去年よりお伝えしていた話題、憲法9条を題材に詠んだ投稿の俳句を、さいたま市が公民館だよりに掲載しなかったのは違法とする判決が昨年12月に確定したことを受け、市は2月1日発行の公民館だよりに、その作品が掲載されることが決まったというニュースです。
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9条題材の俳句、掲載までの出来事
女性が詠んだ俳句とは、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」というものです。
俳句会で秀句に
この俳句は、2014年6月に女性が参加する俳句会で秀句に選ばれました。この俳句会で選ばれた俳句はこれまでは翌月号の公民館だよりに載せられるということになっていました。
公民館側が俳句の掲載を拒否
しかし、この俳句に関しては、そうはなりませんでした。
公民館側は掲載を拒否。作者は、サークルの人から「公民館が載せられないと言っている」との連絡を受けたと言います。
公民館側は「『九条守れ』というフレーズは、公民館の考えであると誤解を招く可能性がある」「公平中立であるべきとの観点から、掲載は好ましくないと判断した」と掲載を拒否した理由を述べました。
作者は、この作品の掲載を求める裁判を起こすこととしました。
俳句の掲載をめぐって最高裁へ
昨年10月、さいたま地裁は公民館側が「思想や信条を理由として不公正な扱いをした」として、市に5万円の賠償を命じる判決を下しました。
しかし、一方で、表現の自由が侵害されたとの作者の主張は「特定の表現手段を制限されたにすぎない」と退け、俳句の掲載請求も認めませんでした。
そのため女性もさいたま市も双方が控訴となり、両者が最高裁の決定を待つこととなったのです。
最高裁「不公正な取り扱い」認めるも
東京高裁は5月、「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをした」として、1審・さいたま地裁に続き賠償を命令。
しかし、最高裁においても、掲載については「公民館は秀句をそのまま掲載する義務はない」という判決となりました。
双方が、上告をしましたが、最高裁は今月、女性と市双方の上告を退けることとなりました。
そして、作品の俳句は、引き続き掲載がなされないままとなりました。
ところが、ここへきて、さいたま市は、1月25日、作者の女性(78)が求めていた句の掲載に応じることを明らかにし、細田真由美教育長は31日、作者に直接謝罪しました。
記者会見した細田真由美教育長は、掲載について、
市の主張が受け入れられなかったことは残念だが、作者に掲載請求権がないと認められたことには意味がある。市に掲載義務はないが作者の気持ちに配慮した。
と、今回掲載に応じる理由を説明しました。
また、問題が長期化したことについて、
公民館の職員が作者に納得してもらえる丁寧な説明をできなかったことに起因する
と述べ、今後は職員研修を充実させると同時に、今後は公民館だよりの編集に市民参画の場を設ける考えも示したそうです。
作者は 「4年半ぶりに正式なルートで発表が出来、本当に良かったです」とコメントしています。
終りに
作品が掲載されることになったは、とてもよかったです。しかし、作品の掲載をめぐって、4年半もの時間が費やされたことは驚きです。
ともあれ、掲載が認められたことで、同様のモチーフを持った作品が排斥されないことを願いたいと思います。