菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村の有名な俳句、表現技法の解説を記します。詠まれた時刻、対句と音韻の工夫と効果についても記します。
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菜の花や月は東に日は西に
読み:なのはなや つきはひがしに ひはにしに
作者と出典:
与謝蕪村
現代語訳
菜の花が咲いている。その上の東の空には月が、西には日が沈んでいく
表現技法
・対句 「月は東に」「日は西に」
切れ字と句切れ
切れ字「や」
初句切れ
季語
季語は「菜の花」 春の季語
形式
有季定型
解説
菜の花を題材に詠まれた与謝蕪村の有名な俳句。
与謝蕪村は、江戸時代中期の歌人で萩原朔太郎が愛好したことでも知られている。
俳句の背景
1774年の春、与謝蕪村が六甲山地の摩耶山(まやさん)を訪れて、山の上から見下ろした風景を詠んだとされる。
「日は西へ」からわかるが、夕暮れの風景で、東には月が昇り始めているという雄大な風景が、菜の花を起点に静かに詠まれている。
俳句を詠んだ時刻
ダイナミックな風景でありながら、しみじみとした情緒が感じられるのは、「日は西に」でわかる通り、この風景の時間帯が、夕暮れであるところに理由があるだろう。
表現技法-対句と音韻
初句切れのあと、対句の構成の「月は東に日は西に」は、「…は…に」が反復され、弾むような調子を含む。
2句から結句は「ひがしに」「ひは」とハ行音の「ひ」が連続、さらに「ひがしに」「にしに」と「に」が連続することで、音韻によるリズムがさらに整えられている。
静と動の対比
静止する菜の花と、動きのある「月」と「日」の天体の動きを対比させることで、花の美しさ、天体の雄大さが相互に印象が強まる効果がある。
作者はこの中央に位置し、あたかもその天体をつかさどっているかのようだ。
「に」の助詞での終わり方は余韻を持たせる効果も持たせ、これらの風景に広がりを加えている。
私自身のこの俳句の感想
このような雄大な風景が俳句という短い詩文で表せることが驚きです。菜の花と月の取り合わせも美しく、そこにさらに日没の太陽も加わって、最高の瞬間をとらえる名句といえるでしょう。
与謝蕪村の他の俳句
春の海ひねもすのたりのたりかな
斧入れて香に驚くや冬木立
夏河を越すうれしさよ手に草履
四五人に月落ちかかる踊りかな
山暮れて紅葉の朱(あけ)を奪いけり
しら梅に明くる夜ばかりになりにけり(辞世)
与謝蕪村について
与謝蕪村 よさぶそん 1716年-1784年
江戸時代中期の日本の俳人。幼時から絵画に長じ、文人画で大成する傍ら、俳諧を学び、感性的・ロアマン的誹風を生み出し、松尾芭蕉と併称される。日本古典の代表的歌人。