。

酒人女王の言葉を歌に

内容はほぼ伝聞を主体した歌で、「咲ましし」の「まし」は基本形「ます」で、これは天皇に使われる敬語であり、女王が話した言葉をそのまま取り入れていることがわかる。

聖武天皇は、これを本人から直接か、または、誰から伝え聞かれたのだろう。

これについて、元号「令和」の考案者である中西進先生は、それこそ「天皇風」と述べている。

相手のことばだけの歌。それで自分の気持ちを伝える歌。細かいことをあれこれ言わず、ゆったりとした大柄な歌――これこそ、天皇ふうな歌だとわたしは思います。―朝日新聞

 

「消なば消ぬがに」

一首の眼目「消なば消ぬがに」は。4句いっぱいを「消える」を反復して、女王の気持ちを表している。

道を通る天皇に、微笑みかけられた、ただそれだけなのに、身の置きどころもないような恋に高揚した気持ちを表している。

単に「消え入りそうな気持です」と言わずに「消なば消ぬがに」の反復は、そのどうしようもなく胸迫る心境を表すにぴったりの表現と言えるだろう。

また、「降る雪の」も相手の女性のイメージをほうふつとさせる美しい情景の表現である。

聖武天皇とは

聖武天皇 しょうむてんのう
701〜756 奈良時代の天皇(在位724〜749)
文武天皇第1皇子。母は藤原不比等の娘宮子。皇后は藤原不比等の娘光明子(光明皇后)。積極的に唐の文物制度を採用するなどして国政を充実させた。一方,仏教をあつく信仰し,国分寺・東大寺大仏を創建し,天平文化をつくりだした。
和歌は万葉集に11首、新古今集以下の勅撰集には8首入集している

聖武天皇の他の歌

秋の日の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも 聖武天皇




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