つくばねの峰より落つるみなの川こひぞつもりて淵となりぬる
百人一首13番の陽成院の和歌の現代語訳と一首の背景の解説を記します。
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つくばねの 峰より落つる みなの川 こひぞつもりて 淵となりぬる
読み:わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもいにまごう おきつしらなみ
作者と出典
陽成院 百人一首13番 後撰集恋3
現代語訳と意味
筑波山の峰から落ちる水が集まって、みなの川となるように、私の恋もまた、深い淵をなすようだ
・・・
語と句切れ・修辞法
一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です
句切れと修辞法
- 3句切れ
- 係り結び
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語句の意味
・筑波嶺…つくば山のこと
・落ちる…基本形「落つ」の連体形
・みなの川…「水無乃川」または「男女川」と書く。つくば山から流れ出るささやかな流れの川のこと
解説
陽成院は天皇で、勅撰歌集に収録されたのはこの歌のみ。
後撰集の詞書には
つりどののみこにつかはしける 陽成院御製
とある。
「釣り殿のみこ」とは孝謙天皇の第一皇女で、後の陽成院妃で、その女性に恋心を伝える歌となっています。
一首の内容は、最初はわずかなものが、積もり積もっていくというもので、時間経過を含むので、「貴方のことを慕い始めて、今ではこのように思いが募っている」という心情を伝えるものでしょう。
陽成天皇の悲劇
陽成院にはいくつかの説話が伝えられており、乱行のために天皇を退位したとなっていますが、藤原基経の策略とも言われます。
この歌の内容は恋の歌ですが、天皇としての在位が短く、一首の悲劇の人物として、その思いが子のような激しい歌の背景にあるという説があります。